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Quest Online――体感式アクションオンラインゲーム――  作者: 狒牙
開幕、バトルフェスティバル
41/79

休憩と会議


「ん? どうしたの、そんな顔して」


 呆気に取られた私を見て、夕凪は能天気に話しかけてきた。少しの間黙っていたが、不意に私は堰をきったかのように夕凪を質問攻めにした。


「去年のパートナー?」

「うん。武器の扱いは大体僕と同じぐらいだよ。でも“神託”がある分僕の方が有利かな」

「え、でも夕方のニュースでの重要選手にこの人の名前は無かったじゃない」


 そうだ、夕凪がこの人は強いから、そう言って私に見させてきたリストの中にこの人はいなかった。しかも、今の話を聞く限り夕凪ぐらいの腕前なのだろう。とすると、やはりノーマークだった理由がよく分からない。


「いや、だってあの人の戦闘スタイルとか知ってるし、今更テレビで確認しなくても良いかな、と」


 でも、パートナーが誰かとか、装備品は何をつけているのかなどは調べておくに越したことはない。そう言って夕凪は、時間が迫っていることもあり、少し急ぎめに目当ての競技場へと向かいだした。

 慌てて私も着いていきながら、一つだけ言っておきたいことがあった。彼女のパートナーについてだ。


「夕凪! その、アテネって人のパートナー知ってるの?」

「いや、まだだよ。だから見に行くんだよ」


 そして、競技場間移動用のワープスイッチに到着する。白い光に包まれたかと思うと、さっきまでとは別の場所へと瞬間的に移動した。

 急ぎ足でいたため、少し早めの時間に競技場にたどりついたようだ。天井のスクリーンの端の方に、今後の対戦予定表があるがそれによるとアテナの試合まで後一試合挟むらしい。


「ちょっと早かったけどまあ良いか。そういえば美波、まだ訊きたいことある?」

「うーん、天野ゆかりって知ってるよね?」

「そりゃね。一年の時のクラスメイトだし、何より美波の親友だ」

「もしかしたら同じ名前の人かもしれないけど、ゆかりのパートナーも、アテネって言うんだって」


 そこで初めて、夕凪はさっきの私の驚きの理由を察したらしい。今度は、夕凪の方が目を丸めていた。


「武器は、魔法銃って言ってたよ」


 そりゃもう大当たりだよ。そう言って夕凪は大きな溜め息を吐いた。

 なぜ溜め息を吐いたのかが最初分からなかったが、問いただしてみるとすぐにはっきりとした。

 アテネが後輩であるパートナーを育てる際は、夕凪がそうしたように、装備品を与えるところから始まる。充分な装備を得てから、戦闘技術の上昇を図るらしい。そのため、初心者を短期間で即戦力になれるまでに鍛え上げられるらしい。最悪でも、相手によっては装備さえちゃんとしていれば、適当に強力な技をぶっ放すだけで勝てるのだとか。

 要するに、ゆかりとアテネのコンビは私達と同程度だという事だ。私達勝ち上がれば、その二人も勝ち上がることができるだけの実力がある。そしてゆくゆくは私達とぶつかる事になる。

 そして、不登校中だというのに同級生と会うのは気がひけるのだとか。夕凪としてはゆかりや藤村くんとは直接顔をあわせたくないらしい。やはりそれは気まずいと察しているのだろう。


「じゃあ学校行きなさいよ」

「そう来たか」


 こんな所で手痛いカウンターがくるとは思っていなかったようで、夕凪は額に手を当てる。だが、聞く耳は持っていないらしい。


「まあ二人で優勝できたら学校行くよ」

「はあ……。まあ、忘れてないだけましかな」


 そうこう言っている間に、いつしか目の前の競技は終わっていた。次の試合が始まろうとしているが、目当ての試合はさらにその次だ。

 この競技場のどこかにゆかりがいるんだろうなぁ。そう思いながら周りを見回すが、広い広い競技場なので、近くにいる可能性は薄い。きっと少し離れた所にいるのだろう。


「まあ、アテナと組んだなら天野さんだってかなり強くなってるよね」

「武器は槍だって言ってたわ」

「ジョブは?」

「分からない」


 別にジョブだけを秘密にしたかった訳ではなく、武器を言ってしまってから気付いたようだ。言わない方が良いと口止めされているのか、それを思い出してからは何も教えてくれなかった。

 まあ、武器なんて一回戦の段階ですぐに判明するから問題はないのだが、ジョブは温存しておきたいというのがあるかもしれない。

 それにしてもアテナという人物が気になる。夕凪にそこまで言わせる人間は、ランキングが自分より上、もしくはソーヤとシラギのコンビぐらいだろう。確か、去年の夕凪は実質三位の実力だったが、準々決勝で紫電カナリアコンビと当たったらしい。


「カナリアは完全に紫電のサポートに回ってて、そして紫電が暴れ回って手も足も出なかった」


 そのように言っていたのを思い出す。というか紫電が強過ぎ、とも言っていただろうか。

 とりあえず、アテナと夕凪は日本のプレイヤーの中でも五本の指に入るという訳だ。

 そしてまた、目の前の試合が終わった。今度こそ、ゆかりが戦う順番が回ってきたのだ。


「弓道部なのに槍なんだね、天野さんって」

「あ、うん。ゆかりはマネージャーみたいな感じだし、本人がジャンヌ・ダルクが好きらしいから剣と槍で迷ったらしいよ」


 中世のヨーロッパで活躍した女傑ジャンヌ・ダルク。最期は日炙りにあったはずだが、そんな事よりも戦場での生きざまにゆかりは惚れたのだとか。

 だが、本人は腕っぷしには全く自信は無い。


「でも、絶対油断できないよ。アテナは僕よりはスパルタだから」


 英明ぐらいには強くなってるかもね。そうポツリとこぼした。

 藤村くんってそんなに強かったかどうかを思い返す。二対一という不利な状況で確かに勝ったのだが、ギリギリの試合でもあったはずだ。

 それに、対戦相手にベラベラと弱点を突かれて、各プレイヤーの前で語られたも同然だ。この先やっていけるか少々心配でもある。

 彼にも、夕凪の心を動かす手伝いをしてもらわなければならないのだから。


「まだ英明にはジョブスキルのLv3があるからね」


 私が藤村くんの力量を心配しているのを悟った夕凪は、薄く笑いながらそう口にした。確かに、まだ彼はジョブスキルはLv2までしか使えないと言っていた。


「そしてそのスキルは、きっと英明の最大の弱点をカバーするよ」


 最大の弱点というと、きっとあれだ。藤村くんの武器の技はボールの性能を変化させるのが精一杯。意のままの弾道を走らせる、例えば蛇行するような球は打ち出せない事だ。

 それをカバーするという事は、単純に考えて三つ目は、思い通りの弾道を描かせるものだと考えられる。


「でも夕凪、何でそんな事分かるの?」

「Lv1が攻撃、Lv2が防御。じゃあ最後は……と思うとテクニックかな、とね」


 こういう夕凪の予想はかなり信頼できる。全くの直感の場合、夕凪は当てにならないが、このようにほんの少しの思考のプロセスさえあれば当たっている事の方が多い。


「それより、始まるよ」


 会場が、一気に熱気に包まれた。


今回は題名の意味は考えないでください。

思いつきませんでした。

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