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新たに固まった決意の槍

 そこから地下への入り口までは、さほど厳重な警備がなされているわけではなかった。おおよそ玄関前起こった騒動の方に人員を割いているのだろう。だがそのおかげでこちらは一切の脱落者を出すことなく、地下への入り口にたどり着いた。


「ここだ。開けるぞ」


 扉の向こうは明かりは一切なくただ足元の闇の中に下へと伸びる階段が続いているだけだった。あたしたちは少数の明かりをともしながら、少しずつ進んでいった。階段はしっかりと広さがあるおかげであたしたちは特に隊形を崩すことなく下ることが出来た。そしてすぐに広いスペースに出た。だが


「お頭待ち伏せだ」


 そこにはすでに重鎧をまとった騎士が十人以上を待ち構えていた。彼らはすでに武器を抜きこちらに向けている。こちらのすでに臨戦態勢を取っているが、この広間は大人数が乱闘を行うには少々手狭に感じた。これではいずれ乱戦になり脱落者が出てしまうかもしれない。ならばここは、あたしが一人で制圧する。恐らく数人討ち漏らすだろうが、それはあいつらが何とかすればいい。そう思いあたしは自らの手斧に手をかけるが、そのあたしの手の上に小さな手が重ねられる。その手の主に私は覚えがなかった、それはつまりあたしの部下の内の誰かではないということだ。ならば一体


「ここはわたしが」


「お前」


 彼女は確かこの列の後方中央後方にいたはずだ。そして私は索敵のためにすこし前列寄りまで移動していた。それなのに皆が硬直したあの一瞬、あいつは一切怯むことなく。前に歩みを進めていた。


 そのままウーは自身の槍に巻いていた布を取ると、その場に投げ捨てた。そしてあたしらの一団の先頭に立つとそのまま敵の前へと歩みを進める。


「あなたたちは下がってください」


「ちょ、お前この数一人で相手するつもりか」


「かかれ」


 そんなウーに向けて敵が一斉に襲い掛かる。しかし彼女は微動だにしなかった。やがてウーは敵四人の剣を同時に受け、姿が見えなくなった。


「ウー!!!」


 列の後方にいたはずの商人もまたいつの間にか先頭にまだ出てきており、じぶんの奴隷の名を叫んでいた。


「ご安心くださいませ、ご主人様」


 敵の輪の中心からかすかにウーの声がする。そして次の瞬間槍を力いっぱい持ち上げそのまま敵を押し返した。そしてそのまま鮮やかなやり捌きで、四人全員を一突きずつで倒す。


「これは、ご主人様の願いをかなえるための道のり、その最初の闘い。そしてフィリアの母親を救い出すための闘い、さらにこれは私の夢を叶えるための闘いでもあります」


 ウーは敵から槍を抜くと血を払った。


「ならば一番槍はこの私ウールフエン・インテレクトスが努めます」



「ダラス、これが私の答えです。私は私の夢とご主人様の夢その両方を叶えるためにあの人に私の忠義を捧げます。文句はありませんね」


「ああ、文句はねえぞ、それに面白れぇじゃん。ならあたしに見せてみろよ。お前の夢の果てをよー」


「言われなくても、そのつもりです」


 ウーは再び槍を構えた。それに乗じてあたしも手斧を構える


「なら残りはあたしとお前で半々な」


「あたし一人でも十分ですが、まあいいでしょう。その方が効率がいいので」


「行きますよ」


「行くぞ」


 あたしたちは駆け出した。


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