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力のために 新たな旅立ち

「それなら、お前に私が稽古をつけてやる」


「えっ、どうしたの急に」


「せっかく力を持ってんのにうまく使えなきゃ意味がないだろ」


 ダラスは酒が付いた手で僕の背を強くたたくと、立ち上がりそのままついてくるように促した。そして僕らは一団から離れ、森の中で唯一木々が生い茂っていない場所に連れてこられた。


「一応聞くが、これはお前がやったんだな」


 ダラスは地面重い金属の塊を投げた。それは昨日僕が拳でへこませた騎士長の鎧の一部だった。


「うん、昨日僕が殴った」


「殴った!? まあいいか。その時お前は何を考えていた」


「あの時はただ、怒ってた。あいつらのせいで悲しむ子供がいる。そしてそのことを彼らは何とも思ってない。自分たちが蒔いた種なのに、その責任を取ろうともしない。そしてそんな世界を変えられない自分に腹が立って仕方がなかった」


「そうか」


 ダラスは多くは語らなかった。それはきっと自分が言いたいことを察しろという彼女の厳しさであり、優しさでもあると思えた。


「だからもっと強くなりたい。いやならなくちゃいけないんだ。世界を変えるにはまずは自分が変わらなきゃいけない」


「そうだ、その意気だ」


 ダラスは鎧を宙に投げると空を飛ぶ力を失い、重力に吸い寄せられて落ちる鎧に水方の拳をぶつけた。そのとたん鎧はダラスの拳を中心に真っ二つに割れた。


「あんな大口をたたいたんだ。まずはこれくらいできるようにならなとな」


「そっか、それは頑張らないと」


 ダラスはにっこりしているが、ああなるまでにいったいどれだけの時間がかかるだろうか、正直もう自信がなくなりそうだ


「まずは、そこの木に打ち込んでみろ。あの時と同じように」


 僕は全身に怒りをため、放った。しかし木の幹に傷一つつけることはできなかった。


「やっぱりか」


 ダラスは落胆しため息をこぼす。だが僕にはそれだけの顔には見えなかった。


「まあ、分かってはいたがな。いかに強力な力を有する外界人って言っても、最初から最強だったわけじゃない。本来なら王国の中で訓練を受けてある程度能力を使いこなせるようになってから初めて戦場に出るが、お前は違う。最初かずっと戦場にいた。だから他の奴に比べてしっかりと訓練してない。だから今はその程度だろう。だがおぼえておけ、いつまでもそこにいていいわけじゃねぇぞ」


「わかってるよ、言われなくてもそれくらい」


 もう痛いくらい思い知った。その言葉を僕はのみこんだ。それはぼくだけが理解していればいい感情だと思ったから。


「さて、これからどうするんだ商人」


「それが・・・何も決まってない」


 ダラスはポカンとした後頭を抱えた


「おいおい頼むぜ、お前一応あっちの一団の頭だろ」


「そう名乗ったことはないけど」


「でもそうなってるだろ。言い訳すんな」


「はい」


「で、今は何が必要なんだ」


 今必要なもの、前まではお金は不足していたが、それは猪を多く狩ったことで解消した。なのでもはやそれは問題ではない。ならば次に必要なものは、何か、この厳しい人間の世界を生きる残るために必要なものは


「力だ」


「だろうな」


 正確には戦力を増やす。元々戦える人数が少ないことが僕らのパーティーの現状の課題だ。そしてうちで戦えるのはウー、だけだ。一応フィリアもそれなりに強いが彼女にはできるだけ闘ってほしくない。チマとポタは論外だし、チセに関してはいまでも十分として医師として僕らを支えてくれている。ならば本当に戦わなければならないのは僕だ。


「戦力を整えたい、それにもし僕らに何かがあった時、チマやポタが身を守るための道具か何かも欲しい」


「なるほどな、よーく分かった。それならいい場所があるぜ。ダンジョン町、アドベントだ」


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