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同盟成立

「まさか、あの外界人だったのですか、ご主人様」


「いや、そもそも外界人って何」


「なんだ、知らねぇのか。なら教えてやるよ。もう何十年と続いている獣人と人間との戦争が続いているのは知ってるな」


「うん、何となく」


「その戦争だが、最初はあたしら獣人が有利にコマを進めていた。しかし人間は古代の魔術である、外界人召喚を会得しやがった。それによって戦況は一気に変わった。人間側に召喚された外界人どもは化け物じみた力を使って私らを蹂躙した。そしてそこから一方的な人間側の勝ち戦が続いたってわけだ。それでも優秀な指揮官がいるところはまだかろうじて闘い続けてるっていう」


 そこまで話すとダラスはどこから持ち出したのか、酒を豪快に飲んだ。どうやらあまりしていて気持ちのいい話ではないことは僕にも分かった。


「話がそれたな、そしてその英雄召喚で異世界からきたやつらは決まって自らのことを東の国の出身というらしい。だからもしかしてと思って鎌をかけてみたが、思った通りだったな」


「それで、僕が外界人と分かった今、ダラス達はどうするつもりなの」


 僕の一言で場にさらなる緊張が走る。余計な一言だとは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。もしかすると、今この場でダラス達と敵対する可能性すらあるからだ。もしそうなった場合、僕は皆を守らないといけない。だからこそ僕は勇気を出して訊いたのだ。


「別に、なんにもしねぇよ。ただもう一つだけ聞かせろ」


「何?」


「お前、ヒカサっていう男を知らねぇか。もし知ってるなら、なんでもいいから教えてくれ」


「いいや、知らない。その人と何か関係があるの」


「ああ、忘れもしないぜ」


 その言葉を機に、ダラスの部下たちは皆歯がゆいといった表情に変わった。


「あたしらは盗賊になる前は獣人軍隊の中の一中隊だった。だがある日、ヒカサの率いる部隊と闘い、そして負けた。皆バカだがいい奴らだった。でも勝負は一瞬だった。ヒカサが重い腰上げた途端一気に崩れた。次々と仲間がやられて行って。私らは逃げることしかできなかった」


 握っていた杯がダラスの拳によって握りつぶされた。あふれた酒が彼女の腕から零れ落ちる。それはまるで彼女の気持ちを代弁する涙のように僕には見えた。


「そして、その時にあたしらの隊長が死んだ。隊長はあたしら荒くれ者に居場所をくれた。そんなすごい奴だったのに、あいつはヒカサの野郎はただ自分の力を見せつけるためだけに、わざとなぶり殺しにしやがった」


 てっきりダラスがトップなのかと思っていたが、それよりも上の人物が、もとい彼女にとって大切な人物がいたが、救うことが出来なかった。そして彼女たちは敗残兵となり、そして盗賊になった。


「だから、あいつを見つけたら必ず私が殺す。そのためにずっと生きてきた。改めて頼む何か、些細な事でも構わない。知ってることがあったら教えてくれ」


 誰かに懇願するダラスなんて初めて見た。それほどまでに彼女の思いは強く、そして必死なのだ。でもそんな彼女に対し僕ができることが何もないのはとても悔しい。


「すまない。今は力になれそうにない」


「そうか」


「でももし、よかったらこのまま僕らと行動を共にしてくれないか。今回みたいに相互利用の形でさ」


「なるほどな、つまりはお前といればあたしは人間の街での情報収集ができる。お前は荒事の時にあたしらに頼れるってわけか」


「そういうこと」


「お前、なんか変わったな」


「そうかもしれないね。皆を守るためにやれることは全部やっておかないと。もうあんなことを繰り返さないためにも」


 僕の視線が一瞬フィリアの方を向く。彼女は気が付いていないが、それはあくまで彼女がまだ顔を上げていられるほど立ち直ってはいないからだ。


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