戦いを求めるように・・・
アドベントまではダラスの案内があるおかげで僕らは無駄な時間をかけずに進むことが出来ている。だがそれでもアドベントまではかなり距離があるため僕らは長い長い馬車生活を余儀なくされていた。
それでも僕らはダラスを信じて日々前進していた。そんなある日のことだった。いつものように夜食を済ませ、眠るまでの間全員が自由に時を過ごしていた。僕も又食器の片づけを終え、あたりを散策していると僕らの焚火から少し離れたあたりで何か擦る音が聞こえてきた。特段危険を感じたわけではないが、ただ興味を惹かれ見に行った。
するとそこではかすかな明かりの中でフィリアが母からもらったナイフで木を削っていた。
「何を作ってるのフィリア」
「別になんでもいいだろ」
「まあ、そうなんだけどさ」
時間が過ぎるにつれ、フィリアはチマポタ以外にとも会話をするようになっていた。だが人間であるチセと僕は例外的にあまり口を利いてはくれない。それでも旅の仲間としては少しでも彼女とかかわりを持ちたいと僕は思っていた。
「ちょっと気になって」
僕の言葉に反応してか、フィリアは一度その手を止めた。
「言えない。言うなって言われてるから」
「それは誰に? 」
「それも内緒」
「そっか」
内緒と言われてさらに気になってきたが、人の秘密を無理に詮索するものではないことはよくよく分かっているので、僕はそれ以上聞かないことにした。
「ご主人様、申し訳ないのですがご助力いただけないでしょうか? 」
「分かった今行くよ」
ウーに呼ばれてしまい。結局僕はフィリアが何をしているのか、その真相を知ることが出来なかった。でもただ泣きじゃくって座り込んでばかりよりかはなんでもいいので何かやることを見つけられたのなら、それは確かな前進だと思う
。
ウーに呼ばれて行ってみると、彼女は馬車の積み荷を数えていた。
「お忙しいところ、お呼びたてしてしまい申し訳ありません。ですが何分人手が足りず」
「うんそれくらいどうってことないよ」
正直正確な数を把握しているわけではなく、ただあともうちょっとでなくなるとかその程度ではあるが、それでも全く知らなくて、なくなってから気が付くよりかはましだと思う。これは前回の街で得た教訓だ。
「あの、差し支えなければ少しよろしいでしょうか」
「どうしたの」
「最近、チマとポタが戦いを望むようになったような気がして」
「まさかそんな、どうして急に」
「分かりません、でも時折私に槍の使い方を教えて欲しいとお願いするようになったんです。まだまだ私が見ていないといけないとはいえ、あの子たちの狩りの実力はまさに大人顔向けです。なのにどうしてあの子たちは強さを求めるのでしょうか」
「・・・」
正直これに関しては僕も分からない。これは単に僕が平和な日本で育って来たから、生きていくうえで戦闘力を必要としないので彼女たちの動機を想像することが出来ない。それでも彼女たちに危ないことをさせるわけには行かないので、厳重注意が必要だ。それにしても二人の件とフィリアが工作にはまりだしたこととは何か関係があるのだろうか、まあおそらくはないだろうが、あの三人の絆は一気に深まった。それゆえどうしても無理矢理にでも結び付けてしまう。
「分からないけど、僕たちがしっかりと見守らなきゃいけないね、二人が間違った方向に行かないように」
「もちろんです。それが私達大人の役割なのですから」
話している間に荷物を数え終わっていた。結局疑問の答えは出ないまま今度は睡眠の支度をする。その間視界の端にチマとポタを入れるが二人はいつも通りあたりを掃除したり布を整えたりしているだけだった。その姿を見て少しだけ安心することが出来た。
「それじゃあもう寝ようか、そのことについてはまた今度ゆっくり話そう」
「分かりました。それではおやすみなさい」
ウーは二人を呼びに行き。そして床に就かせた。僕は適当に火の始末をしながら眠れるタイミングをうかがっていた。頭の中にずっとあるのは仲間たちのこと、そしてダラスから聞いた外界人のことだ。




