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国立魔法学園高等部

なんだか…一生見てられそう…。

惹きつけられる。目が離せない。


その圧倒的な雰囲気を前に、立ち尽くすことしかできない。近づくことはままならないと肌で分かるのだ。


なのに、この人の目を見つめることをやめられない。


「えぇっと…、あなたの名前を伺ってもよろしいですか?」


…あまりにも長い間私が固まっていたから心配してくれたのかな?遠慮気味に私が話す話題を作ってくれました。



私人見知りなんだよ。こんなに高貴そうな人に名乗るの?怖いんだけど。

でもこの厚意は無下にできないな。こちらからも名乗らないと失礼だし。

目を合わせることもできないので、足元の砂利を穴が開くほど見つめながらやっとのことで小さく口を開く。


「私はウィロウです。 あの、私も一つ質問いいっすか。」


「いいですよ!わたくしも質問は大歓迎ですから!」


我ながら蚊の鳴くようなか細い声だったが、ちゃんと聞こえたらしい。先ほどよりもまた一層にこやかに返事をしてくれた。わたくしに興味を持ってくださったのかな、と喜ぶシリルさんの姿はとても親しみやすさがある。


すごくギャップのある方なのかな?さっきの優雅な登場とは大きく印象が変わった。

…疑問は絶えないが、悪い人ではなさそう。


ならば遠慮なく質問させていただこう!!この空間に来て最初で最大の疑問!!


「ここ!どこですか!?」


物音ひとつも聞こえてこない広大で静かな環境。恥を捨てるために勢いに任せて半ば叫ぶように尋ねた自分の声が、想定の3倍は反響して大きく聞こえた。


自分の声を改めて聞いてしまうと、頭が冷静になっているのか、客観的につくづくこう思う。


…我ながら不躾な質問をしてしまったと。




幸い、シリルさんの気分を害するようなことではなかったようだ。

悩む様子も特になく、喜びにあふれた表情を崩さぬまま教えてくれた。


「ここはこの国の国立魔法学園高等部。俗にいう高等学校、つまり高校にあたる学校ですね。ただ、習うのは魔法ですけれど。」


…散々不思議なものを見たから、“魔法”という部分は一旦置いといて。


学校らしき建物は見えないけど。


あ、そういえば、霧の奥に目を凝らせって言ってたなぁ~。 ふと、目を凝らしてみる。


シリルさんが操っていた霧は役目を終えてただふわふわと視界を遮るだけになっていて、なかなか向こうの景色を見せてくれない。





…霧の奥にじーーっと目を凝らしてみて十数秒後、ピントの合っていないカメラのようにぼんやりとだが視界が開ける。その霧のさらに向こうに、石造りのお城のような建物が見え始めた。





◇◆◇


見えた…何このお城…


ザ・中世!!って感じの厳かな雰囲気。


冷たそうな迫力の石の壁。満点の星空を突き刺す鋭い塔たち。

そしてそれを覆う蔦がより童話の世界のような光景を演出している。



「はい、丁寧な情景描写ありがとうございます!」


美しい景色の雄大さを象徴する様にシリルさんが大きく手を広げてそう微笑む。


あれ、声に出てたかな?

情景描写、という言葉で慌てて我にかえった。


「“童話の世界”とは見る目がおありですね。ここはまさに童話の時代に建てられたお城なんですよ~?」


かつてお城として使われていた建物を学校に改築した、ということだろうか。

そりゃまぁ、厳かな美しさを年月とともに纏っていくわけだ。


「髪の長いお姫様が囚われた塔に、お菓子の家、そんなよくある他愛もないおとぎの世界の時代。」


見上げると、シリルさんの穏やかな声が降ってくる。その柔らかさに反して、遠くに見える石造りの壁の圧がすごい。首が痛いほど見上げなきゃテッペンが見えない。霧の向こう側にあるのに。


でも見てて感動…観光地みたい…


こんな綺麗なお城が、学校なんだ。

心底羨ましい…さすが物語の世界ネバーランド。魔法を学べるだけじゃなくてこんなに素敵なお城に毎日通えるの?


それに…

シリルさんの浮世離れしたビジュアルとあいまって、目の前が絵画みたい。お城を背景に佇む高貴な身分の人って感じ。このお城の城主にすら見える。


いくら手を伸ばしても、届かない気がする。

月には手が届かないみたいに。シリルさんの光はこちらまで届いているのに。




「あ、気をつけて下さいね。門番の魔物の歌を聞くと死にますよ。」




またもや現実に引き戻された。


いや、現実味はとことんないんだけども。

…感動っていうの訂正で。シリルさん、笑顔で「あなたきっと人間のお嬢さんですもの~」じゃないんよ。


やっぱここ謎だし怖い。魔法っていうより黒魔術の世界なんじゃないの?

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