奪還作戦と僕らの居場所
「さて、改めて作戦を伝える。まず僕らを四つの班に分ける。まずはウーとダラスの部下たちそして僕とフィリア。そしてチマ、ポタ、そしてチセ。そして最後はダラスとその部下達の班だ。基本的に今回の襲撃に加担するのは僕とダラスの班だ」
「それでは子供たちはどうするのですか?」
「彼女たちはこの馬車ごと、森の中に隠す。僕らが襲撃を終えて町の外まで出たら森から全速力で飛び出して、そのまま入り口で僕らを拾ってここを脱出する」
「でも、もし敵が刺客を放ってきたらどうしますか?」
「その時はできるだけ僕らが派手に暴れて陽動するつもりだけど、もしうまくいかなかったら、チマ、ポタ、君たちの感覚で敵を見つけそして逃げるんだ。馬の操縦はチセ。君に頼みたい」
「分かりました」
「いいね三人とも、間違っても撃退しようなんて思わないこと、絶対に逃げること」
「「「はい」」」
「よし、それで具体的な手順だけど。まず僕とウーそれにフィリアで受け渡し現場に行く」
「お前、やっぱり」
まだ話の一割もしていないにも関わらず、またしてもフィリアが戦闘態勢に入ってしまった。一応ウーが制してくれたので、何とか話を続けることが出来た。
「それで、受け渡し直前に。ウー達の班の少数が簡単な襲撃を仕掛ける。そしてそのどさくさに紛れて僕らは一度その場を離れる。それと同時にダラス達の班がギルドに襲撃を仕掛ける。そして奥の部屋への突入口を確保する。そして僕とウーの班がそこに合流全員で最深部への突撃を仕掛ける。そしてダラス達が暴れまわっている間に、僕達でフィリアの母親を探しそして全員で脱出する。てな感じだけどどうかな」
かなり早口で説明してしまったせいで、皆ぽかんとしていた。正直これが完全な名案だと思っているわけではない。それにかなりリスクが高い。ここでもし軍隊経験者のウーに文句を言われたら、自分の意見を押し通す自信がない。
だが僕の予想に反して彼女の反応は全く違う物だった。
「何と素晴らしい作戦、もしかしてご主人様はもとはどこかの国の軍師だったのですか」
「いや、違うよ」
「そうなのですか、まったくこのような天才をみすみす野放しにするなど、人間の国も落ちたものですね」
「そこまで言わなくても」
「でも、そうですね。馬車の隠し場所ですが。昨日まで私たちが猪を狩っていたあの森は以下でしょうか、あそこなら地の利は我らにありますし、三人とも木の上にいれば、よほどのことがない限り見つかることはないでしょう。それに運がよければ子分猪たちがよい陽動になるでしょう」
「いいね、そうしよう」
「あのご主人様」
僕らが離している中に恐る恐るポタが手を上げる
「どうしたの」
「無理をしちゃいけないって言うのは分かっているけどね。それでもポタたちのフィリアの役に立ちたい。だってフィリアは大事な仲間だから。だからねただ隠れているだけはいやだ」
「二人とも、わがままを言っては・・・」
二人の気持ちは痛いほどわかる。それでも彼女たちを戦わせるわけにはいかない。こんな幼い子供を戦場に送るなんてことをしたら、きっと僕のこの世界の誰よりも最低な男になってしまう。それでも今は彼女たちの力が必要なんだ。その二つに板挟みにされながら僕はこの結論を出した。だからわがままを言うな、なんていうつもりはないが、今は僕の意見を尊重して欲しかった。
「いいかい、二人の仕事は隠れていることじゃないんだ。もちろんそれが主だけど、もしフィリアのお母さんを救い出せたとして、その時に行く場所がなければ、それまでの努力がすべてダメになってしまう。ここまでわかるね?」
「「うん」」
「だから君たちの仕事はこの馬車を守ること。ここは二人にとっても、フィリアにとってもそして僕にとっても、大切な場所だからね」




