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遊びたかったんだ


「“暗黒銃カオス”!」


 夕凪の魔法銃から闇の閃光が迸る。光っているのに、それは深淵の闇のように黒に染まっている。その光は、よりいっそう辺りを暗くさせるような光で、その矛盾した感覚がいつも薄気味悪い。

 そして、その薄気味悪さが示唆するように、普通の光線銃の中では高位の威力だ。

 だが、根本は普通の光線銃と変わりない。直線に飛ぶだけなので、先生も落ちついて回避する。そしてそのまま、夕凪との間合いを詰め寄るべく、地面を蹴った。

 先生は走りながら、剣を順手から逆手に持ちかえる。そしてそのまま、走りながら地面に突き刺した。床が、剣の鋭さに負けて切り裂かれていく。


「“大地斬”」


 大地を裂く剣戟。一々逆手に持ち変えないといけないが、それに見合うだけの威力である。一応、回避しておくに越したことはない。

 そう思ったのは夕凪も同様のようで、羽衣の力で上空へと退避した。だが、それで終わってくれるほどには、先生は諦めが良くない。

 突如、梶本先生の剣が、強い光を放った。エネルギーが、刃先の一筋に集約されていく。集約されていくごとにその光は強くなって行き、力が弾けるその瞬間、輝きは最高潮に達した。


「“斬鳴波”!」


 夕凪がいる方向へ向けて、勢いよく剣で空を裂いた。圧縮されたエネルギーは、かかっていた圧力から解放され、放射状の光の斬撃となり、空を駆ける。

 だけどこれも、夕凪はとっくに“視て”いた。


「“百連光線銃ガトリングレイ”」


 目にもとまらぬ早撃ちで、次々とレーザーを発射する。放射状に広がる先生の攻撃を、それ以上広がる前にこちらも物量勝負でかき消している。しかも、威力は夕凪の方が上なので、お釣りもある。

 余った数十発の光線銃が一斉に梶本先生の周囲に降り注ぐ。だが、それらは全て直接先生を捉えてはいなかった。


「いくよっ! “龍閃”」


 そう、その数十発の弾丸の目的は、先生の退路を断つこと。退路さえ断ってしまえば、後は強力な攻撃をあてるだけだ。銃から飛び出た魔力は、空気中で形成していく。その名の通り、龍が喰らいつくようなシルエットになる。

 上空からそんなものが飛来しているというのに、先生は落ちついた動きで対処する。まず、周囲に降り注ぐ雨のような光線は、早撃ちで撃ったため、力の重点時間が短い。つまり、威力が低いのだ。

 しかも先生はさっきの名残でまだ逆手に剣を握っている。つまり、高威力の大地斬が放てる、という訳だ。

 その様子を見ながら、私はつがえていた矢を放った。お父さんの方に飛んでいくが、威力は低いし速度も無い。回避も撃退も容易いだろう。

 そしてお父さんも詰め寄ろうとするふりをして近づいてくる。だけど、私もお父さんも、今は二人の闘いが気になっていて、そっちの方に釘づけになっていた。

 先生はレーザーの柱をぶった切り、間一髪夕凪の“龍閃”を回避した。龍が大地に喰らいついたそこには、小さなクレーターができていた。


「ねえ……お父さんは良いの? 夕凪と闘わなくて」

「いや、別に良いよ」

「でも、お父さんも何か言いたいことがあるんじゃないの?」


 そう問いただしてみるが、お父さんは特に何も感じてはいないようだ。一体どういうことなのだろうか。


「てっきり戦いながらお説教するためにこのゲームやってるんだと思ったんだけど」

「まさか。俺は父親だ。怒りたかったら家で怒るさ」

「……それもそうね。じゃあ、何でなの?」

「うーん……ちょっと恥ずかしいかな」


 すると、逆にお父さんの方から、こんな質問が返ってきた。どうして、美波は夕凪に付き合って一緒にやっているんだ? って。


「ちょっとした賭けなの。言ったでしょ? 二人で優勝したら、あいつは引きこもりを止めるって。そういう賭け」

「本当にそれだけか?」

「……まあ、私の方にもちょっと恥ずかしい理由があるんだけどさ」


 嬉しかったんだ。

 私はまず、そんな言葉で前おいてから話を続けた。


「夕凪が、私を頼ってくれたのが嬉しかったんだ。だから……私の手で、あいつを学校に行かせたいって思ったんだ。家に引きこもって、あの才能を潰すのは、何かもったいないし」


 優しいな。

 私の言葉に、お父さんはそう言ってくれた。

 やっぱり私は、今でも子供みたいで、褒められたのが少しくすぐったくも感じたが、やっぱり嬉しかった。


「父さんはさ……夕凪達と遊びたかったんだよな。今まで、夕凪と美波は二人で遊んでて、父さんと母さんが面倒見なくて良かったから。だから、Quest Onlineが、二人と触れ合う良い機会だと思った。それだけ」


 勝ち続けたいと思ったのは、二人と当たるまでに負けたくなかったからだ。やっぱり、自分たちにも見栄というものはある。そんなことまで、お父さんは言い出した。


「大丈夫だよ。お父さん達も、もう充分強いから」


 優しいって言ってくれたけど、きっとそれはお父さん譲りだと思う。メガネかけて、いかにもがり勉でした、って感じの風貌で。だけど学生時代は運動の方が出来て。ちょっと見た目怖いけど優しいお父さんだ。

 そういえば、お父さんの言う通り、私はお母さんやお父さんと遊ぶだなんて、今まで全然してこなかった。

 だからだろうか。こんなにも、この一戦が楽しく感じられるのは……。

 そして、隣での勝負はもう佳境に向かおうとしていた。

ぐう……ペースも遅く、文字もそれほど多くなく、申し訳ありません。


はやく受験終わりたいなぁ……。

浪人したくないなあ……。


とまあ弱気な作者ですが今回の話は結構朗らかです。

とはいえ前半は結構ドンぱちやってます。


では、次回もよろしくお願いします。

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