第1章 第5話 「残響の果て、光の種子」
午前七時。雨上がりの街が、湿った匂いを残して目覚める。
中条潤は傘を閉じ、ビル群の隙間に差し込む朝日を見上げた。
「昨日のノイズ、まだ残ってるのか?」
耳元のAURAが応える。「都市ノイズ値、依然として高止まり。
ですが……波形に“共鳴”が混じっています」
その言葉と同時に、ポケットの端末が震えた。
画面に映るのは“花弁”のようなノイズ映像。
前夜に出会った凛子からのメッセージ――
《誰かが、あなたを通して繋がろうとしてる》
潤は端末を握りしめ、呟いた。
「誰か、ね……この街全体が、ひとつの心臓みたいだ」
歩道を歩く人々。誰も気づかないが、
空の上では微かな電光が幾筋も交差し、
やがて一つの“花の形”を描いていた。
それは、都市のデータ層に咲く電子の桜――。
AURAが小さく告げる。
「中条潤。あなたの感情波長が街を動かしています」
「俺の……?」
その瞬間、目の前に広がる景色が淡く歪んだ。
音が遠のき、視界が光に包まれる。
浮かび上がる影――誰かのシルエット。
それは、見覚えのある笑顔だった。
「……また、会えるのか」
潤の呟きに、光が微かに頷くように揺れた。
スカイリンクの第一章、幕を下ろす。
都市と人、そして“想いの信号”が交わる場所で、
新たな接続が芽吹こうとしていた。




