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Quest Online――体感式アクションオンラインゲーム――  作者: 狒牙
開幕、バトルフェスティバル
44/79

女神の尋問、そしてシード二人

前半は天野ゆかり視点です。

後半は神崎父親目線です。

「で、誰が細工したって訳?」


 私達の試合が終わると、突然アテナさんは対戦者二人を捜し出して詰問し始めた。内容は勿論、彼らが言葉を濁したことについてだ。本来使えるはずがないタイミングでのスキルの使用、それに関する尋問だ。

 本来ならば反則を取られて即刻退場を喰らってもおかしくないはず。アテナさんはそう言っていた。それなのに運営側はこれを見逃している。とすると、運営が彼らに接触したのだろうか。

 だが私の考えは、それはないと先に否定されてしまった。運営が一人にえこひいきすることは無いと規約にある上に、そもそもあの程度の細工だけでは場を盛り上げることはできても実力差は塗り替えられない。


「そう言われても、俺たちにも訳が分からねえんだよ」

「まだ誤魔化そうっていうの?」

「本当だって! 答えなかったんじゃない、答えられなかったんだ」


 彼らの切実な申し出を一旦アテナさんは受け入れた。きっと今は俳優のスキルも使えていないのだろう。一応チェックのためにステータス表記を行ってはいるが、スタミナもMPも減っていない。何のスキルも使っていない状況、という訳だ。

 それならばと、アテナさんは妥協しながらも切り返した。


「誰と接触して、何を語ったのかだけでも言いなさい」

「分かった。でも、信じてくれよ」


 そして、二人の男性はお互いに記憶を確認するようにして話しだした。それをまとめると、どうやらこういう事らしい。

 彼らはトーナメントの対戦相手が発覚すると、まず最初に落ち込んだらしい。まあ、相手はこの人なのだから仕方ない。せめて、何か驚かすようなことはできないものかと。

 考えた挙句に、自分たちのプロフィールを騙せないかと思いついた。だが、それは試合前に公表しれるもので、その間は手品師のスキルも使えないので不可能、そう話していたその時の話だ。


「面白そうだな、それは」


 そう言って一人の男性が話しかけてきたらしい。彼ら曰く、変な格好だったそうだ。変な格好を上手く彼らは説明できなくて、とりあえず分かったのか眼帯で片方の目が隠れていたことだけだ。

 誰だと訊いても名前を答えない。調べてみると、プレイヤーキャラクターではないと発覚した。それなのにも関わらず、自我を保っているため、おそらく運営の方の人間だと悟った。

 だが、実際は違ったらしい。そうとも言えるがそうとも言えない。だが、運営には働きかけることはできる。そう言ったそうだ。

 彼の話に関しては半信半疑だったが、実際に試してみると本当にできた。嘘だろと驚いたが、現にできていたのだから否定しようもない。

 そして、後は私達が戦った通りである。


「で、その男は何でそんなことを持ちかけてきたの?」

「舞台が盛り上がれば、それで良いと言っていた。Quest Onlineをより素晴らしいものにする、それが私の仕事だと」


 本当に、アテナさんの予想通りだった。闘いの結果そのものを覆すほどの影響力は無いが、それでも場を沸かす程度の効果は期待できる。多くの観客は疑問を感じずに面白い展開だと盛り上がった事だろう。終わってから、暴動の類が起こっていなかったことからそれは判断できたらしい。

 運営であるともそうでないとも言える。このゲームを我が子のように可愛がっている。そして、実際に影響力が大きい人物。全くもってそれが誰なのか予測もできない。

 そもそも、眼帯をつけた人物などこのゲームを始めてから見た覚えが無い。やはり、プレイ歴の少ない私には心当たりは全くない。


「まあ、大体分かったわ。もう良いわよ」

「あ、はい……」


 そう言って彼らは身を引き、帰る……いや、逃げる準備をする。だが、何かを思い出したように最後に私の間横で立ち止まり、耳打ちしてきた。


「アテナって……遠くでみると可愛いけど実物怖いな」


 分かってます。そう言おうとした時には彼らはどこかに去って行った。


「今、何て言ってたの?」

「ふぇっ? いやいや、えーっと……アテナさん、綺麗だなーって」

「本当?」

「あは、あはは……ほ、本当ですよ」


 冷や汗が止まらない。本当の事を言ったら確実に私がとばっちりを受ける。何とかしてやり過ごさないといけない。

 だが、結局誤魔化しきれずに起こられる羽目になったのだった。



             ◇◆◇



「暇ですねー、神崎さん」

「そうですね、梶本先生」


 美波と夕凪の試合も終わり、どうしようかと思っていると夕凪の友達の藤村くんも戦い始めた。中々どうしてサッカーボールというおおよそ武器ではないものであんなに立ちまわれるのだろうか。彼、かなりサッカーは上手いと思う。

 先生の方も、担任ではないとはいえ、自分の教え子の一人の闘いを見ていた。途中ハラハラしてもいたが、何とか勝った時には自分の事のように喜んでいた。


「参加者二万人程度を、16384人に減らすだけの試合数。つまり全体のうち一万人以上は戦わないで次に勝ち上がれる。で、そのシード権をもらった訳で」

「一回分楽出来るのは良いけど、暇だな」

「とりあえず試合観戦してますが、皆装備強いですね。反応はあまり良くないですけど」

「堅実に戦ったら勝てるんだろうな」

「ええ、少なくとも次の試合は」


 なぜ俺たちがこうもテンションの低い会話をしているのか、その原因は間違いなく美波にある。思っていた以上に、美波は強かった。

 そして、俺たちは明日の試合を勝ちあがると、すぐさまあの二人と当たってしまう計算になる。さっさと夕凪達と当たるのは嬉しいが、説得もできずやられてしまいそうだ。


「そう言えば何で今日の試合数は少ないんでしょうね」

「きっと二の指数関数の数字にしたいんですよ。そうしたら、最終的に人数が半分ずつになっていって、それ以降のシード権はなくなりますからね」


 そして、明日と明後日の午後七時から午前七時、二日間計二十四時間で八千試合を行うらしい。競技場は三十いくつかあったらしく、一戦あたり七分ぐらいの時間で行われるのだとか。

 時間がもったいないのでトーナメントは強い人同士は勝ち上がらないと当たらないようにできているらしい。なるほど、早いうちに夕凪と当たるということは、俺たちは大して強くないらしい。

 とはいってもそもそも参加できない人もいるのだから、まだ強い方なのかもしれない。それでも、ここにいる中では弱い部類に位置するのだ。


「気が重いですねぇ」

「はい」


 中年サラリーマンと、新米教師の溜め息は騒々しい競技場内の声にかき消された。

という訳でキャラクター紹介一人目は夕凪です。


分かっているとは思いますが主人公中の主人公の片割れです。

一応美波とセットで主人公なので。

この小説を書くに当たって、主人公は神プレイヤーにするか、と思っていたのですが、敵がいないと難なく学校に来てしまいます。

という訳で、“無課金でランキング一位”という人物になりました。

ちなみに、“無課金最強”キャラはライバルのシラギやらソーヤやらに奪われてます。

武器を魔法銃にしたのは、小柄な少年だからやはり剣よりも銃とかの方がしっくりきたので。

か弱い少年少女がでかい武器を振り回すギャップの描写は天野ゆかりに埋めてもらいました。

なぜゲームにはまったのかは「天才過ぎる故に現実に飽きたから」、にした理由は、現実で何もできない奴が最強になる訳ないので、とりあえず何でもできる子を作りました。

ジョブが神父になっているのは美波のせいです。

美波のジョブの方が先に決まったので(巫女)、合わせて宗教関係にしちゃえ、と思って神父様に。

その乗りはシラギにも受け継がれますが、彼についてはストーリー中でいつか書きますのでそれまではシークレットです。


格好良い主人公ではなく可愛いガキンチョにしてみました。

だから一人称は僕、になっています。

最初は重度のシスコンにでもしようかと思いましたが没に。

流石に問題があるかと。

ちなみに、主人公であり、他のメインキャラクターがゲームを始めた原因となった中心人物ですが、視点を夕凪にすることはほとんどないです。

今のところプロローグぐらい、これからの予定も特には無し。


夕凪編はこれぐらいですね。

次回は美波編です、では。

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