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長との取引~確信と契約編~

「あなたが、猪の子分を討伐し始めたあたりから、それに奴による被害報告がぱったりと途絶えたのですが、何かご存知ありませんか」


「さあ、私は何も」


「なるほど、あなた様にこのようなことを聞くのはおかしいかもしれませんか、やつが強盗をやめたのはなぜだと思いますか」


「私のことを探偵か何かだとお間違えでは」


「いえ、ただ少しでも多くの知恵者にご協力いただきたいだけです」


 なんだかどんどん彼の話かたがわざとらしくなっていく。それにこんな絶対に正解できないクイズ見たいことをわざわざここでする必要はないはずだ。ならばなぜこんなことをするのか、考えられるのは僕のことをまだ信頼できていないため、僕の功績の裏に何かあると考えそれを探ろうとしている。又は


 そんなことを考えていると、廊下からガシャガシャと音が聞こえた。そしてその音はこの部屋の前まで鳴り響きそして止まった。


「そうですね。もうここでは儲けられなくなって他の町に行ったとか。町の人たちの警戒するようになって」


「なるほど、なかなかに面白い考えですな」


 ギルド長は僕の肩から手を離し、そのまま扉に手をかけた。


「だが、それはありません。なぜならあれにとって一番大切なものを私が握っているからです」


 まさか、という一瞬の硬直をついてギルド長は扉を開けた。するとその先いた騎士二人が一気に部屋になだれ込み、そのまま僕の喉元に剣を突き付けた。


「えっと、これはどういう試験ですか」


「はっ、はっ、はっ。お惚けをもう私は全て知っているのです」


「あなたが、あいつをかくまっていることもね」


 その瞬間一気に冷や汗が体中からあふれ出した。それにしても一体どこからそれが漏れたのか、もしかして、僕らの様子がどこからか見られていた?もしくはどこかのタイミングで口を滑らせてしまった? そのいずれの可能性も該当する出来事が思い当たらない。


「いや、最初密偵から話を聞いた時は耳を疑いましたよ。でもあなたへの質問で核心に変わりました」


 質問・・・それを踏まえて改めて考える。そして僕はその時になってやっと自らの過ちに気が付いた。彼は依頼内容について、獣人の強盗の確保と言ったが、ギルドで共有されている情報には犯人が獣人であるかということは明かされていない。それなのに僕は彼の言葉を反射的に肯定してしまった。


「あなたは本当に優秀な奴隷商人です。そんなあなたが罪人をかくまっていると知られては、人の国でも、獣の国でも生きられませんな~。でも私はそれを望まないなので、あなたに一つ提案があります。あれを私に引き渡してください」


 あれがフィリアを指すということは直ぐに分かった。


「そうすれば、あなたには正当な報酬を支払いますし。今後ここの奴隷市をご自由に理由して頂いて構いません。それにこれまであれをかくまっていた罪もなかったことにします。あなたは今後この町の発展に大きく貢献できる人材だと思うのです。だからここで終わるのは非常にもったいない」


「この町の発展って獣人を使ってですか」


「ええ、あまりご存じないのかもしれませんが、この人間の国で都市に分類される場所はどこもあれら獣を使って発展したのです。当然我が町もそうであることはすでにご存じでしょう。ですが現状に満足せずこの町をもっと豊かにどこよりも発展した町にしたい。そう心から願っています」


「その結果どれだけの犠牲が出ても構わないと?」


「あれは、犠牲ではありません。消耗品です。なのであなたが気に病む必要はないのでは?」

 この男は、いやこの世界はどこまでも歪んでいる。その事実がどんどん僕の冷静さを奪っていく。だがそれでもここで理性を完全に失い後先考えない行動をとるわけにはいかない。なので僕は拳を強く握り、ただ耐えた。


「まあ、あなたはお優しい方ですので、少しだけ考える時間を与えましょう」


 そう言うと騎士たちは剣をぼくの喉元から離し、鞘にしまった。


「明日の日の入りまでにここに連れて切れ下されば、あなたの罪を免除し、報酬を支払いましょう。でももし、それがなされなければ、あなたの野営まで騎士を贈り、あなたが大切にしている獣どもを皆殺しに、いえ私の奴隷といたしましょう」


 ギルド長は騎士を下げさせ。ドアの前のスペースを開ける。どうやら今回はこのまま帰らせてもらえるらしい


「それでは明日、よき返事をお待ちしておりますよ」


 ニヤニヤと気持ち悪く男が笑う。僕はゆっくりと椅子から立ち上がりギルド長が明けてくれたスペースを通り扉へ歩く。きっとこの騎士たちも兜の中ではギルド長と同じような表情をしているのだろう。そんな根拠のないことを考えたが、この町の人間ならありえなくもない。結局そのままギルド長は館の外までついてきた。僕はその間一切口を開くこともなく、顔を上げることもなかった。そしてそのまま僕は皆が待つ野営まで帰った。


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