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バトルフェスティバル 父親・担任side

Interludeはこれで終わり。

次回からは本編(?)であるフェスティバルへと入って行きます。

ついでに、作中では前回の話から今回の話の時点で三週間ほど月日が経っている、という事をあらかじめご了承ください(一応作中にも書いてます)。


「さーて、どうしようかな」


 バトルフェスティバルの開催の期日まで、もう既に一週間を切っていた。このゲームを始めてから、実に三週間もの時間が流れた訳だ。

 その三週間の間、一番びっくりしたのは夕凪の三者面談の日だ。正確には夕凪が居ないから親と教師の二者面談でしかなかったのだが、問題はそこじゃない。

 初めてプレイしたあの日、俺と一緒にクエストに行った若い男の人物、カジは実は夕凪の担任だったのだ。やけに見覚えがあると思っていたが、不意討ちみたいに出会ったために驚きを隠しきれなかった。相手も驚いてしまったようで、二人して絶句してしまっていた。

 しかも彼とは初夜だけでなく、度々一緒にクエストに行ったため、ゲーム内で顔見知りになってしまっていた。そんな状態での対面だ、見間違えようもなくすぐに同一人物だと断言できた。

 その時ばかりは夕凪がいなくて良かったと思う。もしあいつがいたら二人の大人の態度に違和感を覚え、“Quest Online”の話だと分かるともうその話しかしなくなるだろうから。

 ついでに、美波の方の面談は母さんの方が行った。担任はカジと同年代の女の先生だと美波が言っていたはずだ。


「選抜クエストをクリアしたから出られるんだけど……コンビがいないんだよなぁ」


 選抜クエストとは、一週間後のバトルフェスティバル(正確には、その日本予選なのだが)に参加する資格を得るためのクエストの事だ。

 そもそも、このゲームのユーザーの数が圧倒的な数になっているため、全員がイベントに参加できるかと言うとそうではない。そんな事をしたら一体何日間この行事が続くのか分からない。そのため、実力者だけが参加できるようにふるいにかけるのだが、そのやり方のためにゲームを始めたばかりの俺でもそのクエストをクリアできたのだ。

 運営としては、例えランキングの上位に位置していようと、肝心の本人のプレイスキルが未熟な場合は参加してほしくないのだとか。そのため、選抜クエストには課金アイテムの禁止、装備品は運営が規定したものでしか参加できない。

 そのため、残念な装備品しか持っていない俺みたいな奴でも、クリアしようと思ったらできる。我ながらそこそこ強いなと思ってしまったが。

 ただ、この選抜クエスト、装備が規制されるため、普段強いものばかり使っている人達には効果はあり、腕も武器も強い人は合格し、武器だけ強いものを持ち、その力でごり押しするタイプのプレイヤーは次々と脱落していた。

 クエスト参加人数だが、一人又は自分のコンビとの二人組との二択である。後者の方がモンスターは強くなるらしいが、俺はどの道一人でしか行けなかった。


「相方なんていねぇよ。どうすりゃ良いのか……」


 どうしようもなく、とりあえず一通りの装備品だけ取り揃え、ストーリーも進めたのは良いが、肝心のコンビが見つからない。ランキング順位も、日本国内では十万位まで上昇した。何千万という人数の中、ここまでランキングを上げれたのは奇跡なのか、実力なのか。

 国内ランキング十位とかの人も選抜クエストをクリアしていないことを考えると、やはりどちらかと言うと俺は強いのではないかと自信に満ちてくる。装備が弱いから、装備の自由な本戦では苦戦必須だろうが。


「どっかに同じような人いないかなー」


 ふと、そのような声が聞こえてきた。最初は、自分がそのような事を無意識のうちに口にしてしまったのかと思ったが、そうではなかった。聞き覚えのある声に俺は反射的に振り向いた。


「先生、どうかしたんですか?」

「あ、夕凪くんのお父さん。いや、実は……」


 そこにいたのは夕凪の担任の梶本先生だった。こちらも、自分同様に装備品が格段に質が上がっている。

 類は友を呼ぶ、そんな言葉がある。そして、先ほどの彼の発言からして、彼が困っている原因がすぐに分かった。それというのも、やはり俺が同じ状況にいるのが大きい。


「バトルフェスティバルのコンビがいなくて……。選抜クエストはできたんですが……」

「いや、実はこちらもです。他の人たちはもうとっくにコンビを組んでる上に、日本予選だから外国の人とは組めない。ただでさえ人数がいませんしね……」

「そうですね……って、もしかしてまだ誰とも組んでませんか?」


 俺が少し気落ちした風に頷くと、彼はよっしゃ、と叫んで拳を握り締めた。

 まさかとは思うが俺と組むつもりなのだろうか。もしそれが正しいのだとすると、ありがたいことこの上ない。このままでは大会にすら出れない。しかも、所属するターミナルタウンの都合上、夕凪ともコンタクトが取れない。

 当初の目的さえ果たせなくなりそうな現状、同境遇の彼は俺にとって救いの舟だ。


「じゃあ俺と出てくれないですか? もう締め切りまで三日切ってますし」


 梶本先生がそう言うのを聞いて、内心俺はガッツポーズをとった。ただし、表面上はあくまでも冷静に振る舞う。


「ありがとうございます、こちらこそお願いします」


 本戦まで後一週間、美波は夕凪のサポートで既に武器防具は夕凪と同クラスまで並んでいるらしい。レベルも世界ランキング上位の人と比べても劣らないらしい。

 そして、その世界ランクでトップテンに入る夕凪。説教なんてできる気がしない。当たってもすぐに負けるような気がする。

 それでも親として、言わなければならない事がある。選手登録を済ませた後はもう少しレベルを上げておかなければな。





 意気揚々とした彼らを見て、一人の男性は薄く微笑んでいる。カウボーイみたいな帽子を被り、片目が眼帯で覆われている。


「さあ、本番はここからだ」


 火蓋が切られるその時は、刻一刻と迫っていた。


ちなみに、忘れている人がほとんどだと思うので補足です。

一番最後に出てきているカウボーイみたいな帽子の眼帯の男は、美波視点でのチュートリアルに出てきた人です。

何とか今週中にInterludeが終わりました。

開会セレモニーの話の後に、一気にバトルラッシュが始まる予定です。


おそらく次回は土日のいずれかになります。

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