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100万ポイントの勇者(旧版)  作者: ダオ
第6章 ハッセルト帝国
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第39話 招待

○78日目


 雄介達の会話は話題が途切れることはなく、和気藹々と進んでいた。

食事が終わった頃、ラナが本題を持ち出した。


「そういえばフレンド登録してなかったですね。

登録しませんか?」


「う~ん、それに答える前に確認したいんだけど、どうして今日迷宮に居たの?

偶然?」


「いや、エリスタにスラティナ王国の勇者が来てるって聞いたからっす。

エリスタなら迷宮に居るに決まってるから探してたんすよ。

多分会うために情報流したんじゃないすか?」


「まあね。

ハッセルト帝国の勇者がどこに居るか分からなかったからね」


「忙しくあちこち行ってますから」


「ふむ……フレンド登録しようか」


「私も勿論良いですよ」


 雄介とカサンドラの頭にフレンド申請が浮かんだ。


榎木秋生さんからフレンド申請がされました。


了承しますか? YES NO


ラナ・エマーソンさんからフレンド申請がされました。


了承しますか? YES NO


 雄介とカサンドラはYESを選んだ。

フレンド登録をすると、フレンドがログイン中かどうか、生存しているかどうかが表示され、相手と念話とメッセージのやり取りが出来るようになる。

念話はリアルタイムの会話であり、メッセージは文章が記録され時間のあるときいつでも読むことが出来るのだ。

フレンド登録の最大人数は300人であり、フレンド登録の解消は任意で出来る。


 雄介が秋生達の迷宮に居た理由を聞いたのは、2人がどの程度の気持ちでフレンドを求めているのか知るためである。

2人が雄介達に会うために迷宮に来たのなら、それだけ強くフレンドを求めていることが分かるのだ。

雄介達は、単なるフレンドではなくおそらく協力者として期待されていると受け止めたのだった。



「俺たち、フレンド登録って初めてなんだ。

カサンドラさんとは最初からパーティ登録だったし」


「へ~。

最初からパーティを組むってよっぽど信頼されてるんすね。

あのお堅いカサンドラさんとパーティを組めるだけでも凄いことなのに」


「パーティ組むのはやっぱり信頼できる人だけだから、最初フレンドになってしばらく一緒に行動してから組むことが多いんですよ」


「まあ、普通そうですよね。

でも、私がプレイヤーになったのは……雄介さんを手伝うためだから」


 カサンドラはぽっと頬を染めて言葉をつむいだ。

特に意識してなかったが、これは爆弾発言だった。

カサンドラは絶世の美女であり、チュートリアル係としてプレイヤー全員に接しているため、プレイヤー間ではある種のアイドルのような位置づけであった。

またプレイヤーになるとは、命がけで魔物と戦うことを意味する。

つまり、雄介のために命をかけますという言葉と同義なのだ。



「ぐはっオレの心に100万ポイントのダメージを受けたっすよ」


「これが広まったら、プレイヤー達大変だろうなぁ」


 秋生はテーブルに突っ伏してしまい、ラナはため息をついた。


「えっ、そうなの?」


「まさかそんなこと、無いですよね?」


「あれ? カサンドラさん知らないんですか?

男性プレイヤーで憧れてる人多いですよ。

テレポート覚えて告白しにいくって人何人も見ましたよ?」


「カサンドラさん、そうなの?」


「えっと、ナンパされたことは多いですよ。

でもそれは、管理者補助だった私と仲良くなったら有利だって思ったからですよね」


「いやいやいや、分かってないっすね。

カサンドラさんのファンクラブがあるんすよ。

みんな振られまくってたっすけど」


「ええっファンクラブ!?」


「マジっすよ。

こりゃ~ファンクラブは解散かもしれないっすね」


「プレイヤーは男性が多いですから。

ただでさえ女のプレイヤーは人気があるのに、カサンドラさん美人ですし」


 現時点でプレイヤーは約500人で、女性プレイヤーは3割である。

カサンドラは芸能人でも珍しいくらいの美人であり、女性プレイヤー約150人の中で1番と言えるだろう。

チュートリアル係だったため知名度は95%以上であり、人気NO.1である。

ニ○ニ○動画における初音○クのような人気といえば分かりやすいだろうか。

ちなみにカサンドラがチュートリアル係を辞めてからは他の人がやっているため、ごく最近に始めたプレイヤーはカサンドラを知らないのだ。


「ってことは、俺かなり恨まれるかな?」


「流石にファンクラブって言っても本気で恨んだりはしないっすよ。

……何人かを除いては」


「何人か本気で恨みそうな人が居るんだね」


「そういえば、あまりにナンパがしつこくて狭間の世界への立ち入り禁止にした人が何人か居ましたよ」


「へ~そんなことが出来たんだ」


「ええ、管理者補助の権限だったので勿論今は出来ませんよ」


「狭間の世界にテレポートできなくなったって人の噂聞いたんですけど、ホントだったんですね」


「チュートリアル係の仕事を邪魔するんですから、仕方がなかったんですよ」


「そういえば雄介さん、まさかと思いますがカサンドラさん以外にGWOの女性と付き合ったりしてないっすよね?

基本的に勇者ってだけでモテモテですからね。

知ってる奴に30人のハーレムを持ってるのが居ますよ」


「え……それは……」


 雄介の脂汗を流している。

以前弟子たちに話したときは心の準備が出来ていたが、今度は突然であったためだ。

そこでカサンドラが助け舟を出した。


「私と付き合い出す前に付き合ってる人が居たんですよ。

なので、全部承知の上で着いて行くって私が決めたんです」


「こちらの世界で付き合ってる人は3人で、その後カサンドラさんと付き合い始めたんだ。

それ以降は増えてないからね」


「うわ~マジっすか。

これはもうファンクラブのメンバーに知られたら刺されかねないっすね」


「へえ、雄介さんって真面目な人だと思ったのに…………なんてね。

男性プレイヤーの大半は何人も付き合ってますよ。

魔物に襲われた女性を助けるなんて状況は沢山ありますから。

だから私はあまり気にしないかな。

秋生もメイド沢山雇ってるし」


「わーわー、メイドのことは言うなよ。

あれは男の夢なんだ」


「へえ、メイドさんがいっぱい居るんだ」


「見たいっすか?

せっかくだから今晩は家に来ません?」


「ん~そうだね。

カサンドラさんはどうする?」


「私も行きます」


 カサンドラはきっぱりと答えるのだった。



 こうして今晩は秋生の邸宅に泊まることになった。

秋生の邸宅は帝都ロンドニアにあるため、弟子たちも一緒にテレポートで移動した。

広さ1000坪の土地に大邸宅が構えられていた。

レンガ造りの3階建てで、青い屋根をした洋館だった。

雄介には部屋がいくつあるのか見当もつかないほどだった。

庭木もよく手入れされている。

中に入ると30人ほどのメイドと執事がおり、ピシっと並んでお辞儀をされた。

調度品はどれも高級で品の良い物が並んでいた。


「おお、凄いなぁ。

これだけ立派な屋敷は写真くらいしか見たことないよ」


「ここが秋生の家で、私の家も帝都にあるけどここの半分くらいかな」


「ここの半分でも凄く大きいよ。

俺の家は1/5くらいかな」


「それなら少し大きめの一般家庭くらいね。

人は家を財力を測る目安にするから、貴族と付き合っていくなら大きくて立派な方が良いわよ」


「う~ん、別に貴族と付き合う必要はあまり無いからね」


「勇者ポイントを稼ぐには国全体を政治から変えたほうが良いし、政治を変えるには貴族との付き合いは欠かせないわよ?」


「それは……そうかもしれないな。

今まではずっと魔物と戦ってばかりだったからなぁ」


「地球でこれだけの家を持つのは無理っすけど、こっちなら物価が安いから何とかなるっすよ。

プレイヤーの力と地球の知識を上手く使ったら相当稼げるっす」


「それは確かに」


「あの、2人はプレイヤー全体ではどれくらいの位置なんですか?」


「えっと、プレイヤー全員知ってるわけじゃないっすけど、多分SSSクラスは上位10%以下っす。

ラナは最古参の1人っすよ」


「へえ、最古参が3年なんだ。

あれ?

秋生君は普通くらいって言ってなかった?

それにラナさんは少し遅いくらいとか」


「ラナの普通は廃人プレイの普通っすよ。

まあ、上位プレイヤーは生活の拠点がこっちになってるのがほとんどっすから。

でないと、上位プレイヤーにはなれないし」


「そういえば、俺も妹の見舞い以外じゃほとんどログアウトしてないな」


「妹さん、入院してるんですか?」


「ああ、ガンで入院中だ。

勇者ポイントが1万になったら治すよ」


「あ、報酬の万病薬ですね。

私は自分のケガを治すためにプレイヤーになったんですよ。

万傷薬って変な名前でしたけど、ちゃんと治りましたよ」


「良かった。ちゃんと効果あるんだね。

実際に使った人に会ったことなかったし、心配してたんだ。

万傷薬も1万ポイントだったね。

どれくらいかかったの?」


「1年ほどかかりました。

ものすぅ~ごく苦労しましたよ。

今なら1万ポイントは結構すぐ貯まりますけどね。

雄介さんはもうどれくらい貯まってるんです?」


「えっと、5797ポイントだね」


 雄介の言葉を聴いたとたん、ラナも秋生も目を丸くした。


「……え~っと、確かGWO歴は2ヶ月半ですよね?

一体どんな方法使ったんです?

貴重な情報なら同等の情報を出しますよ」


「そんな大した情報じゃないよ。

アスタナ共和国が悪魔に滅ぼされたのは知ってるよね?

共和国の町は悪魔とアンデットの集団に攻撃されているのだけど、町の防衛をしたら物凄いポイントが貰えたよ。

2000匹ほどの魔物と戦って、2人でそれぞれ2000ポイント以上得られたね」


「町防衛イベントですか。

確かに滅多にないけど、起きた時は凄くポイントも多いですね。

対価の情報は……お勧めの報酬で記憶力増強薬というのが有ります。

5000ポイントで貰えるのですが、本を一読したら暗誦できるほどの記憶力が得られます。

それがあれば地球の知識をGWOに持ち込むのがとても楽になりますよ。

長期的に見て、凄くポイントを得るのが効率よくなります」


「ほ~ほ~、なるほど。

お得情報だね、ありがとう♪」


「アスタナに行ったことあるんすね。

それならオレらに協力してもらえないっすか?

他のフレンドにも声をかけてるけど、悪魔との戦いは少しでも戦力がほしいんすよ」


「協力するのは構わないよ。

ただ悪魔王(デーモンロード)のことは知ってる?

SSSクラスが数人で戦わないと勝てないくらい強いらしい」


「そうらしいっすね。

ドラゴンライダーのカセナスが手も足も出なかったって言ってたっす」


「え?

ドラゴンライダーのカセナスって共和国のドラゴンライダーのこと?

共和国のドラゴンライダーって生きてたの?」


「そうっす。

カセナスもフレンドっすよ。

ログアウトして助かったって言ってました。

ただ右足を失ったし、悪魔と戦うのは勘弁してくれってことなんで戦力には数えてないっす」


「右足を失ったのか。

それでも命が助かって良かったよ」


「カセナスさんは狭間の世界に何度か来てましたよ。

深紅のドラゴンに乗ってましたね」


「そういえば、2人の幻獣は見てないけど、どうしたの?」


「ああ、SSSクラスならよっぽどの相手じゃなければ勝てるんで別行動してるっす。

偵察を任せてるんすよ。

この国を周って、異常があったらオレらに知らせるんす」


「なるほどね。

まあ、迷宮で見たと思うけど俺の幻獣は黒不死鳥(ブラックフェニックス)の王で、カサンドラさんの幻獣はバハムートだよ。

2人の幻獣はどんなの?」


黒不死鳥(ブラックフェニックス)の王って凄いですね。

普通の黒不死鳥(ブラックフェニックス)より強いんですよね?

私の幻獣はペガサスで、秋生の幻獣はフェンリル狼ですよ」


 ペガサスは高さ1.8mほどの白い天馬である。

機動力は幻獣の中でもかなり高い。

メデューサの血から生まれたという伝説があり、石化を始め状態異常には高い耐性を持つ。

また水の属性を持つため、水冷属性高耐性を持つ。

ラナが下半身不随だったため、機動力を重視して選ばれたのだ。


 フェンリル狼は全長10mほどの大きな狼である。

秋生のフェンリル狼は藍紫色をしている。

攻撃力と生命力が高く、滅多なことでは死なない。

悪神ロキと巨人アングルボザとの間より生まれたとされ、暗黒属性高耐性を持つ。



「黒王は普通の黒不死鳥(ブラックフェニックス)よりずっと強いよ。

ペガサスとフェンリル狼ってなんだか対照的なイメージだね」


「まあね。

私と秋生は性格が全然違うから。

ところで、明日からはどうするんです?」


「迷宮探索が12階層までしか進んでないから、その続きの予定だよ」


「エリスタの迷宮は10階層以降から強力な武具が出るから頑張って下さいね」



次回の投稿は明後日0時となります。

サブタイトルは「迷宮下層 (1)」です。

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