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三人の連携と僕の作戦

「ダラス、どうやらあれがヌシのようですね。分かってますか生け捕りですよ」


「はっ、知るか。あたしはあいつを狩って食うぞ、いい酒のつまみになりそうだ」


「生け捕りにしないと、依頼失敗になるでしょ」


「ちっ、だがあいつの出方次第だがな」


三人が話している間に、怒り狂ったヌシが突進を仕掛ける。どうやらヌシは図体のわりに知能は低いようで、先ほどからずっと突進攻撃ばかり繰り返している。その威力は絶大だが、フィリアやウーには交わされ、ダラスには全力の斧の一振りで相殺されてしまっている。だが三人ともそれをするのでせいいっぱいのようで、あまり攻撃に転じられていない。


「このままじゃ、埒が明かねぇぞ」


「じゃあ、どうするんですか」


「そんなの知るか。私ができるのは力いっぱい殴るだけだ」


 三人が言い争いをしている。どうやら戦略がまとまらないようだ。それもそのはずだ。だって今の彼女たちは、一人は奴隷、一人は山賊、もう一人は強盗とあまりにも共通点がなさすぎる。そんな三人に即席で連携を取れ、いう法が無理な話だ。


 だが今相手しているヌシは三人で力を合わせなければ、決して倒せない相手だということは、これまでの闘いを見ているとすぐにわかった。でも僕の頭には作戦があった。だがそれを行うには誰かがオトリにならないといけなかった。そんな危険な役目を誰に任せる。フィリアは絶対にダメだ母親に申し訳が立たない。それなら一番ガタイがいいダラスか、それとも一番僕を信頼してくれているウーか、いいや、違う。答えは最初から出ていた。


「ちょっと、まだ安静にしていないと」


 チセの忠告を無視し僕は立ち上がった。どうやら先ほどたてなかったのはダメージのせいではなく、純粋な恐怖が所以だった。だがだからと言って全く問題ないわけではない。司会はふらつくし、まっすぐあることも難しい。そんな状態で僕は戦場に出てきてしまった。


「商人、お前何してんだ」


「僕があいつを止める。そこを三人で袋叩きにしちゃえ」


「いや、止めるってできんのか? そんな体で」


「やる」


 いったい何の根拠か、今の僕には謎の自信があった、いや自信というよりかは使命感といった方が正しい。それにつられ僕はヌシの前にどっしりと構える


「こいよ、デカイノシシ」


 言葉が通じたとは思えないが、ヌシは突進の方向を僕へと変えた。その時になって初めてウーは僕が馬車から出てきていることに気が付いた。


「逃げてください、ご主人様」


 必死に走って僕に駆け寄るが、それよりもヌシの突進の速度が速く、ヌシの突進が僕に直撃する。一回目と違いどっしりと構えていたにも関わらず、全然勢いを殺しきれず、草原をずるずると引きずられていく。だがそれでもぶつかる前に比べるとだいぶ速度が落ちてきている。あともう少しで止まりそうだが、その少しが届かない。だがこれ以上後ろには下がれない。


「負けるかーーーーー」


 僕が最後の力を振り絞る。これ以上は下がれない。これより後ろには守らなければいけないものがあるのだから。


 あれはただの願いだった。ただそれを願ったとたん僕の体に今まで体感したことがないほどの力があふれてきた。途端脳内でドタンという解錠音が響いた。その瞬間一気に力がみなぎってきた。


「はぁーーーーー」


 あふれる力をそのまま目の前のヌシにぶつける。するとそれまで怒りに身を任せていたヌシが僕の豹変を感じ取ったのか、足を緩めた。その隙を僕は見逃さなかった。そのまま一気に前方に力を贈り押し返す。そしてとうとうヌシの動きを止めることが出来た。


「よくやった商人」


 僕を飛び越えてダラスが飛躍する。そのままヌシの体を足場にさらに高く跳躍する。


「これでもくらえーー!!」


 そのまま力いっぱい斧をヌシの脳天にたたきつけた。大きな亀裂が入りそこから大量の血が噴き出る。そしてそのままヌシはその場に倒れた


「よっしゃー倒したぜ」


 ダラスだけが嬉しそうに喜んでいたが、それ以外の面々はそれぞれ、別々の表情をしていた。僕は後から来た激痛にもがき、ウーは疲労のせいでその場に倒れこみ、フィリアはすまし顔をしている。これから少し休んでから、これを一旦拠点まで運び、それから明日あたりにギルドに報告に行こう。生け捕りということだったが、どさくさに紛れて仕留めてしまっているが、そんなことなど、今の僕に考える余裕はなかった。


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