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ファッションショー

 それからしばらくダラスと何か話すわけでもなく、ただウーの着替えを待っているとそれまで静かだった試着室が急に騒がしくなった。


「嫌です。やっぱりやめます」


「ここまで来てなにビビってるんですか、十分綺麗ですから。せっかくだしご主人にも見てもらいましょうよ」


「それが恥ずかしいと言っているんです」


 一応試着室にはウーと秋の二人が入っていて。残された僕らは完全に外野になっていた。そしてその部屋から秋が出てきた。


「さあ、お待たせしました」


 そして試着室のカーテンを力いっぱい引っ張りめくり上げる。するとそこにはこれまでの僕らが知らなかったウーの姿があった。


「あまり、見ないでください。恥ずかしいです」


 しっかりとした厚みのブーツをはき、さらに青いジーンズが彼女のスリムな足を少しだけ締め付け、そのスタイルの良さを際立たせる。そして緑色のタートルネックのニットに黒色の上着を肩にかけ、大人っぽさとかっこよさの両方を強調している。


 はっきり言ってとてもきれいだしかっこいい。


「変…でしょうか?」


「そんなことないよ。むしろきれいだよウー」


「そうですか!? ありがとうございます」


「本当はもっとしっかりメイクとかしたかったですが、でも服装一つ変えるだけでも、女の子は何倍も輝きます。分かりましたかご主人」


「はい、なんかすいません」


 なぜか飛び火をくらった僕は無意識に謝ってしまった。でも果たして僕は悪いことを舌のだろうか


「と、言うわけで次に行きますよ~次」


「次って、まだあるのですか」


「当たり前じゃないですか、こんな美人な獣人さんに合ったのは久しぶりだから。うんとおしゃれさせてあげたいってあたしの細胞全部が言ってるの。だから今日は朝まで帰れないつもりでいて」


「それは困ります。宿には私たちの帰りを待つ子供たちがいるのに」


「子供!? それってお二人の子供ですか!?」


「違います。ただ親元へ返すために預かっているだけです」


「なんだびっくりした。正直ウーさんほどの美人さんがどうして、あんな平凡な男を旦那にしたのか、理解に苦しむところでした」


「平凡で悪かったな」


「いえ、ご主人様はけっして平凡ではありません」


「はいはい、いい加減その全肯定する癖直せ~」


「まっ、まあいいでしょう。気を取り直してファッションショーの続きです」


 そう言ってまたしても秋は強引に試着室にウーを連れ込みまたしても着替え始めさせた。


次に出てきた時彼女はそれまでまとっていたかっこいい、頼りになるという印象とはかけ離れた新たな姿になっていた。麦わら帽子を片手で押さえながら、膝まで伸びた純白のワンピースをなびかせ慣れないサンダルに戸惑いながら一歩ずつ試着室を出た。


「これは流石に変ではありませんか? 特にこの靴など、石畳を歩くには適してないかと」


「そんなことはどうでもいいんですよ。いつかきっと役に立ちますから」


「いつかでは、遅いのですが・・・といいますかご主人様何かおっしゃっていただかないと、ずっと見つめられては流石に恥ずかしいです」


「…えっとごめんね、でもとってもきれいだったから」


「お前それしか言わねぇよな」


「悪かったな、でもそれしか言葉がでないんだよ」


 そうだ今の彼女の前では綺麗という言葉以外がすべて蛇足に思えるほど、目の前のウーは美しかった。そしてそんなことを考えていると自然と顔が熱くなっていく


「お前、惚れたな」


「ま、そんなことないよ」


「あ~今の発言はよくないですよ、ご主人」


「うるさいな、ウーは大事な仲間なの。だから惚れた惚れてないじゃないの」


「ちぇ、詰まんねぇ奴」


「悪かったね」


「あのーこの服どうしましょうか」


「とりあえず買いで」


「毎度あり!!」


 財布の中を確認した結果ある程度余裕があるので、一着くらいならいいやと思い購入することにした。まあいつかまた着ることがあるだろう。


「さて、今度はパジャマなんてどうですか?」


「おうそれはいいな」


 僕らは基本朝に着た服を次の日の朝まで着ていることが多い、その理由は僕らは寝巻を持っていないからだ。最初の頃は資金に余裕があるわけではないので一応店にはあったが購入はしなかったのだ。だが今は違い、必要なものをそろえるだけのお金なら何とか捻出できるほどになっていた。


「それじゃあ、人数分買っておこうか」


「私らの分はいらねぇぞ」


「了解、なら僕たちの分だけでいいね」


「なら、子供たちの分を見繕う必要がありますね。子供用はありますか」


「はい、こちらに、ついでチェストプレートを作るにあたって必要な採寸を行いますね」


「お願いします」


 そう言って事前に買った服の袋を渡されると、ウーは秋と店の奥へと消えていった。そしてしばらくして二人の話し声が聞こえ出した。だがそれも長くは続かずすぐに戻ってきた。

「あれ、もう終わったの?」


「はい、私の用事は終わったのですが。今度はご主人様に話があるそうです」


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