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卯が辰を迎えに行く

作者: 一色 良薬

「辰己さん。お務めご苦労様です」

 嫌味混じりの挨拶と嘘くさい笑み。感動の再会、なんて酔いしれることのない忌々しい女が迎えにきた。

「迎えに上がりました。さ、どうぞ」

 黒塗りの馬鹿デカイ車に乗せられた俺は、宇佐美と後部座席で仲良く並ぶ。"迎え"なんて聞こえのいい言葉を吐いたが、実際は拉致未遂となんら変わらない。

 俺が乗車拒否を示す素振りを見せた途端、大柄な運転手の男を使って俺を後部座席へと投げ込ませた。

 隣に座る女は優雅に足を組み、気味の悪い薄ら笑いを浮かべている。

 目の前が一瞬赤く染まったが、仮釈放の身であるのと若乃の「大丈夫ですか?」と棒読みすぎる心配の台詞に、怒りが呆れへと変わっていってしまった。

歳を取ると無駄に腹をたてたりしなくなると聞いていたが、俺は昔と変わらず気は短いし、何よりこいつ絡みは腹をたてずにはいられない。

 隣で優雅に脚を組み、気味の悪い薄ら笑いを浮かべている女。

 味気のないコンクリートの中で十という年月を溶かしたが、宇佐美の見た目は変わらないままだ。下手すれば未成年に見えもなくない、老化の速度に不気味さを覚えるレベルだ。

 誰もが気を抜く"愛嬌"たっぷりの見た目に反し、残酷冷酷な人格で相手の首を跳ねる。その数に比例するようにぴょんぴょんと出世街道を駆け上がる姿はまさにウサギだ。

「おい、寅吉はどうした」

「あの方は別のお仕事を。不本意ながら私に出迎えを任せると仰っていました」

 宇佐美は人に頼む時はそれ相応の態度があるだろう。と指摘し、嫌々そうに帝は頭を下げたそうだ。

 不覚にもその場面を想像してしまい、堪えきれずに笑ってしまった。

「お前に頭下げて頼むなんざ死んだ方がマシだな」

「相変わらず冗談が御上手で何より」

 糸目がうっすらと開き、紅い瞳が俺を見つめる。返り血で染まったような紅さ。

 ──相変わらず気色悪ぃ。

「これから仲良く組を発展させましょうね、辰己さん」

「はっ、それこそどんな冗談だよ」

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