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100万ポイントの勇者(旧版)  作者: ダオ
第6章 ハッセルト帝国
39/67

第34話 迷宮都市

○67日目


 雄介達は迷宮での初戦闘をしていた。

相手はBクラスのキメラが5匹だった。

アスタナでも戦ったことがあり、弟子4人だけでも倒せる魔物のはずだった。

しかし、アスタナのキメラより遥かに強く、かなりの苦戦をしていたのである。


 キメラは獅子の顔と山羊の顔が並んでおり、尻尾は大きな蛇である。

全長は約5m程度で、3つの頭が別々に動きながら襲い掛かる魔物である。

火炎を吐き出す能力を持ち、蛇は猛毒を持つ。


「アスタナのキメラより一回り大きいぞ。

持っている魔力が遥かに強いから気をつけろよ」


 雄介とカサンドラは最初手を出さず、様子を見ていた。

トゥリアが速度でかき回し、リセナスが獅子と山羊の顔を抑えようとした。

すると獅子の顔が火炎を吐き出し、すかさずロベリアがゾディアックウォールでそれを防いだ。


「大丈夫です。

これくらいなら防げますから。

……え? ええっ!?」



 獅子が火炎を吐き終えたと思ったら、その直後山羊が吹雪を吐き始めたのである。

急激な温度差でゾディアックウォールにひびが入った。


「いかん。破られるぞ。

回避しろ!」


 雄介がロベリアを抱きかかえ、距離を取ったと同時にゾディアックウォールが砕け散ったのだった。

ロベリアが頬を赤らめる。


「有難うございます、雄介様」


「これ位当然のことだ。

この強さ、Aクラス並と思った方が良い。

Aクラスが5匹相手じゃ、流石に荷が重いだろ。

俺が2匹、カサンドラさんが2匹を担当する。

弟子4人で1匹は倒せよ」


「「「「「はい」」」」」


 カサンドラがプラズマブレイカーを放つと、電撃が走りキメラの山羊の顔を焼き尽くした。

続いてファイアーバーストを発動させた。

獅子の顔が火炎を吐き出すが、ファイアーバーストの火球が弾き返す。

そのまま獅子の顔が爆炎に包まれ、キメラは息絶えるのだった。


 雄介は韋駄天を使い距離を詰めると、まず尻尾の蛇を切り落とし、続いてフレイムでもう1匹の蛇を焼いてしまった。

運勢最悪の雄介は蛇にかまれると確実に毒を受けることになるためだ。

キメラの足を攻撃して動きを止めると、安全な後方から攻撃を加え、やがてキメラを倒すのだった。

雄介が2匹目のキメラに止めを刺すころ、弟子たちもキメラへの適切な戦い方を見い出し、優勢に戦えるようになっていた。

そしてカサンドラに遅れること15分、最後のキメラの心臓部にトゥリアのクリティカルヒットが決まった。

倒したと思った瞬間、キメラは最期の力を振り絞り、吹雪のブレスを吐き出した。

カサンドラがエアロガードで全員を包み込み防ぎきるのだった。

そうしなければ数人が凍傷になっていただろう。


「初戦でこれほど苦戦するとはなぁ。

あと、倒したと思っても残心は取っておかないとダメだぞ」


 雄介の発言にリセナスが同意する。


「ええ、気をつけますよ。

アスタナのキメラとは攻撃方法も動きのパターンも違っていました」


「山羊の顔が吹雪を吐いたり、尻尾の蛇に噛まれなくても毒液を飛ばしたりしたのは初めてみたわ」


「動きも相当速かったですよ。

レッドドラゴンと遜色無かったです」


「ゾディアックウォールが破られるなんて」


 カサンドラがサブリーダーらしいところを見せる。


「今までの魔物の知識は、迷宮では役に立たないと思った方がいいでしょうね。

先入観があると、予想との違いに対処が遅れますから」


「しばらく休憩したら出発するぞ。

キメラの身体は亜空間に収納しておいて、魔石の採取は外でやるからな。

(休憩中にステータスを確認しておくかな)」


滝城雄介


LV:46


年齢:22


職業:冒険者LV36・精霊魔法使いLV32・強化魔法使いLV27・念動魔法使いLV21・時空魔法使いLV18


HP:1895 (SS)


MP:1654 (S)


筋力:361 (SS)


体力:391 (SS)


敏捷:410 (SS)


技術:396 (SS)


魔力:338 (S)


精神:320 (S)


運のよさ:-999 (評価不能)


BP:20


称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の加護・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の寵愛・スラティナ王国の勇者・スラティナ王国武術指南役・スラティナ王国情報管理指南役・竜殺し(ドラゴンキラー)・スラティナ王国最強の男


特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性中耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性


スキル:自動翻訳・疾風覇斬(100%)・天竜落撃(100%)・フレアブレード(100%)・サンダーレイジ(100%)・ブラッドブレイク(100%)・思考加速(100%)・流水(100%)・韋駄天(100%)・記憶力上昇(100%)・金剛力(100%)・真 疾風覇斬(80%)・真 天竜落撃(80%)・ディメンションエッジ(40%)・超回復(100%)・神移(50%)・飛燕三連突き(40%)


魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・クリムゾンフレア(150)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・プラズマブレイカー(50)・ライトニングインパクト(120)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)・ブラックエクスプロージョン(80)・アビスグラビティ(220)・強化魔法(任意)・複合魔法(魔法次第)・クロックアップ(150)・クロックダウン(150)・シルバーゾーン(200)・テレポート(距離次第)


装備:水晶竜牙の太刀・水晶竜鱗の鎧・水晶竜鱗の兜、水晶竜鱗の小手・水晶竜鱗の具足・光王虎のマント


所持勇者ポイント:4985


累計勇者ポイント:4985


「お、LVUPしてる。魔力を上げておくか。

最近上がってなかったせいかもしれないけど、経験値が普通のAクラスより多いような……。

(それに、おかしいな。

獲得勇者ポイントが8ポイントだけだ。

魔物が迷宮から外に出なければ、多くの人を殺さないから少ないのかもしれないな。

迷宮の魔物は勇者ポイントは少ないが経験値が多いか。

後で検証しよう)」



 キメラとの戦いの3時間前、雄介達は迷宮都市エリスタに到着したところだった。


 迷宮都市とは一体何か。

そもそも迷宮都市の迷宮とは人造の建造物ではない。

迷宮造り(ダンジョンメイカー)と呼ばれる高い知能を持つ鉱物型魔物の巣である。

大きさ数mほどの朱色の球体の魔物で、竜脈の流れる土地に大地属性の魔法を使って穴を掘り、そこを巣にしているのだ。

迷宮造り(ダンジョンメイカー)は身を護るために迷宮に周辺地域から魔物を呼び寄せたり、生み出したり、罠を作ったりする。

時間経過と共に迷宮は段々と広く深く複雑になり、そこに住む魔物も強大なものになる。

迷宮内は魔物にとって非常に居心地が良く繁殖率が高いため、やがてはその迷宮から多くの魔物が溢れ出てくることがあるのだ。


 スラティナ王国などの多くの国々では、迷宮が発見されるとすぐさま高クラスの冒険者パーティが組織され迷宮造り(ダンジョンメイカー)の討伐を行う。

迷宮造り(ダンジョンメイカー)を討伐すると、そこは迷宮としての機能を失いただの洞窟になってしまうのだ。

そのため、スラティナ王国には迷宮都市はないのである。

それに対し、ハッセルト帝国などの一部の国々では迷宮造り(ダンジョンメイカー)を利用し、迷宮都市として管理している。


 迷宮の魔物は魔石という石を体内に飲み込んでいる。

そのため、迷宮外の魔物に比べ同種の魔物でも迷宮の魔物は強いのである。

魔石は迷宮造り(ダンジョンメイカー)が竜脈を利用して生み出した物である。

魔石には高濃度の魔力が宿っており、魔法具と呼ばれる色々な機能を持つ道具を作成することが出来る。

また迷宮で見付かった武具は特別な能力を持つ物が少なくない。

迷宮都市とは迷宮を利用するため、幾重にも堅固な防壁と結界を張り巡らすことで安全を確保することによって、迷宮の周囲に発展した都市なのである。


 迷宮都市があれば、強力な魔物と常時戦うことになり、その国の兵力は強化される。

また珍しい魔法具や武具によって経済は発展し、軍事力が強化される。

だが、安全管理に不備があれば迷宮から溢れ出た魔物によって迷宮都市が壊滅することも有るのである。

即ち、迷宮都市とは諸刃の剣なのだ。

ハッセルト帝国には5つの迷宮都市があり、その1つが今雄介達が居るエリスタである。


 エリスタの建物は装飾が少なく、実用性重視だった。

王都の建物は木造が多かったが、エリスタはレンガ造りの家がほとんどである。

全体的に裕福だと言えるだろう。


「ここが迷宮都市ですか。

流石に冒険者が多いですね」


「修羅場を潜ってる冒険者が多そうだわ。

帝国の強さを肌で感じるわね」


「エルフは少なそうですね。

少なくともこの都市には見当たらないです」


「そういえば、居ませんね。

雄介様はどう思います?」


「迷宮を効率的に活用するために都市設計がされているな。

武器屋・防具屋・鍛冶屋・道具屋・宿屋など冒険者や兵士にとって必要な店は豊富になるが、必要ない物はばっさり削られてる。

徹底的に人工的な都市だからこそ、エルフには居心地が悪いのだろうな」


「自然の融和を目指すのがエルフですからね」



 迷宮に入るには迷宮管理局に登録が必要である。

そのため雄介達は管理局に向かった。

雄介が代表して受付嬢に向かった。


「いらっしゃいませ。

どういったご用件でしょうか?」


「迷宮探索のための登録がしたいのだが」


「身分証明書のご提示をお願いします」


「これで良いかな」


 雄介は全員の冒険者証明書と入国許可証を見せた。


「Sクラスが2人でAクラスが4人のパーティですね。

あら? スラティナ王国から来られたのですか。

よく入国許可証を取れましたね」


「ああ、迷宮で得られた魔石を半分提出するのが条件だけどな」


「貴重な魔石ですから仕方ありませんよ。

こちらが提出して頂く書類になります」


 書類に必要事項を記入し、提出した。


「はい、書類に不備はありませんね。

ではこちらが迷宮入場許可証です。

無くしたら再発行料は銀貨3枚ですよ」


「わかった。

ありがとう。

迷宮についての情報はどこで入手したら良いのかな?」


「どういった情報がお知りになりたいですか?

基本的な情報はここで購入して頂けますが」


「迷宮の地図と罠の配置、出てくる魔物について教えてほしい」


「現在確認されているのは地下23階層まででして、22階層までの地図しかありません。

あと罠の配置は頻繁に変わりますので、地図には載っておりません。

魔物についての情報は地図に記載されております。

また迷宮の構造は少しずつ変化しますので、地図との違いがあれば報告をお願いします」


「迷宮の構造が変化する?」


「ええ、迷宮造り(ダンジョンメイカー)が作り変えているのです。

年々巧妙な造りになっていますので、気をつけて下さいね」


「なるほどね。

では、地図を貰おうか」


「1階層当たり銀貨2枚ですので、22階層までの地図で銀貨44枚です。

勿論1階層ずつでも販売しております」


「わかった。

22階層までで頼む」


 雄介は銀貨44枚を支払い、地図を受け取ったのだった。



 3つもの門を超えて結界を超えて、ようやく迷宮の入り口の前に立っていた。

迷宮とはいえ迷宮造り(ダンジョンメイカー)が掘った穴に過ぎないため、雄介はそれほど大きな物だとは思っていなかった。

だが、その穴は直径が30mを超えており、いわば6車線のトンネル並というべき巨大な洞窟だった。

洞窟の深さは底知れず、竜脈の影響だろうか、雄介のマジックサーチを使っても深部は探れなかった。

まるで地獄まで続く穴の如しであった。


 まだ雄介達は知らない。

未だ戦ったことのない強敵との死闘があること、そして雄介以上の強き勇者との出会いがあることを。



次回の投稿は明後日0時となります。

サブタイトルは「迷宮 (1)」です。


総合評価が1000ポイントを超えました。

読者の皆様のお陰です。

有り難うございます。

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