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背中くらい


「神崎さん、やっぱ強いなぁ」


 予想外の事態にも慌てず対応する神崎さんの姿に、俺は呆然とするしかなかった。今は沙羅と一緒にもうすぐ始まる試合に備えて控え室にいる。暇だったのでモニターを眺めていると、ちょうど夕凪たちの試合が行われていたという訳だ。

 振り替えって感想を言ってみると沙羅はぶすっとした表情でこちらを睨んでいた。すぐに機嫌が悪くなる性格はもう大体理解しているため、きっと神崎さんが自分よりも弓使いとして目立っているのが気に食わないんだろうなと察した。

 以前もそうだが、神崎さんは沙羅の編み出した合成技にさらに一つ付け加えたより上位のものを使っていた。三つよりも四つ混ぜる方が難しいので、追い抜かれたような気がしてならないのだろう。

 あの人相手だったら仕方ないんじゃないかなと思うけれど、どうやらプライドの方がそれを許そうとしないらしい。

 だけど今、あまりその怒りの方に気を配っている余裕は俺にはなかった。昨日力不足を実感したため、あの後クエストモードで一気にレベルを上げてジョブスキルのLv3を解放した。まだ練習できていないため、ぶっつけ本番になってしまう。


「今日こそ私に任せといて。絶対ぶっ飛ばす」

「え、やだ」

「いやいや、任せてよ。そんな信用されてないの?」


 昨日、敵が強かったとはいえ不甲斐ない結果に終わってしまった沙羅が噛み付いてくる。今度こそ弟子みたいな立場である俺の前で良いところを見せたいようだが、俺だって戦いなれておく必要がある。

 それに……。


「そろそろ背中くらい任せてくれよ……」

「何か言った?」

「別に」


 そっけない返事にまたしても沙羅はムッとした。言いたいことがあるなら言えと言われても、言ったら生意気だと叩かれるのだから言えない。

 そろそろ殴られるかも、とか考えていると順番が回ってきた。直前の試合が終了したみたいだ。さっきまで俺に苛立っていた沙羅も気持ちを切り替えて試合へと臨む。


「さて、じゃあ」

「いこっか」


 今日も勝って次へと進めてみせる。明日も明後日も、夕凪とぶつかるその日まで。

 そしてまた今日も、大歓声の中の闘技場へと、足を踏み入れる。必ず勝ち上がる。こんな所ではまだ立ち止まれないのだから。

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