第9話 ゴブリン殲滅戦
○14日目
雄介とダークテンペストはゴブリンの森の上空に居た。
雄介はマジックサーチを使った。
「雄介よ、作戦は汝に任せる。
どう戦うか見せてもらうぞ」
「目標はゴブリンの全滅だ。
逃がせばどこかで犠牲者が出るからな。
ひときわ大きな魔力が森の北部にあるからボスだろう。
俺は北側から攻めて行く。
ボスを倒せばザコは南に逃げるはずだ。
ダークテンペストは森の南に居て逃がさないようにしてくれ。
西や東に逃げるザコはマジックサーチで確認する。
両方にザコが逃げたら、念話で知らせて分担するぞ」
「うむ、分かった。
汝を北側に下ろしたら、余は南に向かうぞ」
雄介はゴブリンの森に降り立った。
10日ほど前と違い、全体を見渡す余裕がある。
見える範囲には20匹ほどのゴブリンが居た。
まず数十本のファイアーアローを射ち放って、10匹ほどを減らした。
ゴブリンアーチャーが矢を、ゴブリンメイジがアイスストームを撃ってくる。
雄介は最小限の動きで避けると、アーチャーとメイジに近づき袈裟切りに切り捨てた。
毒ナイフを持ったノーマルゴブリンが3匹現れた。
今は念のため毒消し草を持っているが、それでも運のよさが-999の雄介には危険である。
慎重にナイフを避けると、遠距離に離れシャドウファングで倒すのだった。
剣を振りかざし、エリートゴブリンがやってくる。
エリートの唐竹割りの一撃を悠々とかわすと、カウンターで疾風覇斬を放って倒した。
まだ残ってたゴブリン達を数発のエアスライサーで全滅させる。
エリートの剣を拾って魔法の布袋に入れると、雄介は先に進むのだった。
ゴブリンランサー5匹が固まって槍を突いてくる。
フレイムを使ってランサーの陣形を乱し、隙を突いて足の靭帯を切っていく。
倒れたランサーは首を切って倒していった。
80匹ほどのゴブリンを倒しながら進むと、大きな魔力を感じた場所が近づいてきた。
ブラインドハイディングを使い、姿を消す雄介。
ボスの様子を観察し、できれば奇襲するためだ。
その場所に行くと、ゴブリンの住処としては比較的立派な丸太小屋があった。
戦闘が有ったことに気が付いているのか、ボスらしき者が小屋の前でなにやら怒鳴っている。
普通のゴブリンより二周りほど大きなゴブリンキングがそこに居た。
立派な大剣を持ち、黒光りする醜悪な体をして、粗末な王冠らしきものを頭にかぶっている。
どうやら雄介には気が付いていないようだ。
雄介はゴブリンキングの背中側に回りこむと、ファイアーバーストをぶっ放した。
攻撃すると同時に、雄介を隠していたブラインドハイディングの効果が切れた。
キングはファイアーバーストを感知すると、近くのエリートを盾にして必死に身を護るのだった。
エリートが吹き飛び、キングは左手に火傷を負ったが致命傷にはほど遠い様子だ。
激怒したキングは大剣を抜き放つと雄介に突撃した。
キングの動きはエリートよりも数段早い。
キングの一撃をぎりぎりで雄介は防ぎ、鍔迫り合いの形になった。
キングは笑みを浮かべると、口から火炎を放った。
鍔迫り合いだったため、火が直撃する雄介。
だが、火炎属性絶対耐性のため、雄介は傷一つなかった。
驚愕するキングに対し、強化魔法で筋力をUPさせ、押して後退させる。
キングのバランスが崩れた。
キングを蹴り飛ばして距離を取ると、疾風覇斬を連続して放った。
3発目の疾風覇斬がキングの右手に直撃し、切り落とした。
無防備状態のキングに天竜落撃で止めを刺したのだった。
ちなみに2発目の疾風覇斬は失敗してただの斬撃になってしまったが、結果オーライだろう。
キングの大剣と王冠を魔法の布袋に入れると、雄介は先に進むのだった。
キングを倒すと、他のゴブリン達は逃げだした。
だが、逃げた先にはダークテンペストが居た。
地上を走るゴブリンと空を飛ぶダークテンペストの速度は比べ物にならない。
雄介がマジックサーチで調べてダークテンペストに指示を出したため、ゴブリンは1匹も逃げられなかった。
逃げ腰の敵は弱い。
雄介はスピードを優先させるため、強化魔法で敏捷をUPさせ次々とゴブリンを倒した。
そして数時間後、雄介は最後のゴブリンを倒したのだった。
「やっと終わったなあ。
これだけ多くの魔物を倒したのは初めてだしLVUP凄そう。
どうなったかな」
滝城雄介
LV:19
年齢:22
職業:冒険者LV12・精霊魔法使いLV10・強化魔法使いLV4
HP:875 (B)
MP:592 (C)
筋力:181 (B)
体力:171 (B)
敏捷:174 (B)
技術:151 (B)
魔力:124 (C)
精神:110 (C)
運のよさ:-999 (評価不能)
BP:140
称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王の加護
特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性弱耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性
スキル:自動翻訳・疾風覇斬(70%)・天竜落撃(70%)・フレアブレード(30%)・ブラッドブレイク(20%)
魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)・ブラックエクスプロージョン(80)・強化魔法(任意)
装備:ゴブリンキングの大剣・旅人の服・黒のマント
所持勇者ポイント:47
累計勇者ポイント:47
「LVは7つ上がったね。
獲得勇者ポイントは42か。
フレアブレード(30%)・ブラッドブレイク(20%)覚えたのか。
でも、成功率30%や20%だと使用に不安があるな」
「新しい魔法を覚えたな。
エアロガード(20)・ブラックエクスプロージョン(80)か。
これらは相当に役立つだろう」
「BPは俊敏と魔力と精神でどうかな?」
「ふむ、回避と新魔法を有効に使うためか。
良かろう」
雄介はステータスを敏捷:220 (A)・魔力:168 (B)・精神:160 (B)に上げた。
その後、すべてのゴブリンの耳を袋に入れてギルドに向かった。
「いらっしゃい、雄介。
アルタさんの訓練、大変やったね。
今日の狩りの獲物は何やったん?」
「ティアナ、今日の獲物は大量だぞ。
アラドの東にゴブリンの森が有るのは知ってるだろ?」
「うん、めちゃめちゃ沢山のゴブリンが居るとこやろ。
そこがどないしたん?」
「あそこのゴブリン、全滅させてきた。
ゴブリンキングは流石になかなかの強さだったぞ。
これが証拠の品だ」
そういって耳の入った袋とゴブリンキングの王冠を置いた。
それを聞いた他の受付の女性や冒険者達が集まってくる。
受付の1人はギルドマスターを呼びに行くのだった。
ティアナは唖然としている。
「…それってめっちゃ凄いやん。
あそこは何百匹も居るからDクラスパーティでも危険やのに」
「続きはわしが直接話を聞かせてもらおう」
恰幅の良い初老の男が現れた。
ギルドマスターである。
眼光鋭く雄介を観察している。
「おぬしは…黒鷲のユースケと呼ばれる新人冒険者じゃな。
おぬしの話はアルタ・テルニから聞いておる。
将来はアルタを超える器だとな。
これは確かにゴブリンキングの王冠じゃ。
耳は…多いのう。
ちょっと数えてくれ」
職員数人に耳の確認を任せた。
「ゴブリンの森のゴブリンを全滅させたそうじゃな。
どうやったのか聞かせてくれんかのう?」
「マジックサーチという魔法でボスの居る場所を探して、ゴブリンキングを倒しました。
あとは逃げ腰になったゴブリンを各個撃破しただけです」
「ゴブリンキングはCクラスの魔物じゃが、1人で倒せたのかね?」
「エリートゴブリンより数段強いことは分かります。
しかし強化魔法を使えば、筋力・敏捷共にこちらが上ですので問題ありませんでした。
(火炎属性絶対耐性が無ければ少々拙かったが、秘密が良いだろうな)」
数え終わった職員が近づく。
「マスター、ノーマルゴブリン143匹・ゴブリンアーチャー64匹・ゴブリンランサー81匹・ゴブリンメイジ72匹・エリートゴブリン25匹・ゴブリンキング1匹です。
合計386匹でした」
「ふ~む、確かにBクラス冒険者であれば、1人でそれくらいできるじゃろうのう。
Cクラスならパーティでないとその数は無理じゃな。
おぬし、Bクラスまでクラスアップを望むかの?」
「俺はまだ経験が足りません。
今Dクラスですので、Cクラスまで上げて下さい。
今回くらいの討伐は今後もするので、クラスアップは急ぎませんしね」
「良かろう。
Cクラスへの昇格を認定する」
周りの冒険者からは「すげ~」「マジか」「あれで新人かよ」といった声が挙がっていた。
冒険者登録してから約2週間でFクラスからCクラスへの昇格は、新記録である。
アラドの町を超え、「黒鷲のユースケ」の名はスラティナ王国全体へと広まろうとしていた。
「有り難うございます」
「おめでとう、雄介。
こんなに早くお父ちゃんと同じCクラスになるとは思わなんだよ。
ゴブリンキングは銀貨20枚なんや。
報奨金、金貨4枚銀貨4枚銅貨90枚(約404万9000円)や」
「おお、流石に大金だな。
防具を買おうと思ってるから、付き合ってくれないか?」
「もう、こんな大勢の前で誘うなんて。
明日やったら休みやからええよ」
「じゃあ、決まりな」
冒険者証明書
名前:滝城雄介
種族:普人族
性別:男
年齢:22歳
クラス:Cクラス
技能:読み書き・計算・火風闇系魔法・剣術・強化魔法
翌日、防具屋に向かう2人が居た。
ギルド近くの防具屋である。
店の主人は、受付嬢のティアナも黒鷲のユースケも知っていた。
Cクラスになったため、割引価格であった。
ダークテンペストはオーガの住処とその周辺一帯を調査に行っている。
「雄介のイメージカラーって黒やと思うんや。
でも、黒一色よりワンポイントで他の色が入ってる方がええよ。
これどうやろか?」
「う~ん、機能的にはこれよりもこっちの方が良さそうだね。
単純な防御力より機能性を重視したいんだ」
「それやったら、これとこっちの組み合わせがええんとちゃう?」
色々な防具を付け替えて試していく。
その後は余った予算で雄介はティアナに軽いプレゼントを贈った。
2人はショッピングを楽しむのだった。
最終的に買った防具は、竜鱗の胸当て・氷雪虎のマント・聖護の小手だ。
竜鱗の胸当ては強度と動き易さを、氷雪虎のマントは水冷属性防御を、聖護の小手は聖光属性防御を重視して選んだ。
氷雪虎のマントは白かったため、黒に染めなおしている。
ティアナが「雄介に白のマントは似合わへん」と強硬に主張したためである。
2人が街中を歩いている途中、突然ダークテンペストから雄介に念話が入った。
ダークテンペストの事情を知らないティアナは怪訝な顔をしたが、雄介は念話を続けた。
雄介の表情が一変し真剣なものになっている。
何か起きたことを察したティアナは、念話が終わるのをじっと待つのだった。
「ティアナ、落ち着いて聴いてほしい」
「う、うん。
うちは大丈夫やから。
雄介こそ落ち着いてな」
「ティアナのお姉さんが見つかった」
次回の投稿は明日0時となります。
サブタイトルは「オーガとの戦い (1)」です。




