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お会計と、こちらの世界の能力について

「分かった、じゃあ荷物の番を任せたよ」


「かしこまりました」


 おそらくは料金の話だろうと思い、ウーに変わり今度は僕が店の奥に行く。短い廊下の一角に空いている扉があるので、恐る恐る中を覗くと、そこに秋はいた。


「僕にお話があると」


「ええ、正直ウーさんたちの前では話しづらいことだったので」


「というと」


「私たちは・・・まあこれは言いたくないのですが、外界人じゃないですか」


「そうだね」


「簡潔に聞きます。あなたの職業と能力は何ですか」


「職業は奴隷商人だけど? 能力って何」


 一応異世界転生ものでは神様からチート能力をもらうというのはお決まりではあるが、僕がもらったのはあくまでフィジカルギフトだけで。それ以外はダラスから聞いた話だと誰でも持っているようなものしか持っていない。


「えっ、あなた王国での教育を受けてないんですか?」


「うん、そもそも僕草原に落とされたし。確か普通は王国の中で召喚されるんだっけ」


「ええ、そうですよ。まさかそんなことがあるんですね。私が見てきた限りではみんな王国の城の中で召喚されていたので。てっきり全員がそうなのだと思ってました。まあいいでしょう。一旦本題に戻します」


 そう言うと彼女は自分の後ろから大きな皮を一枚持って来た。それが一体何の皮なのかは分からなかった。彼女はその上に手をかざすと、それが途端に宙に浮いた。


「私の職業は裁縫士、そしてその能力はあらゆる布や皮、糸を自在に操る能力です」


 そう言って少し手を動かすと、宙を舞った皮に対してあちこちから糸や皮が飛んできて、それらがどんどん合わさっていきそして一つのチェストプレートになった。


「どうぞ、こちらが依頼された品物です」


「あ、ありがとうございます」


 もって見た感じ、金属を使っているような重さはないが試しに軽くたたいてみるとコンコンと硬い音が帰ってくる。


「それで奴隷商人さん、あなたの能力は」


「えっ」


「私が見せたのだから。あなたも見せるのが筋でしょ」


「そうは言われても。分からないんだ。一応身体能力はあっちにいた時よりも上がってるけど、今のところ本当にそれだけなんだ」


「なるほど・・・」


 きっと今の僕は秋から見れば秘密主義者に見えているのだろう。でも分からないものは分からないというしかない。


「まあ、仕方ないでしょ。我々外界人は召喚されてしばらくすると、能力開発訓練、要するに自分がどのような能力を持っているのか、それを知り、伸ばすための訓練ですね。まあ私は戦闘向きの能力じゃないので、割と楽でしたが戦闘向きの人はきつそうでしたよ」


「なるほど、でどうして秋さんはここに」


「逃げ出したのよ。私はただ女の子がかわいくなれる服を作りたい。それだけを願って来たのに、私が作る服が戦争に使われてるって知った時、ショックだったわ。だから逃げたのあそこから。幸いここなら追っても手を出しにくいでしょ。それにここは職人の街でもあるから私にぴったりだったの」


「なるほどね」


 いつしか完成した鎧を見ることを忘れ、ただ彼女の話に聞き入っていた。


「まあ私たちは日本人だから大体の人は戦争なんて嫌がるに決まってるけど、ある程度戦闘訓練を積むと自ら進んで戦場に赴くようになったわ。一体どこでそんな思考の変化があったのかは知らないけど、ある日から突然目の色変えて戦争に参加するようになっていったわ。それこそまるでお祭りにでも行くみたいに。私がそれがただ怖かった。だってそうでしょ、あっちではただのコスプレイヤーだったのに、いきなり戦争に参加しろなんて、はいそうですか、って飲み込めるわけないでしょ」


「まあ、その通りだね」


「だから逃げてきたのよ。最初は追手がかかったけど、今はどうやら諦めてくれたみたいね」


「それは・・・よかったのかな」


「そうね、こっちだと本当にやりたいことでできるし。それでお金も稼げてるからいうことなしね。あっちだといろいろあってコスプレもあまりできなかったし」


「いつか見てみたいな、コスプレしてる秋さん」


「うちの商品を全部買ってくれたら考えてもいいわよ」


「ちょっとそれは厳しいかな」


「ならこの話はなしね」


 秋は話を終えると、引き出しを開け一枚の紙を出すとそこに数字をかきこみ僕の前に差し出した。どうやら見積書か、請求書の類だろう。僕はそこに書かれた額を支払う

「毎度あり、それじゃあこれはあなたの物ね」


 僕は商品を抱えて出口へと向かう。それに追随し秋もついてきた。


「あなたも気を付けてね。こっちに来てすぐってことだからもしかすると王国の追ってが来てるかもしれないから」


「ありがとう。また来るよ」


「ええ、あなたたちはコーディネートのしがいがあるからいつでも歓迎するわ」


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