表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どらごん・ぐるーむ  作者: 雪見 夜昼
<竜鱗の章>
7/81

第6話 異世界人の力

「ガァァア!」


「ギャォォン!」


 襲い来る黒竜に、横から割って入った白竜が掴みかかった。

 どこから湧いた? あ、審判の人か。

 でもゲオルグには勝てないだろうな。

 黒竜のが強いらしいし。


「ニナ、下がっとけ」


 俺は抱えていたニナを下ろす。


「し、しかし、わらわも協力したほうがよくないか? 竜型は人型よりもかなり強いぞ?」


「そんな腰が引けてるヤツに言われてもなあ」


「そ、そんなことはないわ!」


「はいはい。わかったから下がってろって。試してみたいことがあるんだよ」


「試す?」


「まあいいからいいから」


 正直、ニナもゲオルグも、最初の印象程には苦戦しなかった。

 元の世界では、小学生の時以来全力を出した事がないから、今一俺の全力がどれくらいかわかんないんだよな。

 攻撃する時に手加減する癖がついてるし。

 竜化したゲオルグは見るからに頑丈そうだし、かなり力を込めても死にはしないだろう。

 良い機会だ。異世界補正(魂の伴侶)込みでどれだけやれるのか、試してやる。


 審判の人は粘っていたが、ゲオルグに傷もつけられず、防戦一方だ。

 白い鱗の隙間から、血が滴っている。


「審判の人、もういいから、下がってて」


 俺はニナが控えスペース付近まで戻ったのを確認してから、審判の人にも退避を促す。


『しかし……』


 うおっ。なんか頭の中に声が響いた。

 竜型だとこんな風に意志が伝わるのか。


「別に下がらなくてもいいけど。巻き添え喰っても知らないぞ」


 そう言って、俺はゲオルグに向かって走り出す。


 両脚に力を込める。


 蹴った地面がことごとく抉れ、身体は底なしに加速する。

 ……やっぱ、いくらか加減しないとやばいかなあ。

 ゲオルグなんぞどうなってもいいが、王子だから殺すといろいろまずいかもしれないし。


 ゲオルグまで4メートルくらいの地点で、強く大地を蹴って跳び上がる。


「はっはー!」


 加速の勢いと全身の体重を乗せて、浮かせた体ごと両足裏を相手に叩きつける蹴り技。

 まあつまり、ドロップキックだ。


「グォッ!?」


 ゲオルグの苦鳴。


 審判の白竜人と組み合っているため、立ち上がり気味の黒竜。

 その腹の部分、若干鱗が薄くなっているそこに、俺の両足がめり込む。


 黒竜の体がくの字に曲がり、その巨体が浮き上がる。

 俺は衝突によるエネルギーを膝のクッションで受けとめると、ゲオルグを蹴りつけるようにして、反動で体を留める。


 黒竜が吹っ飛び、その身体で決闘場の地面を10メートルほど抉り取った。


「っとと」


 俺は空中で回転し、着地。

 若干殺しきれなかった勢いで、数歩よろけた。


 成程。少なくとも黒竜人の上の下くらいは余裕で倒せる、と。

 しかし、スニーカーがボロボロだな。これ高かったのに……。


 ――ワアアアアア!!


 黒竜が怖くて、あるいは黒竜人の第2王子に刃向うのが怖くて傍観していた観衆が、歓声を上げた。

 現金な奴らめ。

 この場合俺か審判の人が倒すのが、一番丸く収まったのは間違いないけどな。


 倒れているゲオルグを見ると、人型に戻っていた。

 ちゃんと服は着ている。

 どういう仕組みなんだ?

 おかしいだろ! 竜型の時は真っ裸(まっぱ)だったろうが!


 後ろを向けば、走って来るニナが見えた。


 ふう。とにもかくにも。

 これで人生勝ちぐ……じゃなくて、ニナは望まぬ結婚をしなくて済むな、うん。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ