ある寒空の下
タイトル『ある寒空の下』
作者 道騎士
「な、なんだ、この力は? これが噂の超能力者か? へっへっへっ。これであいつに仕返しが出来るぜ!」
今日の午前のことだ。今日のお昼のデザートに大事に取っておいたパッチンプリンを、奴はあろうことか、扶きプリンにすり替えやがった。扶きプリンなんぞ、プリンの風上にも置けるもんじゃねぇ。奴は、俺の怒りの一線を越えちまったのさ。
俺は、パッチンしたかったからパッチンプリンを買ったのに……。パッチン出来ないプリンにすり替えられてしまった。
「あ~~、パッチンしてぇ。パッチンプリン、パッチンしてぇ!」
一日中、憎しみながら念じていたら、超能力を手に入れてしまった。
「しかしなぁ、いきなり奴にやるには……。色々試さないと。おっ、ちょうどいい所に石田がいやがる。あいつで色々と試させてもらうとするか!」
「おい、石田! ちょっといいか?」
俺は石田に声をかけた。
「何だよ、雨空寒い(あまぞらさむい)!」
「おいおい、いきなりフルネームで呼び掛けるなよ。寒いでいいよ」
「わかったよ」
「それよりもお前にちょっと仕掛けるぜ。このパッチン能力を!」
俺は頭に扶きプリンを思い浮かべ、憎しみのパワーを石田にぶつけた。すると、どうだろう。石田の右手人差し指の爪が、深爪になった!
「おい! これじゃあ、缶ジュース飲めねぇじゃねぇかよ! うおおおお」
石田は、走り去ってしまった。
「これだ……。これで奴を一生パッチンできない身体にしてやる。ククク、ハッハッハ!」
奴に更に痛い思いをさせたい。しかし、もう少し他の人にも超能力を試してみよう。爪の長い人にもやってやろうと思い、街を歩き始めた。
まずは、そうだな。いつもゲームを貸しても、返さないあいつにしてやる。あいつ、又の名を、長爪透は、爪が長かったはずだから、ちょうど良い。これであいつは、パッケージのふたを開けるときに、上手くいかなくてイライラするだろう。考えるだけで、愉快だ。この能力は、意外と汎用性が高いじゃないか!
携帯を取り出し、電話をかけた。
「もしもし、寒いだけど。今から、こっち来れるか?」
「もしもし、寒いか! 今からそっち行くよ」
少してから透が現れた。開口一番、透はいつもどおりに話しかけてきた。
「寒い~また新しいゲームを貸してくれないか?」
いつもの調子でゲームをねだってきた。
「今日はお前には、ゲームを貸さないぞ! ただお前で実験するだけだ」
そう言って、超能力を発動した。
「こ、これは……。これじゃ、毎回、ゲームボーイの電池のフタを開ける時、人差し指で『イテッ』なるじゃねえか! うおおお!」
「ふっ! 少しはこれに懲りて、ゲームを控えろよ」
完璧だ! 次こそは、奴にこの世の地獄を見せてやるよ。そういえば、超能力で無くした爪はどこに行っているんだ? ふと疑問になった。もしかしたら、この能力を使うと何か、代償を払うのか? 少し不安になった。まあいいか。とにかく奴を痛い目にあわせてやる。より効率的にダメージを与えるには、能力を使った後に奴にプリンを食わせてやる必要がある。となると、まずは店で調達せねば……。パッチンの部分がより固い個体を選別して、奴にこの憎しみを!
コンビニでパッチンプリンを購入し、奴を探して歩きだした。少し歩きまわっていると、奴は一人で本を読んでいた。俺が凝視していることに気付いたのか、顔をこちらに向けてきた。
「やぁ、君か!」
奴は涼しい顔をして声をかけてきた。
「ほら、プリンをやるよ」
俺はプリンを渡すと同時に、能力を発動した。
「ありがとう。急にどうしたんだい?」
奴はプリンを右手で受け取った。
「お前! まさか左利きだと!」
奴は爪がしっかり生えている左手でパッチンしようとした。パッチン。