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ウーの心と背後からの声

 だが振り返ってみてもそこにいたのはただひたすらに刺突を繰り返すウーだけだった。そうなると視線の正体はウーということになるが、僕は何か彼女の怒りに触れることを舌のだろうか、考えてみても思い当たる節がない。


「おい、どうしたんだ」


「いいや、なんでもない。それでこっちの道具はどうかな?」


「お前が持ってても問題ないが、これはどっちかと言うと医者向けだろ。まあ必要にはなるから買っとけ」


「分かった」


 そうこうしているうちに両手に持ちきれないほどの品数になっていた。


「僕一回会計してくるよ」


「おう、行ってこい」


 僕は買う予定の商品をレジに並べると、店主が一品づつ値札をもとに計算を始めた。




「よう、どうしたそんな怖い顔をして」


 私が槍を見ていたところ、先ほどまでご主人様と一緒に居たはずのダラスが話しかけてきた。


「別に。私は普段からこのような顔ですが」


「嘘つけ、すげぇ殺気飛んでたぞ」


「・・・」


 うまくごまかせると思っていたが、実際先ほどほんの少しだけ怒りを覚えてのは事実だ。だがどうしてそのような感情を抱いてしまったのは分からないが。ただご主人様とダラスが一緒に買い物をしているだけなのに、妙に馴れ馴れしかった。それまでずっと不遜な態度を取っていたにも関わらず、仲間になってからはますます不遜になっている。それが許せなかった。でも本当にそれだけの理由であそこまで腹が立つものなのか、その一点が私の中では納得がいかなかった。


 ダラスに対してはいろいろと言いたいことはあるが、彼女の戦闘力、並びに言い方に棘はあるが、他人のことを正しく把握する観察眼は私もすごいと思う。だからそう言う点では私は彼女のことは嫌いではない。ただ私の中で今一瞬だけ、どうしても彼女を許せなかった。


「なんでもありません」


 私はダラスから顔を反らした。それでも耳から聞こえてくる笑い声でダラスが下品な笑みを浮かべていることは容易に想像できた。


「こっちの買い物終ったけど、ウーはどう」


 ご主人様が呼んでいる。だから行かねばならない。


「ちょうど今決まりました」


 私は槍を持ってお会計に臨んだ。


 そのあとは特に何か起こるわけでもなく、僕たちは店を後にした。


「武具屋だと武器とか防具しか買えないと思ってたけど、案外色々買えたね」


「まあ、本当は雑貨屋とかの方がいろいろ揃うんだが、まあ今回は行く必要ねぇだろ」


「そうだね。あとはウーの防具と薬だね」


「まあ、どっちもこの辺にあるだろ」


「適当だな~」


「人間の街のことなんかあたしが知るかよ」


買い物袋を抱えながら次の行き先の話を進める。このお店でいろいろ揃ったおかげでなんかと今日中に買い物を終わらせることが出来そうだ。しかし先ほどの店から出た時からずっとウーの顔が浮かない。


「大丈夫? どこか調子が悪いの」


「いえ、そんなことはありません」


「何だよ無理すんなって。かいもんならあたしとこいつで済ませとくからよ」


「それは、いけません」


 ダラスがした何がない提案にウーは過剰に反応してみせた。僕は戸惑い思わず半歩下がる。ウーも自分のしたことを遅れて理解したようで、急にしおらしくなってしまった。


「…申し訳ありません。大きな声を出してしまって」


「別に僕も怒ってるわけじゃないから、謝らなくていいよ。すこしびっくりしただけだし」


「…はい」


 僕らの中に重い空気が流れる。さらにたちが悪いことに原因が分からない以上解決する術が見つからない。でもこのままの空気で買い物を続けるのは正直辛い。なので今日は一旦ここまでにして帰ろうかそう決断仕掛けた時


「あの~よろしいでしょうか」


 ウーの背後から今まで全く聞いたことのない声がした。そしてその声の主は恐る恐る彼女の背後から出てきた。


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