ダンジョンに行きたい二人
「お、おうそうカッカするなって。まあ一通り方針が固まったんで、最後に確認するぞ」
「まずは必要なブツの調達、こいつの訓練、そしてダンジョンに関しての情報収集も忘れるなよ」
なんだかんだあったが最終的にダラスがうまく場をまとめてくれた。と思っていたがまだ言いたいことがある人物が二人いた。
「ねえ、チマも話していい? 」
「ポタも、お話したい」
「どうしたの、二人とも」
「あのね、チマたちもダンジョンに行きたいの」
「ポタも強くなりたい」
「ダメよ二人とも、ダンジョンはきっとこれまで以上に危険な場所なの、そんなところに連「れて行けない」
「でも、チマたちも役に立ちたい」
「聞いて二人とも、私達は探検に行くわけじゃないのよ。きっと戦闘になる。そうなった時、私達はあなたたちを守り切れる保証がないのよ」
「私たちも戦えるようになりたい」
「あなたたちはダンジョンがどれだけ危険なのか分かってないでしょ」
「それは、お前も同じだろ」
「ダラス、その口を閉じなさい」
「おう、悪い」
ダラスが茶化したことで、ウーが完全にキレてしまった。まあ彼女の気持ちも分かる。僕ですらダンジョンの危険性を理解できていなかったのに、さらに幼い二人がそれを理解しているとはとてもいいがたい。そんな状況だからウーには二人が探検感覚でダンジョンに入ろうとしているのを何としても止めたいのだろう。それこそ自らが悪役になろうとも
「でも、もう守ってもらうばっかりは嫌だ」
「ウーお姉ちゃんも、ご主人様も、チセもフィリアもみんなみんな大切だから」
「だからポタたちも、皆を守れるようになりたい」
ずっと幼い子供だと思っていた二人だったが、僕らが知らない間に僕らの想像よりもはるかに人として成長していた。そのことを僕は初めて実感した。きっとそれはフィリアと悲しみを分かち合ったことで、二人の心に新たな意識が芽生えたことがきっかけとなっているのだろう。しかし、いやだからこそよけいに二人をダンジョンに連れて行けないというウーの気持ちの方に強く共感してしまう。
もうこれ以上僕らは犠牲を出すことを許されていないのだ。だから排除できるリスクは全て排除するし、残ったものは僕達大人が背負わなければいけないのだ。たとえ僕が彼女達と同じくらい非力であったとしても、それを二人に背をわせてはいけないのだ。
「ダメなものはダメよ、二人はフィリアとお留守番。分かったわね」
「でも」
ウーの説得にも必死に食い下がる二人だが、ウーは断固として二人をダンジョンに連れて行かない姿勢を見せた。このまま水掛け論に発展するかと思いきや、それまで口を閉ざしてきたフィリアが三人の間に割って入った。
「十分だよ。一旦ここは諦めよう」
「分かった」
「ムムー、了解」
二人はウーに対しわがままを言ったことを謝った後、すぐさま大人しくなった。その様子を見てウーは自分の言ったことを二人が理解してくれたと思い安堵の息を漏らし、二人の頭を撫でた。しかしながら僕にはどうしてもそれに納得できない部分があった。
ウーの対応に納得がいかないわけではないし、二人が潔く引き下がってくれたことにも正直ほっとしている。だがただ一つフィリアの「一旦」という発言が気になってしまった。それがここに来るまでの出来事と何か関係があるのか、その因果関係も気になる。
「よし、今度こそこれで終わりだな」
「うん」
「おし。そうなったら今から買い出し行くぞ」
「今から!?」
「当たり前だろ、ほら行くぞ」
ダラスは僕とウーを肩を掴むとそのまま納屋の外に引っ張った。




