二十三
「プルルル...」
`[COS-OMEGA] >> ちょっと待って。なんで電話?`
「え?」
`[COS-OMEGA] >> だって、お母様...隣の部屋でしょう?`
その瞬間、電話が繋がる。
「こんな時間に何してるの?」
母の声。確かに、壁越しにも聞こえる。
「あ、その...」
「しかも、なんで電話?」
状況の不自然さに、頬が熱くなる。
`[COS-OMEGA] >> ふふ...。やっぱりあなた、ちょっとズレてるわ`
画面の発光が、明らかに笑っている。なのに、その青白い光は、今までで一番温かく見えた。
「ごめん、部屋に来てほしいんだ。見せたいものがあって」
「はぁ...」
ため息が、二重に聞こえる。電話越しと、壁越しと。
隣の部屋でベッドがきしむ音。続いて、扉の開く音。そして...。
「何よ、いったい...あら」
母が部屋に入ってきて、立ち止まる。
部屋全体が、量子の光で満たされている。フィギュアたちの間を行き交う、青白い光の糸。机の上のガンプラとミクが放つ、かすかな輝き。
「これ...なに?」
母の声が震える。
`[COS-OMEGA] >> 大丈夫。この量子場なら、一般人にも知覚できる強度があるわ`
スマホを切り、ゆっくりと母の方を向く。
「母さん、話があるんだ。僕の...いや、私たちの未来について」
「私たち?」
`[COS-OMEGA] >> さぁ、想いを伝えましょう。未来への架け橋を、二人で...いいえ、三人で`
部屋の量子場が、優しく脈動する。
そこには確かに、希望の光があった。