お説教と晩御飯
「なるほど、話は分かりました」
以外にも一連の話を聞き終わったウーは冷静だった。恐らく先ほど僕に優しい言葉をかけた反動で、怒りがすこし収まったのだろう。
「ですが、結果としてはどうですか? ヌシを見つけ住処から引きずり出したまではいいですが、そのあとはグダグダで結局後始末を私たちがすることになっていたでしょ。あの時もし私たちの到着が間に合っていなかければ、三人とも命はなかったのですよ。そこのところしっかりと反省してください」
「でも、お前たちのやりかたじゃあ」
「あなたの考えも理解できました。まあ結果としてあなたの無謀な行いのおかげで、事態は一歩前進した。でも結果オーライにはできません。もしあなたに何かあったら私たちはあなたの母親になんと申し開きすればいいのですか。あなたは母親を救出することに躍起になりすぎて、自分自身のことを忘れている。私たちの今の目的はあなたの母親を救出することではありません。あくまでそこは通過点にすぎません。我々の最終目標はあなたを母親と再会させ、二人ともを故郷におくりとどけることです」
僕の想像よりもはるか先のビジョンをウーは見ていた。実際僕の考えなんて、焦ってここを飛び出したフィリアとたいして変わりない物だというのに。
「ですよね、ご主人様」
声色は明るいのだが、目が完全に笑ってない。と言うか完全に怒っている。どうやら先ほどのことを自分で蒸し返してしまったらしい。一度ウーに謝ったことで僕も気が抜けてしまっていたので。丸まっていた背筋をピンとただす。
「これは、フィリアだけでなくあなたにも言っているのですよ。ご主人様。分かっていますか。我々の旅の目的にはチマとポタをご両親の元へと返すことも含まれているのですよ。同じことの繰り返しになりますが、どうかそのことをお忘れなきように」
「・・・はい」
「だっはははー。自分の奴隷の尻に敷かれってやんの、この商人」
僕が怒られる様子を大笑いしながら酒を飲むダラスに流石に僕の少し怒りを覚えたが、それでもこの場の支配者はそれ以上の怒りを秘めていた
「ダラス・・・すこし黙りなさい」
「おっと、これはいけねぇ。私ははやく寝るとするか。お休み~」
「まったく」
ウーは深くため息をついた。というよりかは単純に疲れているのだろう。あれほどの激闘をした後だというのに、僕らのグループ中では一応年長組に位置しているので、多少無理をしてでも、年少組が今後同じことを繰り返さないためにしっかりと叱る必要があるのだ。そんなことをしていては当然疲れてくる。
「ともかく、こんなことは二度としないでくださいね。分かりましたか?」
「「「はい」」」
結局三人ともしょんぼりとしてしまったが、それも仕方ないことではある。彼らにはある程度自分のした行いを反省する時間が必要なのだ。
ウーは一通り説教を終えると、その足で馬車の裏へと消えていった。そして少しした後、大きな鍋を持って戻ってきた。
「さあ、皆さんしょんぼりするのはそれまでにして、食事にしましょう」
ウーが持って来た鍋にはいつの間に用意されていたのか、お肉がゴロゴロ入った特製スープが入っていた。その芳醇かつ野性的な香りにそれまでしょんぼりしていた。チマとポタは一気に元気を取り戻した。




