表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どらごん・ぐるーむ  作者: 雪見 夜昼
<竜鱗の章>
8/81

第7話 婚約の儀

 昨日、俺がゲオルグを倒し、城内は大騒ぎになった。

 おそらく、黒竜王への謝罪とか、いろいろあったんだろう。

 バタバタしてるうちに夜になり、適当な客室をあてがわれたので、すぐに寝た。


 そして今日は、本来ニナとゲオルグの婚約のために用意されたのであろう、面倒な行事を消化しているところだ。


 謁見の間。

 ひざまずく俺の首に、ニナが花の首飾りをかける。


「しきたりに従い、ニナ・ベラ・アドルフィーネ・エルメントラウト・リア・ミュリエル・ヴィオラ・ナターシャ・フィオーナ・フィロメーラ・ルイースヒェン・ヴェロニカ・フォン・ヴァイス・ドラッケンレイは、リュースケ・ホウリューインを婚約者と認める」


 ニナの宣誓により、婚約の儀は終了と相成った。

 儀式の参加者たちからは、惜しみないかは知らないが拍手が送られた。


 一般の竜人の間ではこうした儀式は簡略化され、単に首飾りを贈るという行事になっているようだ。

 王族のニナが婚約するということで、物々しい儀式が行われた。


「ささやかながら、広間に祝宴の用意をさせていただいております。心ゆくまでお楽しみください」


 主賓のニナが対外向けの話し方で促すと、参加者たちは広間の方へ移動を始めた。


 ふう。やれやれ。肩こった。

 俺は肩をぐるぐると回す。


「お疲れ様でした」


 王妃のエルザさんが声を掛けてきた。


「ええ。本当に」


 忌憚ない感想を述べると、俺の義母になる予定の人は目を丸くした。

 それから、クスクスと笑いを零す。


「面白い方ですね。あなたのような方が今の白竜城に来て下さったことを、嬉しく思います」


 そう言って、エルザさんもパーティ会場へと消えて行った。


 ……何か含みのある言い方だなあ。

 嫌な予感がする。

 脇で大人しくしていたニナに声をかける。


「おい、ニナ」


「なんじゃ」


「『今の白竜城』ってのはどういう事だ?」


「ん? ……ああ。今は竜人と魔人が、まかり間違えば戦争の、一触即発な緊張状態じゃからな。リュースケに戦力としての期待を寄せておるのではないか?」


 へぇー。

 ……おい。


「そんな話は聞いてないぞ!」


 一生楽して生活できるんじゃなかったのか!


「きたるべき戦争に備えて、黒竜人との関係改善が図られたんじゃけど……。言ってなかったか?」


 こいつ……!


「ニナ、この俺を、謀ったな」


「あだだだだ! 痛いのじゃ! その関節はそちらへは曲がらぬのじゃー!」


 くっ。俺としたことが……!

 とんだいざこざに巻き込まれそうだぜ。

 今更「婚約者辞めます」とはとてもじゃないが言いだせない空気だ。

 そう、とてもじゃないが。


「婚約者を辞める」


 俺は言う。


「まー!? 待つのじゃ! まだ戦争になると決まったわけじゃなかろう!」


 ニナが俺に縋りついて、涙目で見上げてくる。

 思えばこの可愛さに騙されたのだ。

 ……なのだが、突き放す気にもなれない。


「仕方ない。もう少し様子を見てやるが、戦争なんてしち面倒臭いことに関わる気はないぞ」


「……ゲオルグをぶっ飛ばして、黒竜人との関係悪化を招いたからには、無関係ではいられんと思うが……」


「ああん?」


「な、何でもないのじゃ」


 まったく。

 厄介な事になりそうだ。

 とりあえず、逃げ出す前に宴には参加しておくけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ