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100万ポイントの勇者(旧版)  作者: ダオ
第2章 アラドの町
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第7話 新たなる決意

○3日目


 雄介は疲れきっていた。

体の傷はダークテンペストの血で回復したが、精神的ショックはそうではない。

醜悪な姿をしているが、人間型の魔物を何十匹も切り捨てたのだ。

手に残る感触、溢れる血の臭い、殺気のこもった刃を切りつけられ、身をかすめた。

死を覚悟したことも何度か有った。

それらの経験が肉体的にも精神的にも雄介を追い詰めていた。


 雄介はゴブリンを討伐して気を失い、数時間後目が覚めるとログアウトした。

自宅の風呂に入り、ごしごしと体中を洗う。

身に付いた血の臭いを洗い流すように。

そして温めの湯にゆっくりと浸かった。

食欲が沸かず、夕飯も食べずに暖かいベットの上で休むのだった。



 翌日雄介は、美鈴の見舞いに行った。


「あ、兄さん3日ぶり……え?

一体何があったの?

話して!」


 雄介の雰囲気は暗く、目に光が無かった。

幽鬼のように立っていたのだ。

何かの理由で酷く傷ついていることが、美鈴にはすぐに分かった。


「3日ぶり?

そんなもんだったか。

えっと、まあ相当密度の濃い3日間だったよ」


「密度っていうか、雰囲気変わっちゃってるよ。

そこまで変わるなんて、何があったの?」


「……1時間ほど戦っただけなんだけどね。

覚悟はしてたつもりだったんだけど、けっこうキツかったよ」


 その雄介の言葉は明らかに空元気だった。

雄介はどれだけ辛くても美鈴の前では元気そうに振舞おうとするのだ。


「戦っただけって……。

ねえ、どうしてそこまでするの?」


「う~ん、美鈴のため……というのは間違いじゃないけれど、それだけじゃないと思う。

結局、自分のためなんだろうな。

美鈴が居なくなって独りになるのが嫌だから戦ってるのかもしれない。

それに美鈴だけじゃなく、自分の人生も変えるチャンスだし」


「嘘つき。

兄さんなら、そんなゲームしなくても恋人作って、結婚して子供作って、家族作ることできるでしょうに。

知ってるよ、兄さん結構もてるんだから。

私に使ってるエネルギーの半分でも女の人に使ったら絶対に彼女できるよ。

……だからさ、戦うのやめなよ。

前に来たときは止めないつもりだったけど、今の兄さん見てられないよ。

私のこと見捨てて良いからさ、戦うのやめてよ」


「……確かに、痛いし辛いし怖いしね。

止めてしまいたいって気持ちはあるんだ」


「だったら、それで良いじゃない」


 美鈴が涙声で訴える。


「でも、それだけじゃないんだ。

美鈴を助けるには最低1万ポイント必要で、1万ポイント集めるには1万人の人を助けないといけないんだ。

そして、その1万人は向こうの世界の人たちだけど、本当に生きてるんだ。

生きて、笑って、怒って、泣いて、全部本当のことなんだ。

だから俺は辞めない。

戦うことで、美鈴だけじゃなく、向こうの人たちも救うことが出来るんだったら、戦う意味が有るから」


 空元気も元気だと言われる。

無理にでも元気そうに振る舞い、何のために戦うのかを話していくうちに、雄介は自分の心が再び力強く動き出すのを感じていた。


「兄さんらしい、戦いの理由ね。

でもさ、私怖いんだ。

兄さんが居ないとき、もう来ないかもしれないって。

私のせいで兄さん戦って死んじゃったら、もう絶対耐えられないよ。

私のためだったら、戦ったりしないでよ」


「俺は死んだりしないよ。

約束する。

絶対に生きて戻ってくる。

それを……信じてほしい」


「ずるいよ。

私が兄さんのこと信じないはずないのに。

そのこと知ってる兄さんがそんな言い方するなんて。

それじゃあ私、もう何も言えないじゃない」


「そうだね、ずるいよな。

でも、そうとしか言えないんだ」


「分かった。

兄さんを信じて待ってる。

その約束破ったら、絶対ぜったいぜ~~~ったい許さないんだからね」


「ああ、約束、必ず守るよ」


 雄介の胸に再び闘志が宿っていた、より一層強くなって。



 ログインすると、雄介はダークテンペストと共にステータスを見ていた。

LVUPによるBPをどう配分するか決めるためだ。

その結果がこれである。



滝城雄介


LV:8


年齢:22


職業:精霊魔法使いLV4・冒険者LV3


HP:585 (C)


MP:542 (C)


筋力:81 (D)


体力:141 (C)


敏捷:154 (B)


技術:31 (E)


魔力:114 (C)


精神:100 (D)


運のよさ:-999 (評価不能)


BP:0


称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の加護


特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性弱耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性


スキル:自動翻訳


魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・エアスライサー(5)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)


装備:エリートゴブリンの剣・ボロボロの旅人の服・ボロボロの黒のマント


所持勇者ポイント:3


累計勇者ポイント:3



 すなわち、魔力と精神の二極振りである。

現時点でこれ以上敏捷を上げても技術が付いてこないことと、実戦で雄介が魔法の重要性を痛感したためだ。


 精霊魔法使いLV4は魔法の使用でLVUPし、冒険者LV3は戦闘経験によってLVUPしている。

ちなみに職業:精霊魔法使いは魔法の操作性と威力に補正がかかり、職業:冒険者は戦闘技術と生き延びることに補正が働く。

技術が上がっているのは、戦闘経験と練習によって向上するためである。

ゴブリン討伐によって勇者ポイントを3ポイント獲得した。


 その後、銀貨3枚で革の鎧と黒のマントを購入した。

マントを黒にしたのは、夜襲われる確率を少しでも下げるためである。



 雄介がギルドに向かうと、ティアナが声をかけてきた。


「雄介さ~ん、服装変わってるやん、かっこええで」


「あはは、ありがとね」


「そうそう、依頼は成立や。

相手はBクラス冒険者のアルタ・テルニさんやで。

普通はBクラス冒険者は新人相手の依頼は受けてくれんもんやけど、アルタさんは今まで新人冒険者を何人も育成してきはった方なんや。

そういう訳で今回お願いしたら、受けて貰えたんや」


「へ~、Bランク冒険者って凄いラッキーだね。

3時間で銅貨50枚(約5000円)なんて対価で良いのかな。

もう少し値上げしても構わないのだけど」


「確かにアルタさんに取っては只みたいな値段かもしれんなあ。

でも、アルタさんはその値段で受けてくれはったし、優秀な冒険者が1人でも増えることはみんなのためになることやからサービスだと思ってや。

雄介さんの依頼希望が徹底的に厳しい指導ということやったし、アルタさん、スペシャルハードコースにするんやって。

ほんまに大変やと思うけど、頑張りな」


「スペシャルハードコースは望むところだよ。

ところで、必要な品は何かな?」


「自分用の武器と動きやすい服装って聞いてるよ。

明日朝7時にギルド近くの野原で行うそうや。

ほら、ギルド前の武器屋の方向に3分ほど歩いたとこにある野原や」


「ああ、あの野原ね。分かったよ。

あと、ゴブリンを倒したから討伐依頼として報奨金がほしいのだけど」


「早速やな、凄いで。

何匹倒したん?

あと、確認部位の耳は持ってんの?」


「ノーマルゴブリン・ゴブリンアーチャー・ゴブリンランサー・ゴブリンメイジ・エリートゴブリンの混合だね。

合計で33匹なのだけど、どれが何匹なのか分からないんだ。

耳は有るから出すね」


「……あの、うち聞き間違えたんかな、何匹って?

それに、エリートゴブリンとか何とか聞こえたような。

エリートゴブリンってめっちゃ強いから、新人冒険者じゃ1匹相手でも手も足も出んもんやで?」


「(あちゃあ、何回かに分けた方が良かったかな)

えっと、33匹だよ。

エリートゴブリンは確か2匹倒したはずだけど」


「33匹……なんか。

あ、何人かのパーティで倒したとか?

皆の功績になるから、できれば全員に来て貰うか、せめてメンバーの名前を教えて貰えへん?」


「あの~、俺1人で倒したんだよ。

あ、凄く苦労したんだから。

大変だったしね」


「う~ん、何か勘違いがあるんちゃうやろか。

耳の確認を先にしよ思うし、見せてな」


 雄介は袋から66個の耳を取り出した。


「今確認するから、ちょう待っていてな。

………ノーマルゴブリン12匹・ゴブリンアーチャー5匹・ゴブリンランサー6匹・ゴブリンメイジ8匹・エリートゴブリン2匹か。

ノーマルゴブリンはFクラスの魔物やからともかく、ゴブリンアーチャー・ゴブリンランサー・ゴブリンメイジはEクラスの魔物やで。

エリートゴブリンなんてDクラスの魔物で、Dクラスの冒険者でも下手すると不覚を取ることが有るんや。

ほんまに1人で倒したん?

もしくは今までどこかの国の騎士やったとかちゃうの?」


「(困ったな。説得力のあるようにごまかすしかないか)

実は俺は火属性中級魔法と闇属性中級魔法が使えるんだよ。

ゴブリン達を罠にはめて動けなくしたところでファイアーバーストを打ち込んで、最後は剣で止めを刺したんだ。

それを何回か繰り返して、今まとめて換金しようと持ってきたんだよ。

なんだったら、ファイアーバースト使ってみせようか?」


「え、中級魔法使えるんかいな。

う~ん、そういうやり方やったら1人で狩れるかもしれへんな。

でも、それはそれで戦い方が新人ばなれしてるで。

念のため、ファイアーバースト見せてくれる?

使えるなら、ゴブリンの件も併せてクラスアップが有るかもしれんよ」


 雄介とティアナはギルド近くの野原にやってきた。

そこで3mほどの大岩を的にして雄介はファイアーバーストを放った。

大音響が轟き、爆発によって大岩が砕け散り、火柱が上がった。

ティアナは目を丸くしていた。


「(予想以上の威力だなあ。

これがゴブリン狩りで使えたらどんなに楽だったか)」


「ゆ、雄介さん、めちゃめちゃ凄いやん。

ファイアーバーストって普通ここまで威力ないで。

さっきは失礼なことを言ってしもて、えらいすみません。

許してもらえますやろか?」


「ティアナさんのこと別に怒ったりしてないから、許すも許さないもないよ。

それより、あの人たちの対応してもらえないかな?」


 爆発音を聞きつけて、ギルド職員や冒険者達が集まってきた。

ティアナが事情を説明してようやく納得して貰えたのだった。

この日をきっかけに冒険者の間で、有望新人『黒鷲のユースケ』の名前が広がっていくのだった。



「みんなへの説明大変やったわ。

それで、ゴブリン討伐の報奨金なんやけど、銀貨32枚と銅貨60枚になるで。

ノーマルゴブリンは1匹銅貨30枚、ゴブリンアーチャー・ゴブリンランサー・ゴブリンメイジは銀貨1枚、エリートゴブリンは銀貨5枚や。」


「(今お金無いから助かったなあ)

エリートゴブリン1匹で銀貨5枚って凄いね」


「エリートゴブリンはほんまに危険やからね。

それから、ギルドマスターからEクラスへの昇格の承認が出たで。

登録した翌日に昇格なんて、ほんま滅多にないんやで。

でも、雄介さんDクラスの実力あるみたいやし当然やろうなあ。

うち、何か自分のことみたいに嬉しいわ」


 ティアナが向日葵のような笑顔を見せた。

雄介は自分の頬が赤くなるのを感じていた。



冒険者証明書


名前:滝城雄介


種族:普人族


性別:男


年齢:22歳


クラス:Eクラス


技能:読み書き・計算・火風闇系魔法・剣術



「これでEクラスか。

ねえ、冒険者として一人前と見られるのはどのクラスなの?」


「そうやね~、Cクラスからは一人前として信用されるようになるんや。

Dクラスまでは単純にある程度強かったら上がるけど、Cクラスからは強さだけでなく冒険者としての判断力も求められるし。

上のクラスの依頼は、力押しじゃ上手く行かないこと多いからや」


「ふむふむ、当面の目標はCクラスにするか」


「当面のって言うあたり、雄介さんは自信家やね。

お詫びと昇格祝いに今度夕飯食べに行かへん?

うち、おごるで?」


「この町来てまだ日が浅いから、良い店って知らないんだ。

お勧めの店の案内だけ頼むよ。

怒ってないって言ったでしょ。

俺結構食べるし、食事は割り勘にしよ?」


「むう、雄介さんがそう言うなら。

じゃあ、3日後の仕事6時に終わるし、その後でええかな?」


「OK.

楽しみにしてるから」



 翌日、ギルド近くの野原に行くと、大剣を持った虎の獣人が立っていた。

歴戦の冒険者の気迫が漂っており、身長は優に2mを超えていた。


「初めまして。

依頼しました雄介です。

アルタ・テルニさんですね。

ご指導宜しくお願いします」


「俺がアルタだ。

ふむ、なかなかの面構えだな。

まずは実力を見よう。

さあ、かかってこい」



次回の投稿は明日0時となります。

サブタイトルは「鬼教官」です。

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