第6話 初戦闘
分かりにくかったため、あらすじを変更しました。
○3日目
雄介とダークテンペストはGWOの大地に降り立った。
2kmほど向こうに町が見える。
「カサンドラさんから初期装備品を貰ったし、まずはそれを確認しようか。
その後、町に行こうな」
「余がこのまま町に入れば大騒ぎになるであろう。
街中では黒鷲に化けるぞ。
黒鷲になれば当然弱体化するが、それでもその辺の凡俗には負けぬ。
会話は念話でするが良い」
雄介が布袋を開くと、鉄剣と銀貨10枚が出てきた。
この布袋は空間魔法がかけられており、100kgまでは収納することが出来る。
「確かこの世界では金貨・銀貨・銅貨・小銅貨が使われていて、小銅貨10枚が銅貨に、銅貨100枚が銀貨に、銀貨100枚が金貨になるそうだな。
銀貨20枚で普通の一家の月収らしいから、目安銀貨1枚が1万円かな。
となると、今の所持金額は約10万円ってことか」
「少なくとも当分の間は、宿屋には泊まらず寝る時はログアウトして自分の家に泊まるが良いぞ。
余は野宿が普通であるし、金の使い道は他に考えてある」
「考え?
装備品を整えるんじゃないの?」
「装備より汝を強くするために使うつもりだ。
やがて分かる。
町に入れば冒険者ギルドに行くぞ」
「じゃあ、町に行こうか。
先に偵察頼むよ」
「うむ、余が偵察をしてくる。
雄介は待機しておれ」
そういってダークテンペストは70cmほどの黒鷲に変身し、町に向けて飛び去った。
そして30分ほどで戻ってきた。
「戻ったぞ。
町の名前はアラド、スラティナという国の町らしい。
2平方kmほどの町で予想人口は5000人ほどだ。
治安は中の上で、冒険者ギルドは南東の方にある。
武器屋と防具屋と道具屋はギルドの近くだな。
あと、領主の館が町の中央に有るぞ。
用がなければ近づかない方が良かろう。
壁が町の周囲を囲っており、門は東西南北に4つ。
各門には兵士が2人居り、出入りしている者を確認しておる。
身分証明書は必要ないから、旅人として自然な会話が出来れば問題なさそうだ。
黒髪黒目の者もそれなりに居たぞ」
「ダークテンペストは本当に役に立つな。
カサンドラさんから服を貰ったから服装は問題ないね。
異世界から来たって言うのは論外だし、外国人と言っても警戒されるだろう。
スラティナ人の旅人で、見聞を広めるために見て廻っていると説明しよう。
ダークテンペストのことはペットと言って良いか?」
「うーむ、業腹だが仕方あるまい」
雄介はカサンドラから貰った旅人の服と黒のマントを身に着けている。
どちらもGWOの世界では一般的な物だ。
1人と1匹はアラドの町へ進んでいく。
違和感を与えないよう、早すぎず遅すぎず自然に歩いていった。
ダークテンペストは雄介の右肩に乗っている。
兵士まで少し遠距離のところで、にこやかな笑顔で自分から声をかけ近づいていく。
「あのーすみません。
アラドの町はこちらでしょうか?」
このような場合、第一印象が極めて大事である。
正体不明の人間は警戒される。
この一言で、雄介は自分が初めてこの町に来たのだと知らせているのだ。
「ああ、そうだよ。
どこから来たんだい?」
「都から来ました」
「王都のスロボジアから来たのか。
遠いところを大変だったろう。
この町へは何のために?」
「知識を広めるために、あちこちの町を廻っているのです。
(この国は王国で、王都はスロボジアというのか。
首都と言わなくて正解だな)」
「そうか。
1人で廻っているのかい?」
「1人と1匹です」
「その黒い鷲のことか。
見たこと無い色をしているな」
「とても珍しい鷲なんですよ」
「それなりのお金は持ってるみたいだな。
1人と1匹で旅なら腕も立つんだろう。
問題は起こしてくれるなよ」
「はい、気を付けます」
「念のため、名前を聞いておこう」
「雄介と言います」
「ユースケか。
良かろう。
入ってよし」
「有り難うございます」
こうして雄介たちは無事に町に入ることができた。
一見すると落ち着いていたが、雄介の内心はバクバクしていた。
自分は異邦人であり、警備をしている者がその違和感を見抜けないとは思えなかったからだ。
実際兵士は変わった奴だという違和感は感じていたが、こいつは悪人ではなさそうだと思ったため見逃しただけだった。
雄介は町全体を一周してみた。
ダークテンペストの情報は有ったが、自分の目で見なければ分からないことも多いからだ。
街中には白人、黒人、黄色人種が混在していた。
また、犬や猫らしい獣人も普通に歩いていた。
エルフらしい耳長の女性は1人見かけただけだった。
「(流石は異世界、色々な人が居るなあ)」
「(地球には普人族しか居ないのだったな)」
「(普人族って俺やカサンドラさんのようなタイプだね。
そうだよ、獣人とかエルフとか見たことない。
この町は全体的に北の方が寂れていて、南の方が豊かな感じだね)」
「(ああ、南に人が集まっているな。
南は水が豊富なようだ)」
「(文化水準は中世より少し進んだってところかな。
手で動かすタイプの水引ポンプは有るみたい。
電気製品は見当たらないね)」
「(デンキセイヒンとは何だ?)」
「(あ、魔界にも電気製品は無いんだね。
雷撃魔法の元になる電気というエネルギーを使って鉄で出来た道具を動かすんだよ)」
「(ほほう、そのような物があるのだな。
雄介の世界のことも色々と聴いてみたいものだ)」
「(今度また話すよ。
ところで、この町では俺は王都から来た旅人という説明をする。
俺がログアウト中に王都の情報を集めてほしい。
王都の情報は出来るだけ詳しく、王都からアラドの町までの間にある都市の情報もほどほどに頼む)」
「(それに周辺地域全体のことも調べておいた方が良いのう。
特に魔物の分布の情報は大事だからな)」
「(そうだな。
魔物の分布情報はギルドで手に入るかもしれん。
町一周が終わったからギルドに入ろう)」
「(うむ、そうだの)」
冒険者ギルドはレンガ造りの2階建てだった。
時々人が出入りしており、それなりに繁盛している。
雄介は落ち着いた足取りで入っていった。
中は100平方m程度の部屋であり、右側に数人の男達がたむろしており、奥には受付の女性が3人居た。
右側の壁には多くの紙が張り出されており、その紙には依頼が書かれているようだった。
雄介は左側の受付に向かうのだった。
左側の女性は白い肌と黒く長い髪をした笑顔の可愛い人だ。
160cmほどの10代後半の女の子であり、すらりとしたスレンダーなタイプである。
10人の男とすれ違ったら、8人ほどは振り返るだろう。
「すみません、冒険者登録したいのだけど」
「いらっしゃいませー。
うち、ティアナ・アーレンて言います。
よろしゅうに。
何か身分証明書になる物は有りますやろか?」
「ティアナさんね。
俺は雄介、よろしくね。
証明書は残念ながら無いんだよ。
(カサンドラさんに)なくても登録できると聞いたんだけどな」
「雄介さんやね。
そうやねぇ、有る方がええというだけで、無くても登録は可能やで。
有るんやったら、今までの戦闘経験によって上のクラスから開始できるんよ。
無いんやったら最低のFクラスからの開始になるけど、ええかな?」
「それは構わないよ」
「冒険者の仕事内容の説明は必要なん?」
「いや、大丈夫だ。
調べてきたからね」
「それは優秀やね。
登録料として銀貨1枚頂くで。
文字は書けるやろか?」
「ああ、書けるよ」
雄介は銀貨を差し出した。
「確かに受け取ったよ。
この書類に記入してや」
雄介はその書類にプロフィールを記入した。
「次に個人登録のため、血を頂くよ。
このクリスタルに一滴かけてな」
ティアナはクリスタルとナイフを渡した。
そのクリスタルには血液に宿る魔力の情報を保持する魔法がかけてあるのだ。
指紋のように、魔力の質は一人一人異なるのである。
雄介はナイフで左手に傷を付け、血をかけるのだった。
「では、冒険者カードを作成するから、15分ほど待っといてや。」
ティアナはそういって奥の部屋に入っていった。
「(雄介よ、ギルドでは依頼を受けることと出すことが出来る。
登録が終われば、依頼を出そう)」
「(依頼を出す?
一体どんな依頼を出すんだい?)」
「(ベテラン冒険者に1回3時間のトレーニングを10日ほど依頼する。
汝は冒険者としての基礎がないし、ろくに剣が使えないからの)」
「(うーん、それがお金の使い道か。
トレーニングは構わないが、1回3時間が良いのか?)」
「(費用対効果でその程度が良かろう。
残りの時間は魔物との実戦だ。
トレーニングと実戦はサンドイッチで学ぶのが効果が高い。
ベテランの剣士で、出来るだけ厳しい人を頼め。
当然、相手が信頼できる者ならその後もコネにするぞ)」
「(ああ、分かった。
お、ティアナさん戻ってきたぞ)」
ティアナは白いカードを持ってきた。
カードを雄介に渡すと、彼女は言った。
「この冒険者証明書に魔力を通してみてな」
言われた通り雄介が魔力を流すと、カードに文字が浮かび上がってきた。
冒険者証明書
名前:滝城雄介
種族:普人族
性別:男
年齢:22歳
クラス:Fクラス
技能:読み書き・計算・火風闇系魔法・剣術
雄介は現時点では素人剣術しか使えないが、やがて身に着ける予定なので「技能:剣術」と書いている。
また、魔物の跋扈するこの世界で、いい年をした男が武器が何も使えないのは不自然なため、という理由もある。
識字率が3割のこの世界では、読み書き・計算は立派な技能である。
「他の人の魔力では文字は浮かばへんから、今後はそれが身分証明書になるんや。
犯罪を犯せば除名になってな、証明書は取り上げられるんよ。
無くしてしもうたら、銀貨1枚で再発行やからね。
これで冒険者登録は終わりや。
雄介さん、頑張ってな」
「有り難う。
ところで、早速依頼を出したいんだけど」
「へー、どんな依頼なん?」
「ベテランの冒険者の方に、トレーニングを頼みたいんだ。
条件は1回3時間、10日間前後、剣の使い手、出来れば指導経験のある人が良い。
徹底的に厳しい指導ができる人をお願いね。
この条件で対価はどれくらいが良いかな?」
「そうやなぁ。
3時間の指導で銅貨50枚、10日で銀貨5枚、ギルドの手数料が1割で銀貨5枚銅貨50枚で良いと思うで。
自由依頼より、ギルドから人を選んで個人依頼にした方が良いやろね。
(この人、きっちり対価を払って学ぼうとするなんて新人ばなれしてるなあ。
振舞いを見ても滅多に居ない有望株やね。
礼儀正しいし個人依頼で問題ないやろね)」
自由依頼とはギルドの壁に張り出され、条件を満たした人なら誰でも受けられるもの。
個人依頼とは、ギルドが選んだ個人に依頼するものである。
当然個人依頼の方が信頼性が高い。
「分かったよ。
それでお願いね」
「明日には教官役が決まるやろうし、最短で明後日から開始になるやろうけど、いつからが良いんや?」
「それじゃあ、明後日からにするよ。
じゃあ、お金はこれで」
雄介はティアナに銀貨5枚銅貨50枚を渡した。
残りは銀貨3枚銅貨50枚である。
「確かに。
明日の午後にギルドに来てな。
結果を知らせるし」
雄介は依頼を見に行った。
ノートを取り出し、下級中級の魔物の討伐依頼をメモしていく。
近くに居た先輩冒険者には新人として礼儀正しく挨拶しつつ、絡まれないように気を付けていた。
ギルドから外に出ると昼頃になっていたため、飯屋に入って昼食を取りながら午後の予定を話し合って、アラドの町を出発した。
門を通るとき、兵士に冒険者証明書を見せたため、あっさりと通ることが出来た。
町から見えない所まで離れたとき、ダークテンペストは元の姿に戻った。
「雄介よ、早速魔物との実戦に挑むぞ。
訓練の前に自分に何が足りないのか知らなければならぬ。
余の背に乗るが良い。
これよりゴブリンの森に連れて行く。
そこで1時間、自分一人で戦うのだ。
今の汝にとってゴブリンは手強い相手だ。
だが、鉄剣1本・防具なし・薬草なし・回復魔法なしの環境で生き延びてみせよ。
もし戦闘中にログアウトして逃げることがあれば、余の助力はここまでとする」
雄介は覚悟を決め、不安や恐怖を心の底に沈める。
数回深呼吸して答えた。
「分かった。
必ずやり遂げてみせるよ」
その時、雄介の頭にクエストが浮かんだ。
クエスト:ゴブリン討伐
獲得勇者ポイント:討伐数次第
「初クエストだ。
ゴブリンを倒したらポイントが貰えるらしい」
「そうか。
だが今はポイントの獲得より、経験を積みつつ生き延びることに集中するのだぞ」
ダークテンペストは雄介を乗せると、東にあるゴブリンの森へと飛び出した。
ゴブリンの森は種々のゴブリン数百匹が住む森である。
ノーマルゴブリン・ゴブリンアーチャー・ゴブリンランサー・ゴブリンメイジ・エリートゴブリンなどが居る。
Dクラス冒険者数人パーティでも、多数に囲まれれば全滅することも有りえるのだ。
ダークテンペストはゴブリンの森のど真ん中に降り立った。
これより雄介の命をかけた挑戦が始まる。
ダークテンペストの巨体は当然ゴブリンたちに発見されている。
ゴブリンたちは遠巻きに取り囲んで、雄介たちを見つめていた。
そんな中、ダークテンペストは雄介を残し飛び去っていく。
雄介は、心臓が口から飛び出しそうなほど緊張していた。
ダークテンペストが居なくなったとたん、ゴブリン達は美味しい獲物が手に入ったとばかりに雄介に殺到するのだった。
雄介は無我夢中でフレイムを放ち、近づけないようゴブリン達を牽制する。
炎で煽られて動揺するゴブリンたちにエアスライサーを次々と放ち、ノーマルゴブリンを減らしていく。
何匹か倒すと、考えるより感覚でどんどん動いた方が良いことに気付いた。
雄介にゴブリンランサーが近づいてきた。
鉄剣を両手で握り、袈裟切りに振るう雄介だったが、ランサーは受け止めた。
他のゴブリンがやってくる。
このまま囲まれれば死ぬしかないだろう。
すぐさま走り出し、ランサーから距離を取った。
そこでゴブリンメイジがアイスストームを撃ってきた。
雄介はかろうじて避け、無我夢中でメイジを唐竹割りにしたのだった。
後ろから3匹のランサーが追いかけてくる。
しゃがんで足を狙う雄介は、ランサーの1匹の足を切り捨てた。
残り2匹の突きが雄介の背中をかする。
足を切られて倒れたランサーに止めを刺し、立ち上がる雄介。
右からアーチャーが狙っている。
死んだランサーを持ち上げて盾にし、雄介は矢を防いだ。
そのままアーチャーに近づき右薙ぎに切り捨てるのだった。
立派な剣を持ったエリートゴブリンが近づいてくる。
必死に突きを放つ雄介だが、エリートは軽々と避けている。
右袈裟切り、左薙ぎ、右切り上げを次々と放つがエリートは防いでいる。
エリートの左袈裟切りをかわした雄介は再び足切りを狙った。
エリートの右足に突き刺さる。
後ろからランサーが襲ってきた。
バランスを崩したエリートの首を薙ぎ払い、ランサーから距離を取る雄介。
ランサーと離れてから、シャドウファングで倒すのだった。
ノーマルゴブリンがナイフを持って突き刺してきた。
雄介はあっさりと避けるが、どうもナイフが変わっていた。
緑色をしている。いや、緑色の液体で濡れていた。
何らかの毒ナイフだと直感した雄介は肝が冷える感触がした。
最低最悪の運のよさを持つ雄介はナイフがかするだけでも確実に毒状態になるだろう。
距離を取り、エアスライサーを放って最優先で毒ナイフを持ったゴブリンを倒すのだった。
死闘が始まって1時間。
疲労困憊だった雄介は、戻ってきたダークテンペストを見て安心したのか、そのまま気を失ってしまった。
雄介は満身創痍だった。
擦過傷12、裂傷2、打撲傷7、切創5、内出血4に上った。
鉄剣は血のりで切れなくなり、途中でエリートゴブリンの剣を奪って使っていた。
服もマントも切れ切れに破れていた。
「雄介よ、よくぞ生き延びた。
何度飛び出そうと思ったかしれないぞ」
ダークテンペストは雄介に見つからないよう隠密のスキルを使い上空から見ていた。
本当に危ない時は、助け出す予定だったのだ。
だが、雄介に知られれば成長が阻害される。
血のにじむ思いでじっと待っていたのだった。
ダークテンペストは回復魔法は使えない。
だが不死鳥の血にはケガを癒す働きがあり、黒不死鳥王の血も同様である。
ダークテンペストは自分の血を振りかけ、雄介のケガを癒すのだった。
ゴブリンの討伐確認部位は耳である。
ダークテンペストは雄介が倒したゴブリンを耳を残して黒炎で焼き尽くした。
ゴブリンには討伐依頼が出ているためである。
滝城雄介
LV:8
年齢:22
職業:精霊魔法使いLV4・冒険者LV3
HP:585 (C)
MP:198 (E)
筋力:81 (D)
体力:141 (C)
敏捷:154 (B)
技術:31 (E)
魔力:50 (E)
精神:24 (E)
運のよさ:-999 (評価不能)
BP:140
称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王の加護
特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性弱耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性
スキル:自動翻訳
魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・エアスライサー(5)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)
装備:エリートゴブリンの剣・ボロボロの旅人の服・ボロボロの黒のマント
所持勇者ポイント:3
累計勇者ポイント:3
次回の投稿は明日0時となります。
サブタイトルは「新たなる決意」です。
美鈴が登場しますよ。