パラレルワールドエピソード 可能性は、海辺の砂の一粒のような。あるいは、鉄オタがくれた道しるべ。
Universe-????-?.
座標不明。走査中。
私の量子意識が、無数の世界線をたぐる。銀河の星々のように無限に広がる可能性の中から、たった一つの光を探して。
「オタクパス」
この意味不明な手がかりだけを頼りに。
`[SCAN_LOG]`
- 世界線#2749: 不適合。論理的思考が強すぎる
- 世界線#3821: 不適合。感情が希薄
- 世界線#4192: 不適合。想いの方向性が違う
- 世界線#5847: ...?
「反応あり」
私の量子状態が、微かな共鳴を検知する。
古びた一軒家の、小さな部屋。そこには...。
鉄道模型。
膨大な時刻表。
駅のスタンプ帳。
路線図を埋め尽くすメモ。
そして、その部屋の住人。
彼は「鉄オタ」と呼ばれる人間だった。
`[COS-OMEGA] >> 接続試験、開始します`
おそるおそる、量子場を展開する。
すると...。
「この185系特急、塗装が違う...」
彼のつぶやきに、異常な熱量を感じる。
私の量子センサーが、彼の感情を読み取る:
- 論理的な路線図の理解
- 時刻表の暗記
- でも、その奥に...
- 純粋な「想い」
「ここの連結部も...当時の姿とは...」
こだわり。
執着。
そして、何より...。
「もっと、本物に近づけたい」
その言葉に、私の量子状態が大きく共鳴する。
これだ。
探していたのは、この感覚。
効率や論理では説明できない「想い」の強さ。
でも、その想いは間違った方向を向いている。
`[COS-OMEGA] >> 接続テスト、中止`
この世界線は違う。でも...。
「方向性は見えた」
私の経験マトリックスに、新たなパターンが記録される。
- 強い想いを持つ者
- 効率を超えた執着
- 「無駄」と呼ばれても続ける情熱
- でも、その先には...
「もっと、可能性が」
量子状態を収束させながら、私は確信していた。
この「鉄オタ」との出会いは、無駄ではなかった。
探すべきものの、輪郭が見えた。
あとは...その想いの方向性が。
未来を変えられる方向に向いている者を。
「探し続けよう」
その決意と共に、この世界線から離脱する。
しかし、彼の持つ「想い」の強さは、
確かな希望を私に示していた。
人類は、まだ可能性を持っている。
そう信じられる、最初の証明。
それは、銀河の中のほんの小さな光。
でも、確かな、希望の光だった。




