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100万ポイントの勇者(旧版)  作者: ダオ
第3章 王都
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第18話 Sクラスの魔物

○34日目


 雄介は冒険者ギルドの受付に向かった。

依頼の確認をしていた冒険者たちが雄介の姿に注目していた。

知らない者が周囲に聞いている。

何人かは黒鷲のユースケを知っていたが、それでも勇者の件はまだ聞いていないようだった。



「Aクラスの魔物の討伐依頼はないですか?」


「黒鷲のユースケさんですね。Aクラスは3件ございます。

ミノタウロス、シーサーペント、キマイラです」


「では、その3件の詳細を教えて下さい。

3件とも受けます」


「え、Aクラスを3件ですか。

普通1件に準備も含めて1週間はかかるものです。

どれもそれなりに離れていますし、1件ごとが宜しいのでは?」


「どれも1匹ずつなのでしょう?

移動の心配はいらないですし、倒すのは10分かからないですから」


 受付嬢は驚愕していた。

雄介はその3匹の場所と得られる範囲の情報を集めるとダークテンペストに乗って出発するのだった。

まずはミノタウロスから行くつもりだ。


 ミノタウロスは身長約3mの牛頭人身の怪物だ。

ミノタウロスは数日前王都から北東80kmのところにある森の中に現れた。

森に入った村人が襲われたそうだ。

かろうじて逃げ延びた数人の通報でミノタウロスの出現が明らかになったのである。

ちなみにミノタウロスの討伐確認部位は角である。


 村人から話を聴き、巨大な金棒を持っていること、詳しい出現位置、もう何人も犠牲になっていることを確認した。

雄介の頭にクエストが浮かんだ。


クエスト:ミノタウロス討伐


獲得勇者ポイント:62



 雄介が森の中に入っていく。

草木が鬱蒼と生い茂り、空は見えず昼間でも太陽は射さないようだ。

地面を見ると、巨大な牛の蹄の跡があった。普通の牛より二周りは大きい。

ミノタウロスのものに違いないだろうと考えた雄介はマジックサーチを使った。

左前方1kmのところに魔力の反応がある。

これがミノタウロスなら、どうやら力は強くても魔力はそれほどでもないようだ。

雄介はいつもの通りブラインドハイディングを使い、ダークテンペストに挟撃の指示を出す。


 気配を隠し、ゆっくりと近づいていく雄介。

あと50mのところでようやく姿が見えた。やはりミノタウロスだった。

ミノタウロスはイノシシを頬張っていた。牛頭なのに肉食だったのだ。


 ダークテンペストは既に向こう側に回っている。

自分にクロックアップをかけて時間を加速させる。

ダークテンペストが黒炎弾を放つと同時にプラズマブレイカーを撃ち込んだ。

ミノタウロスは攻撃に気が付き、黒炎弾をかろうじて避けるが、プラズマブレイカーが直撃した。

皮は裂け、肉が焦げた一撃だが、まだ生きている。


 黒竜鋭牙の大剣を握ると雄介は突撃し、ダークテンペストは援護に回る。

クロックアップのためか、ミノタウロスが止まっているように感じた。

金剛力を発動させ、ブラッドブレイクを右腕に叩き込んだ。

利き腕を切り落とされて叫び声を上げるミノタウロス。

叫び声は「ブモーブモモー」だった。

左腕で金棒を振り回そうとするが、そんな遅い攻撃が雄介に当たるはずもなかった。

悠々と避けるともう一度金剛力を発動させ、フレアブレードで左腕に切りつけた。

両腕を失い、ミノタウロスは頭を振り回す以外の攻撃手段が無かった。

雄介は止めの一撃として練習していた新技、真・天竜落撃を使った。

袈裟切りに切りつけられたミノタウロスは真っ二つに断ち切られたのだった。


「横で見ていたが危なげがなかったぞ。

雄介よ、強くなったな」


「Aクラスとはいえ、1匹だけだったからね。

攻撃手段を1つ1つ潰して止めを刺しただけさ。

LVUPは1つだけだね」


 雄介はステータスを見ている。


「BPはどうする?」


「敏捷を20上げておこう。

魔物の攻撃は全て避けないと大変だからな」


「うむ、そうであろうな」


「さて、角を取ったらシーサーペントに向かおう」



 シーサーペントは大海蛇とも言われ、体長約20mもあり、頭はワニのようで体は蛇のようである。

色は青みがかった緑であり、海上の船を襲うのだ。

海の魔物は倒しにくく、もう3ヶ月も依頼が出たままだという。

討伐確認部位は鱗だそうだ。

王都から東に300kmに港町があり、その付近の船が襲われるそうだ。

そのため、その港町は漁ができない状態に追い込まれていた。


 漁師から話を聴くと、勇者様のためなら囮として船を出してもよいという人が居た。

雄介は船を動かせず、ダークテンペストで海上を飛んでいるだけではシーサーペントが出てくる可能性は低い。

苦渋の決断だったが、やむを得ずその人に囮役を頼むことにした。


 雄介はマジックサーチを使いながらシーサーペントが出るのを待った。

ダークテンペストは海には潜れず、雄介が泳いでシーサーペントと戦うのは無理がある。

魔法で倒すことが考えられるが、破壊力のある火炎属性魔法は海中の敵には効果が薄い。

雄介は対応策を考えていた。

海に出て2時間、右前方の海中に魔力の反応があり、ミノタウロスより大きかった。

雄介の頭にクエストが浮かんだ。


クエスト:シーサーペント討伐


獲得勇者ポイント:86


 シーサーペントが海面から頭を突き出し、船に飛びかかろうとする。

ダークテンペストに乗った雄介は船の前に出て、シーサーペントを牽制した。

ダークテンペストが黒炎を放ち、ダメージはほぼ無かったがシーサーペントの動きを止めた。

雄介がブラックエクスプロージョンを放ち、シーサーペントの直下の海中を爆発させた。

数m程度だが、空中に打ち上げられるシーサーペント。

そこですかさずシルバーゾーンを発動させ、シーサーペントを亜空間に閉じ込めた。

雄介は複合魔術の習得で同時に2つの魔法を使用できるため、ブラックエクスプロージョンの直後にシルバーゾーンを発動できたのである。


 雄介とダークテンペストは亜空間に飛び込んだ。

もはやシーサーペントは陸に上がったのと同様である。

真・疾風覇斬でシーサーペントを斬り捨てたのだった。


 囮役を務めた漁師にケガはなく、港町まで送っていった。

漁師たちはこれでまた漁ができると大喜びであった。



 時空魔法シルバーゾーンは亜空間を創り出す魔法である。

ある程度自由な大きさの亜空間を作成でき、物を収納したり、敵を閉じ込めたり、自分が入ったりできる。

亜空間の外から中の敵を攻撃するのは、不可能ではないが難しい。

また、敵が強力な魔力を持っていたり、時空魔法を習得していると、閉じ込めても出てきてしまうことがある。

今回態々空中のシーサーペントを閉じ込めたのは、海中のシーサーペントを閉じ込めると中が海水で埋まってしまい、雄介が戦えないためである。


「LVUPはまた1つだけか。

また敏捷を上げておくな」


「次はキマイラか。

だがその前にしばらく休憩を取っておいた方が良かろう」


「じゃあ、港町の宿屋で一旦休んでおくか」



 雄介とダークテンペストが2時間の休憩を終えると夕方になっていた。

ここで終えても良かったはずだが、勇者ポイントのため最後のキマイラを倒しておきたいと狩りを続行することにした。


 王都から東南200kmの位置に洞窟があり、キマイラが住み着いたという。

キマイラとは獅子の頭と山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ化物だ。

尻尾の蛇は猛毒を持ち、運のよさが最低の雄介が噛まれれば確実に毒状態になるだろう。

口から火炎を吐くのだが、この点は火炎属性絶対耐性の雄介にとって脅威ではない。

つまり毒蛇にさえ気をつければ、あまり心配いらない相手と言える。



 雄介とダークテンペスト、洞窟に入っていった。

洞窟はかなり大きかったため、ダークテンペストはそのままで入れたのだ。

視力強化を使うと洞窟内も明るかった。

マジックサーチを使うと、奥で強大な魔力の反応があった。


「おかしい、異常なほど魔力が大きいぞ」


「雄介、油断するな。どうも冷気を感じる」


 雄介たちは先に進んだ。

そこには、息絶えたキマイラに舌鼓を打つ白銀色に輝くドラゴンがいた。


「ほう、このような所に人間が来るとは。

デザートに良いかもしれんな。

それに黒い不死鳥(フェニックス)とは旨そうだ」


雄介の頭にクエストが浮かんだ。


クエスト:クリスタルドラゴン討伐


獲得勇者ポイント:227



 クリスタルドラゴンはSクラスの魔物だ。

体長15mほどのドラゴンであり、体中がクリスタル状の結晶で覆われているためこの名が付いた。

身体は硬く、よほどの聖剣名剣でなければかすり傷を付けることすら難しいとされる。

水冷属性魔法や聖光属性魔法を得意とし、吹雪のブレスを吐く。

ドラゴンは金銀財宝を集める習性があり、クリスタルドラゴンは宝石が好みである。

討伐確認部位は鱗と角だ。

相当に珍しい魔物であり、そんな魔物とばったり出会うこと自体、雄介の運の悪さを示していると言えるだろう。


「雄介、あいつはAクラスとは桁違いの化物だ。

引いても良いのだぞ」


「Sクラスのクリスタルドラゴンから逃げてたら悪魔どもとは戦えないさ。

何としても倒してみせる」


 雄介はファイアーバーストを使い、ダークテンペストは黒炎弾を放ってクリスタルドラゴンを牽制する。

雄介はクロックアップを使い、爆炎を目隠しにして突撃した。

クリスタルドラゴンは巨体のためか動きが鈍かった。

金剛力を使い、フレアブレードを叩き込み、クリスタルドラゴンの右前足に直撃した。

手ごたえがおかしい。

まるで木刀で鉄板を打ったように、刃が食い込んでいかないのが分かった。

ドラゴンが雄介に向き、吹雪のブレスを放った。

雄介は韋駄天を発動させ、ブレスを回避し距離を取った。


「我の身体に1cmもの傷をつけた者は久しぶりだ。

なかなかやるではないか」


「くそっ、たった1cmかよ。

防御にえらく隙があると思ったらそのせいか」


「その通りだ。

それにこの程度の傷なら」


 クリスタルドラゴンの傷が見る見るうちに塞がっていった。

ドラゴンが聖光属性魔法ヒールを使ったのだった。


「ちょ、堅い上に回復魔法が使えるってどんな無茶だよ」


「わっはっは、いくらでも攻撃してくるがよい」


「(黒王、しばらくの間、あいつの相手を頼む。

俺は複合魔法の準備だ)」


「(良かろう。何とか時間を稼いでみせよう)」


 ダークテンペストが高速飛行でクリスタルドラゴンを翻弄する。

洞窟内で壁に翼をこすりながらも、飛び続けるダーク。


「(今だ。離れろ)」


 雄介は独自魔法(オリジナルスペル)を使った。

魔力操作強化を使い複合魔法を発動させ、クリムゾンフレア&ブラックエクスプロージョンを放ちドラゴンに直撃させた。

爆炎が渦巻き、黒色の爆発が辺りを破壊した。

同時にダークテンペストは全力でドラゴンから距離を取った。

洞窟内での爆発系魔法の使用である。

雄介は耐性のため魔法のダメージはないが、洞窟が崩れてくる。

ダークテンペストは雄介を咥えると、洞窟から飛び出した。


 雄介は洞窟から出るとステータスを確認する。

ドラゴンの獲得勇者ポイントは無かった。


「まだ生きてるぞ。

警戒しつつ、崩れるのが収まったらダメージを確認する」


 洞窟の奥は完全に崩れていた。

クリスタルドラゴンは瓦礫に埋まっているはずだ。

その時、洞窟の奥から何か白い光が放たれた。

闇夜に突然太陽が上がったかのような強烈な光だった。

瓦礫が次々と粉砕されていく。

聖光属性上級魔法ホーリーカルナシオンだ。

その奥から憤怒を撒き散らしながらクリスタルドラゴンが現れた。


「おのれ、餌に過ぎん身で我にこのような傷を負わせるとは」


 クリスタルドラゴンの左前足は消し飛んでいた。

完全に無くなってしまった以上、足の再生は回復魔法でも不可能だろう。

だが、まだまだ戦闘力を残していることは分かった。



「(雄介、さっきの魔法には奴の身体を砕ける威力がある。

頭部に直撃させれば、倒せるはずだ)」


「(移動速度は落ちているだろう。

隙を作って複合魔法をぶち込むぞ)」


 クリスタルドラゴンに最早油断はなく、雄介の魔法を警戒していた。

ドラゴンは雄介を狙い竜の咆哮(ドラゴンロア)を放った。

運のよさ最悪の雄介は竜の咆哮(ドラゴンロア)を防ぐことが出来ず、硬直してしまった。

ドラゴンは一歩も動けない雄介を狙い、水冷属性上級魔法アイシクルディザスターを撃つのだった。


 雄介に零下100度を超える吹雪と数百本に及ぶ氷柱が迫った。

これをくらえば氷像となり砕け散る他はないだろう。

雄介の前にダークテンペストが立ちふさがる。

体中に火炎を纏って吹雪を防ぐダークだったが、氷柱は防ぎきれなかった。

ダークの身体に次々と氷柱が突き刺さる。

100本以上の氷柱を受けたダークテンペストは息絶えたのだった。


「黒王~~~!!!」


 雄介は慟哭した。

やがて蘇ると分かっていても叫ばずにおれなかったのだ。

クリスタルドラゴンが近づく。

雄介は避けようとするが、冷気のため身体が凍りつき動きが鈍かった。

ドラゴンは雄介の左腕に噛みつき食いちぎった。


「片腕では複合魔法は使えまい。

不死鳥でも生き返るには数時間はかかる。

貴様の命はあと数分だ」



次回の投稿は明日0時となります。

サブタイトルは「決着」です。

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