第11話 オーガとの戦い (2)
○16日目
数えればハイオーガ5匹、オーガメイジ4匹、オーガ20数匹だった。
もっとも後に増援が来るかもしれないが。
ハイオーガがオーガをまとめて前衛になり、オーガメイジは後衛になるようだ。
ある程度戦術を使用してきたと言える。
おそらくはオーガヘッドが教えたのだろう。
武装のLVも先ほどより上がっている。
大剣やメイスを持つオーガが何匹も居るし、ハイオーガは斧や槍や盾を持っている。
オーガメイジは杖を持っている。
鎧を着ている者は居ないが、筋肉が鎧のようだ。
オーガメイジがソニックメッサーを放った。
雄介はエアロガードで身を護った。
ダークテンペストは上空に避けている。
オーガ5匹が固まって突撃を仕掛けた。
雄介は敏捷強化でかろうじて避けることができた。
避けた先にハイオーガが迫る。
鋭き槍の切っ先が雄介を串刺しにしようとした。
大剣で受け流す雄介。
守勢に回ると多勢に無勢でやられると直感した雄介は、ダークテンペストに指示を出す。
ダークテンペストに後衛のオーガメイジを任せた。
雄介は前衛のオーガたちを受け持った。
雄介は思考加速と敏捷強化を同時に行う。
オーガの動きがスローモーションのように見えた。
オーガの動きを予測し、雄介は無駄のない動きをイメージした。
流水のような流れる動きで回避する雄介。
遠目には決められた殺陣を演じているように見えたかもしれない。
だが、間近で見れば、一撃一撃に殺気が込められていることに気付くだろう。
雄介は韋駄天のような高速移動でオーガたちを翻弄していた。
ダークテンペストがオーガメイジに迫った。
ダークには前衛も後衛もほとんど関係が無いといえる。
ダークテンペストが黒炎を放つと、メイジはフロストガードで身を護った。
高速飛行と遠距離攻撃を繰り返すダークテンペスト。
ダークが攻撃を繰り返す限り、メイジが前衛を支援することは出来ないだろう。
もしメイジが状態異常系魔法が使えたら、雄介との相性は最悪である。
最低の運のよさの雄介は、ほぼ100%状態異常になってしまうだろう。
ダークテンペストはメイジを雄介に攻撃させないよう努めるのだった。
雄介はオーガたちの攻撃のリズムを理解し始めていた。
オーガの半数以上は力任せの振り回しであり、読みやすい。
ハイオーガと一部のオーガはそれなりに洗練された攻撃をするが、リズムが読めれば避けるのは難しくなかった。
雄介は大振りを避け、回避を続けながら疾風覇斬でオーガたちの急所を傷つけていく。
攻撃と回避の動きが一体化していく。
教官のアルタが言っていた『相手の行動をコントロールしろ』の意味を実戦を通して理解していった。
いま雄介がこの戦場をコントロールしていた。
2時間がたった頃、その場に立っていたのは雄介とダークテンペストだけだった。
途中で何十匹かオーガの増援が参戦したが、雄介にとっては獲物が増えただけである。
増援を送っても無駄なことに気付いたのか、途中から住処の洞窟からはぱったりと出てこなくなった。
地の利のある洞窟内で戦うつもりなのだろう。
雄介とダークテンペストは休憩を取った。
雄介に大きなケガは無かったが擦過傷はいくつか出来ていた。
ダークは無傷である。
滝城雄介
LV:22
年齢:22
職業:冒険者LV15・精霊魔法使いLV12・強化魔法使いLV7
HP:875 (B)
MP:824 (B)
筋力:181 (B)
体力:171 (B)
敏捷:220 (A)
技術:161 (B)
魔力:168 (B)
精神:160 (B)
運のよさ:-999 (評価不能)
BP:60
称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王の加護
特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性中耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性
スキル:自動翻訳・疾風覇斬(80%)・天竜落撃(80%)・フレアブレード(50%)・サンダーレイジ(20%)・ブラッドブレイク(50%)・思考加速(50%)・流水(30%)・韋駄天(50%)
魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・プラズマブレイカー(50)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)・ブラックエクスプロージョン(80)・強化魔法(任意)
装備:ゴブリンキングの大剣・竜鱗の胸当て・氷雪虎のマント・聖護の小手
所持勇者ポイント:108
累計勇者ポイント:108
「獲得勇者ポイントは50か。
オーガってどれだけ人を殺してるんだよ。
見たこと無いスキルが有るね。
思考加速(50%)・流水(30%)・韋駄天(50%)って何だろうな?」
「汝が強化魔法で行っていた技がスキルに昇華されたのであろう。
意味は思考の加速、流水のような動き、韋駄天の如き速さであろうな」
「遂に雷撃魔法プラズマブレイカー(50)とサンダーレイジ(20%)を覚えたね。
でも、雷撃魔法って洞窟内で使えるのだろうか。
ちょっと試してみるよ」
雄介はプラズマブレイカーを使った。
両手から真っ直ぐな光線が走った。
恐ろしい速さで、韋駄天を使おうとも回避できそうにない一撃だった。
天からの雷光ではないため、洞窟内でも使えそうだ。
「洞窟内探索の前に心強い味方だな。
さて、BPはどうしようか?」
「洞窟に向かうために何が必要なのか考えてみると良い」
「ふむ、洞窟内では敏捷を上げても効果は低いだろうな。
一気に戦えないから長期戦になる可能性が高いし、体力(スタミナ・持久力)を上げておこう」
雄介は、体力:231 (A)に上げた。
「さてと、洞窟に向かおうか。
洞窟の出入り口を2つを魔法で潰して、1番大きいのから突入しよう」
雄介はマジックサーチを使った。
人の反応が12人から9人に減っていた。
「…3人も殺されたのか。
残った人たちは必ず助けるぞ」
雄介とダークテンペストは洞窟に突入した。
中は暗かったが、視覚能力強化で暗視することが出来た。
数匹のオーガたちが何度か襲い掛かってきたが、倒して進んでいった。
先ほどの数十匹の戦いを経験した1人と1匹にとって数匹のオーガは敵ではなかった。
洞窟内の分かれ道に当たった。
ここからはダークテンペストはそのままでは入れなかった。
黒鷲になって着いて来るより、この分かれ道で待っていてもらって、後ろからの追撃を防いでもらうことにした。
分かれ道は当然人が居る方向を選んだ。
あと数百mだ。
雄介が進むと後ろから戦闘の音が聞こえてきた。
追撃が相当数用意されていたのだ。
雄介がたどり着いた広間には、捕えられていた9人の女性達が見付かった。
だが、そこは罠だった。
オーガヘッド、ハイオーガ7匹、オーガメイジ4匹、オーガ約50匹がそこに居た。
「マジックサーチでここに集まってるのは分かってたんだよ。
ダークテンペストの方にもオーガ数十匹集めて、分断策とはなかなか頭を使うじゃないか」
オーガヘッドは青い姿で身長約3m、大型のハルバードを持っていた。
かなり上等そうな鎧を着込んでいる。
オーガヘッドは聞き辛い声で叫んだ。
「人間フゼイガ、ココマデヤルトハ大シタモノダ。
ダカラコソ、ココデ殺ス!」
「人語を解する魔物は初めてだよ。
相当強いことは空気で分かるさ。
だけどまあ、オーガヘッド、お前の命はここまでだ」
戦いが始まった。
雄介がブラックエクスプロージョンなどの大規模攻撃魔法を連発すれば、監禁されていた女性に巻き添えがでる。
女達に攻撃が行かないよう、細心の注意を払って雄介は戦った。
流水の動きで翻弄しながら、オーガの数を削っていく。
ハイオーガの背後を取り、フレアブレードをぶちかました。
ハイオーガは焼かれながら真っ二つになるのだった。
韋駄天を使い高速移動をしながら、プラズマブレイカーを放った。
オーガメイジを貫通し、オーガ3匹を葬る。
完全に真っ直ぐに攻撃するため、正確な攻撃が可能だった。
韋駄天を使い飛び上がる。
洞窟を立体的な戦闘フィールドと捉え、壁を蹴って移動した。
オーガ2匹の背後に移動し、ブラッドブレイクを振るった。
2匹が一緒に吹き飛ばされる。
他の数匹を巻き添えにして倒れたところにファイアーバーストを撃ち込んだ。
オーガ5匹が爆発するのだった。
オーガヘッドがハルバードを振り回した。
唸りを上げ、死の竜巻のような姿で立っている。
その範囲に入れば、体はバラバラに引き裂かれるだろう。
雄介はプラズマブレイカーを撃った。
オーガヘッドの鎧は魔法防御力が高いのだろう。
ダメージは有ったが、耐え切っていた。
オーガヘッドはハルバードで斬りつけてきた。
流水でそれを避けると、突きを連続して放った。
一旦距離を取る雄介。
ヘッドはハルバードを叩きつける。
大振りの一撃だったため、余裕を持って避けられたが、当たった地面が陥没し岩が砕けていた。
雄介は考えていた。
オーガヘッドの技量は高く、使いづらいハルバードを使いこなしている。
ハルバードの間合いは自分の大剣よりはるか遠く、近づくのは難しい。
そしてヘッドの鎧の魔法防御力は高く、遠距離からの魔法は致命傷にならない。
遠距離から魔法でちまちま削っていたら、余波で洞窟が崩れかねない。
そうなれば、自分は助かるかもしれないが、捕えられていた女達は助からないだろう。
ならば…ハルバードの間合いの内側に入るしかない。
雄介はオーガヘッドの攻撃のリズム、動きの癖を分析していく。
何ができて何が苦手なのか。
どんな時に大振りになるのか。
動きの速さ、足運び、ハルバードの間合い、鎧の隙間の位置…。
近くに女達が居ない位置にオーガヘッドを誘導する。
乾坤一擲の大勝負の準備は整った。
ファイアーバーストを使い、オーガヘッドの体勢を崩す。
ヘッドの左側から近づく雄介。
右からの横薙ぎの一撃が迫る。
ヘッドの横薙ぎを予測していた雄介は、低くしゃがみこんでそれをかわす。
ハルバードが通り過ぎた直後、韋駄天発動。
大砲の弾のような速さで近づく雄介。
身長の高いオーガヘッドの頭部はそのままでは狙えない。
しかし、ヘッドの鎧のため頭部以外は致命傷にならない。
天竜落撃をヘッドの膝関節に放った。
鎧に護られていたが、ヘッドの膝に大きく刃が食い込む。
バランスを崩したヘッドは左側に倒れこんだ。
雄介は顔が下がったヘッドの頭部目がけてブラッドブレイクをぶっ放した。
顔面に大きな傷をつけるが、まだこれだけじゃ死なない。
この至近距離からブラックエクスプロージョンをオーガヘッドの顔に叩き付けた。
雄介を巻き込んで、黒い大爆発が起こったのだった。
オーガヘッドの頭部は吹き飛んでいた。
雄介は暗黒属性絶対耐性のため、無事である。
雄介の勝利だった。
オーガヘッドを倒してからのオーガ達は烏合の衆だった。
ダークテンペストを黒鷲の姿で呼び、広間でまた黒不死鳥の姿に戻した。
女性達の護衛をダークテンペストに任せて、雄介は残党狩りをした。
洞窟のオーガ達を全滅させ、女たちの前に戻ってきた。
女性達はダークテンペストが落ち着けていた。
女性達は10代から30代であり、皆ボロボロの姿をしていた。
軽傷を負っている人は居たが、重傷の人は居なかった。
オーガの不安と恐怖から開放されたため、皆泣いていた。
数日前マシュハドの近くの村に住んでいた所をオーガ達に浚われたのだ。
「助けが遅くなってしまって、すみません。
もう大丈夫です。
とりあえず、マシュハドの冒険者ギルドまで送ります。
服や食事などを用意して、一晩ほど休憩したら村まで送りますので」
「私たち、帰れるんですよね?
有り難うございます」
「「「「「「「「有り難うございます(にゃ)」」」」」」」」
雄介はその後、女性達に揉みくちゃにされてしまった。
次回の投稿は明日0時となります。
サブタイトルは「勇者」です。
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読んで下さって有り難うございます。




