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白煙下突入フェーズ

その直後、護衛達は瞬時に爆弾から距離を取った。それは彼らの生存本能が彼らをそうさせたと思えば当然に思える。しかし僕らにとってそれは予想通りの出来事であり、好都合な出来事でもあった。階段の段差を転がって僕らの足元の落ちた爆弾は、導火線の火が爆弾の中に入るや否やあたり一面を覆いつくすほどの白煙を巻き上げた。僕らはあっという間にその白煙にのまれるが、一切動じることはなかった。しかしちょっと量が多すぎるせいか煙たいなと思う。現に僕は何回か咳をした。


「ご主人様、大丈夫ですか」


 煙の中僕の背後から声が聞こえる。


「何とかね、でもちょっと多いかなこれ」


「私もそう言ったのですが、部下たちが聞かなくて。申し訳ありません」


「まあ、良いよ。それよりも早く行こう。この煙もいつまでももつわけじゃあないでしょ」


「はい、それではこちらをつけてください」


 ウーから手渡されたのは目の周りをちょうど隠せる覆面マスクだった。僕はそれをつけるとウーが後ろから僕にマントをかぶせた。振り返ってみるとウーも僕と全く同じ見た目になっていた。


「では、これよりこの煙を抜けます。準備はいいですね」


「うん」


「いつでもいける」


 気が付くとフィリアも同じ装備をまとっていた。これで誰が誰だか分からなくなったはずだ。


「それでは行きますよ」


 僕らはウーの合図で一斉に駆け出した。煙を抜けはっきりとした視界の中で改めてギルド長たちを見ると、相変わらず慌てたままでその場から動けずにいた。その隙に僕らは一気にその場の突破を図る。直後、小さな爆発音が頭上に響く。それはウーの班のメンバーの一人がダラスの班に突入の合図を送るための信号銃の音だった。


「お頭合図です」


「よし、野郎ども準備はいいな」


「しかし、こんな作戦久しぶりですね」


「ああ、ここ最近はずっと盗賊の真似事ばっかりしてたからな。お前らぬかるなよ」


「へい」


「よし、行くぞ」


 あたしの合図に合わせて、先頭のやつが扉をわずかに明ける。そしてすぐに二人が中に入入り、戸の傍にいる敵を排除する。そして安全が確保されると続々と後続が流れ込む。あたしはその中心にたち、各方面に指示を出しながら必要な個所を制圧していく。今回の作戦があたしらだけでやるものなら、もっと手際よく行けるのだが、今回は素人の人間にガキまでいるのでいつも以上に入念に制圧していかなければならない。そのせいで進行速度がかなり遅くなっている。


「お頭、第二隊もう少しでこちらに来ます」


「おう、2,3人誘導のために送れ、人選は任せる」


「へい」


 後続のために一応人を送っておく、商人から聞いた話によると、奴隷たちはおそらくこの建物の地下にいる可能性が高いと言っていたが、確信があるわけではないようだ。なのでフィリアという子供の獣人が来るまではあまり奥には進めない。それに下手に動いて見つかるわけにもいかないので、すこし広めの会議室を確保した後、そこでしばらく足止めを喰らっていた。それでも建物の中はだいぶ不穏な空気が漂い始めているので、作戦の要件事態は満たしている。


「お頭、第二陣到着しました」


「おう、例のやつを呼べ、ルートの確認がしたい」


「了解」


 あたしの指示通り、部下がガキの獣人を呼ぶ。


「おい、お前が昔いたってのはここであってんのか?」


 フィリアはただ一度だけ首を縦に振った。


「ここの地下で間違いない。さっき見た入り口に見覚えがあった」


「なんだその根拠、まあいい地図を広げろ」


 一枚の地図を囲んで全員が集まる。ちなみにこの地図はあたしの仲間が事前に町で盗んできたものだ。


「入り口はおそらくここです。ですがその先はかなり警備が厳しいと思われます」


「でもやるしかねぇんだろ。野郎ども気合入れろ」


 あたしの掛け声で部下たちは全員それぞれの獲物を取り出す。その中で唯一素人軍団だけが緊張した面持ちのままいる。


 しかし、まさかとは思っていたが、本当にあの狼獣人の女、確かウーだっけか がこの作戦に参加するとは思っていなかった。まああいつの心を折ったのはあたしだからあたしが言えたことではないが、それでもあいつには意思による強さがない。ただ元々身体能力が良いだけの獣人だったはずなのに、それでもあいつに付き従ってここまで来ている。それがい一体あいつに命令されたからなのか、それ以外の要因なのか、まあ実際戦闘になれば分かることだし、今は考えなくてもいい。


「よし行くぞ」


 あたしたちはいっせいに部屋を飛び出した。


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