第5話 魔法の取得
○2日目
「まあ、運の悪さについては今更言っても仕方ないし、放っておこう。
それよりも、火炎属性絶対耐性・暗黒属性絶対耐性は大体分かるんだけど、水冷属性至弱・聖光属性至弱ってどういう意味かな?」
「言いにくいことですけど、その属性魔法に対する防御力が限りなく0に近いってことですね。
通常の2~3倍のダメージを受けると思います。
当然弱点は人に知られないようにして下さいね」
「雄介は水冷属性と聖光属性の魔法は回避か防御魔法が最優先。
直撃すれば相当危険だぞ。
ちなみにAクラスの水冷系魔法使いなら氷の柱を数十本撃ってくるぞ」
「……死亡フラグ立ちまくりじゃないか。
BP(Bonus Point)による属性耐性の上昇はできないの?」
「BPはステータスアップにしか使えません。
属性防御は装備品で出来ますよ」
「あちゃー、そうなのか。
じゃあ、BPは敏捷に全振りが良いと思う?」
「はい」
「うむ、そうだな」
「やっぱり、魔力より敏捷優先か。
BPでステータスアップの方法教えてよ」
「その本の『BP』をクリックして、次に『敏捷』をクリックして下さい。
すると『敏捷』の右に『+』『-』『確定』って表示されますから、アップする回数『+』をクリックして最後に『確定』です」
雄介は敏捷を20ポイントアップさせた。
滝城雄介
LV:1
年齢:22
職業:無職
HP:585 (C)
MP:198 (E)
筋力:81 (D)
体力:141 (C)
敏捷:154 (B)
技術:12 (E)
魔力:50 (E)
精神:24 (E)
運のよさ:-999 (評価不能)
BP:0
称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王の加護
特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性
スキル:自動翻訳
魔法:なし
装備:綿の服
所持勇者ポイント:0
累計勇者ポイント:0
「敏捷がBクラスに上がったね。
この評価は50の倍数で上がるのかな?」
「そうですね。
1~50がEで、51~100がDというように上がっていきますよ」
「ふむふむ、ということは201~250がAか。
Aの上はどうなの?」
「S、SS、SSSと上がります。
ここから100間隔でして、251~350がS、351~450がSS、451~550がSSSですね。
SSSより上のプレイヤーはまだ出ていないですね。
ちなみにAとSの差が一流と超一流の違いと言われます。
Sになると強さが人間の域を突き抜けてる感じです」
「人間の域を突き抜けてる強さってどんなんだろうなあ」
「余の契約者であれば、やがてはSクラス以上に進まねばならんぞ」
「そうだね、頑張るよ。
あと、HP・MPの評価は50ごとじゃないね?」
「そうですね。
HP・MPは250間隔なんですよ。
1~250がEで、251~500がDです」
「なるほどね。
ところでさ、前から気になってたんだけど、スキルの自動翻訳って何なの?」
「プレイヤーの皆さん全員に契約した時点で与えられるスキルです。
GWOの世界では地球とは異なる言語が使われているんですよ。
それで自動的に各プレイヤーの母国語に翻訳される訳です」
「お、それは便利だね。
もしアメリカ人のプレイヤーなら英語に翻訳されてるんだ。
異世界でそれが無かったら、もうどれだけ苦労することか」
「うむ、余も日本語は話せんぞ。
魔界で日本語が有るはずがないからな」
「じゃあ、読み書きはどうなるのかな?」
「勿論、読み書きも翻訳されますよ。
書物からの情報収集が出来ると出来ないじゃ大違いですからね」
「へ~、異世界の本か。
ぜひ読んでみたいな。
時間が出来るまでは他のことに裂く時間は無いだろうけどね」
「そうですね。
じゃあ、チュートリアルを先に進めましょうか」
「OK、次のページに進むよ」
雄介が次のページを開くと「第3章 初級魔法講座」と書かれていた。
「あ、やっと魔法覚えられるんだね。
リアルに魔法を使える日がくるとはなあ」
「では、説明しますね。
まず精霊との契約を結びます。
次に自分の魔力を精神力によってコントロールし、精霊に渡します。
精霊は魔力を自然現象に変換して魔法が発動するわけです。
これが最も一般的な魔法である精霊魔法のシステムです」
「GWOの世界では精霊が居るんだね。
どんな精霊が居るのかな?」
「精霊は森羅万象に宿っているのですが、便宜上6種類に分類されますね。
火・水・土・風・光・闇です。
自分と相性が良い属性の精霊としか契約できないのが普通です。
まあ、例外はありますけどね」
「ふむふむ、回復魔法は何属性なの?
あと、雷撃の魔法はある?」
「回復魔法は聖光属性ですよ。
雷撃魔法は風属性の中級以上ですね」
「魔法の使用はステータスの何が影響するのかな?」
「魔法の使用は精霊との相性、そしてステータスの魔力と精神が影響しますよ。
正確には、魔力が威力に影響し、精神が成功率や正確なコントロールに影響しますね」
「となると、魔力・精神が共にEクラスの俺は、成功率・威力共にへぼいってことか。とほほ。
さっきの言い方だと、精霊魔法以外にも魔法ってあるんでしょ?
どんなのが有るの?」
「ダークテンペストを召喚したときのような、召喚魔法は精霊は介入していません。
また時空間を操る時空魔法や魔力をそのまま使う強化魔法と付与魔法が有ります。
あと、私が身だしなみを整えるのに使った念動魔法もそうですよ」
「強化魔法と付与魔法ってどう違うの?」
「自分の能力を強化すれば強化魔法で、他人に使えば付与魔法です。
ちなみに付与魔法の方が難易度が高いんですよ。
自分の体が一番親和性が高いですから」
そのまましばらく雄介はカサンドラを質問攻めにしたのだった。
「……そろそろ、精霊との契約しませんか?」
「あ、ごめんね、色々聞いちゃって。
契約だね、うん、しようしよう」
「6属性それぞれで場所が違うので付いてきて下さいね。
まずは火の精霊です」
カサンドラは雄介を案内して祭壇に連れて行き、祭壇に灯火を点けた。
「ここは火の精霊が集まりやすい場所です。
ここで瞑想をして火の精霊を感じ取って下さい。
感じとれたら、念話で話しかけて、契約をお願いして下さい。
精霊が契約を了承したら、契約成立です。
もし断られたら、しつこくお願いするのは避けた方が良いですよ。
瞑想の経験が無いのでしたら、瞑想補助薬が有りますけど、飲みます?」
「やったことないので、飲むよ。
(ちょっと心配だけどね)」
「雄介よ、待つが良い。
火と闇の精霊については、余から精霊に話した方がおそらくスムーズに契約できるだろう」
「え、出来るんだったらお願い」
ダークテンペストは目を閉じて、何か念話をしている。
雄介とカサンドラはじっとそれを待つのだった。
「雄介よ、成功したぞ。
火と闇の上位精霊と契約をしたからの、最初から火炎属性中級魔法と暗黒属性中級魔法が使えるはずだ」
「うわー、それは良いですね。
普通は契約直後は下級魔法から始まって、魔力が上がって精霊と慣れ親しむうちに中級、上級と進むものですよ。
魔力Eクラスで火炎属性中級魔法と暗黒属性中級魔法が使えるなんて破格ですよ」
「ダークテンペスト、ありがとね」
「ふむ、余が手助けするのは当然のことだ」
その後雄介は瞑想補助薬を飲んで水の精霊・土の精霊・風の精霊・光の精霊と順番に契約を求めていった。
しかし、思うようには契約は進まないのだった。
「自分で話したら契約できたのは風の精霊だけなんて。
成功率25%って、かなり低いんじゃない、俺」
「ダークテンペストとの契約の影響で、水の精霊と光の精霊には怖がられますから仕方ないですよ。
3属性の魔法は使えるようになったんですから、良いじゃないですか」
「雄介よ、どんな魔法が使えるようになったのか、ステータスを確認してみるが良いぞ」
「わかった、やってみる」
滝城雄介
LV:1
年齢:22
職業:精霊魔法使いLV1
HP:585 (C)
MP:198 (E)
筋力:81 (D)
体力:141 (C)
敏捷:154 (B)
技術:12 (E)
魔力:50 (E)
精神:24 (E)
運のよさ:-999 (評価不能)
BP:0
称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王の加護
特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性弱耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性
スキル:自動翻訳
魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・エアスライサー(5)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)
装備:綿の服
所持勇者ポイント:0
累計勇者ポイント:0
「おお、職業が精霊魔法使いLV1になってし、魔法を7つも覚えてる。
職業が無職って辛いんだよね。精神的に。
風雷属性弱耐性は風の精霊と契約したためだろうな。
ファイアーアロー(3)などの数字はどんな意味?」
「それは消費MPですよ。
大抵の魔法の効果は名前でほぼ分かるでしょうけれど、マジックサーチは周囲の魔力を調べられる魔法です。
魔物は皆魔力を持っていますから、索敵に使います。
精神が上がって精密に使えるようになれば、索敵範囲が広がり人間と魔物の区別、敵の魔力の大きさや種族なども分かるようになるでしょう。
ただ、隠密スキルを持つ者は自分の魔力を消して隠れますから、マジックサーチでは見つけられなくなります」
「なるほどね、ふむふむ。
魔法使ってみても良い?」
「じゃあ、あの岩を目標にしたら良いですよ。
周囲に何もないので火事にならないですし」
カサンドラが指差したのは高さ3mほどの大岩だった。
「わかった、やってみる。
……ファイアーアロー!」
雄介は手を振って叫んだが、何も起きなかった。
「雄介よ、魔力のコントロールが出来ておらんぞ。
その魔法なら火の精霊のことを意識し、自分の体内の魔力を分け与えるよう念じるのだ」
雄介はその後1時間ほど練習してようやく成功したのだった。
「やっと出来たけど、ライターの火くらいだね。
的も外してしまったし」
「魔法使いLV1ならそれくらいですよ。
チュートリアルはこれで終わりですし、今日は一日魔法の練習をしたら良いですよ。
明日の朝、出発するのが良いでしょう」
「カサンドラさん、本当にお世話になりました。
有り難うございました」
「ほんの少し、お手伝いしただけです。
これから冒険が始まるんですから、頑張って下さいね。
ここは初心者チュートリアルの場です。
出発したら当分はもう戻ってはこれませんから今晩はご馳走にしますね」
「え、そんな。
もう会えないの?」
「初心者チュートリアルの場はプレイヤーの皆さん共通なのですが、出発は転移陣からバラバラの場所に送られます。
転移先からはこちらには戻れません。
でも、時空魔法のテレポートを覚えたら来れますから」
「分かったよ。
テレポート覚えたら、必ず会いに来るから」
「はい、待ってます。
応援してますからね。
妹さん、必ず助けてあげて下さい」
その日の夕食はカサンドラが腕によりをかけて作った。
雄介が見たことが無い料理が多かったが、どれも美味であった。
これまでのこと、これからのこと、2人と1匹は思う存分歓談するのだった。
そして翌朝、雄介とダークテンペストは出発する、まだ見ぬ世界に向けて。
次回の投稿は明日0時となります。
サブタイトルは「初戦闘」です。
最初から厳しい戦いですよ。
読者の数が順調に増えてます。
読んで下さって有り難うございます。