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僕という人間の利用価値

「まあ、おそらく出来ねぇだろうな」


「どういうこと、ダラス?」


「まさかお前分かってねぇのか、まったく私が言うのもおかしなことだがお前奴隷商人として失格だぞ」


「ごめん」


「はぁ、知らねぇようだから教えてやるよ、獣人は普通の人間よりも身体能力が高いから奴隷として利用されることが多いが、こいつはそれとはまた別だ。白狼族は獣人の中でもかなり数が少ないから、希少価値が高い。だからこいつはわざわざ人間の領域じゃなくて、獣人の領域からさらわれて来たんだぞ。つまりはかなり高いってことなんだぞ」


「具体的にいくらなの」


「そんなこと私が知るか」


「だよね」


 見積もりが甘かったと言わざるを得ない。これまで僕らは旅を進めながら仲間を笛やしてきたが、本来奴隷商人は金で命を買い、それを使って金を稼ぎ、又それで命を買う。これを繰り返すことで商売を成り立たせている。


「ところで、買えなかったらどうするんだ」


「それは…」


「話にならないな」


 ダラスは僕の話の内容に呆れてしまい、その場に寝っ転がった。どうやらもう僕の話を真剣に聞く気はないらしい。


「あたしの作戦を言ってもいいか」


「頼むよ」


「まず、母親を見つけるまでは一緒だ。そして見つけたらその日のうちにそこを襲撃する。警備兵全員ぶっ殺して、中にいるやつらを全員出す。そしてとっとと逃げる。それが一番手っ取り早い」


 ダラスの言い分も分かる気がする。しかしそれを行うには明らかに人員が足りない。それにチマやポタ、それにチセと言った非戦闘員を巻き込むこともできない。それを鑑みると策としては下策もいいところだ。でも確実なのは間違いない。


「ダラス、そんな作戦が本当にできると思っているんですか」


「勝算がないわけじゃあないぜ、だが分からないことが多すぎるって言うのも事実だな」


「そう言うことではありません。子供たちはどうする気ですか」


「はぁ、知るか。あたしはおまえたちの仲間じゃない。だからそいつらがどうなろうかどうでもいいんだよ」


「ダラス、あなた」


 ウーの目が一段と厳しくなる。このままではもしかすると同士討ちに発展しかねない。ななので一応ウーの主人である僕が割って入る。


「待って待って。二人とも、まずはフィリアの母親を見つけるのが先でしょ。それが出来てないのに言い争いをしても仕方ないでしょ。まずは僕が入るその後のことはその時に考えよう。確かに時間があまりないかもしれないけど、急いでことを進めれば余計なリスクを生むだけでしょ。だから今は僕が情報を持ち帰るまで、みんなで一緒に最善の策を考えようよ」


「皆って、まさかあたしも数に入れてねぇよな」


「もちろん入れてるよ」


「はぁ、お前ふざけんなよこの弱小商人が」


「ダラスあなたね」


 怒るウーを僕は制した。確かに僕は力はない。だがそれでもできることが何もないわけではない。


「そうさ、僕は戦闘能力はない。でも獣人のダラスにできないことでも人間の僕ならできることがある。それが何かは言わなくても分かるね」


 ダラスは何も言葉を返さなかった。それを見て僕は自分の言い分が彼女に通じたのだと解釈した。ひとまず出だしは順調に進んだようだ。


「確かにダラスはまだ、僕らの仲間じゃない。だから僕の指示に従う必要がない。その理屈はただしい。でもせっかくここに自分にとって都合のいい人間がいるのに、それを上手く使いこなせないのはそれはそれでどうなの?」


 万が一戦闘になった時このパーティーで一番の戦力はダラスだ。しかしそれが調査に変わった時、獣人な上に荒々しい性格なダラスは一番不向きで価値がなくなる。


 逆に人間の僕はどこにでも入ることができ、会話の運びかた次第ではいかなる情報も引き出すことが出きる可能性を秘めている。それを彼女に感じてもらいたかった。


「ちっ、むかつく野郎だぜ。ああもう好きにしろよ。あたしはもう寝る」


 そう言ってダラスは僕らに背を向け、口を閉ざした。どうやら僕の言いたいことはしっかりと伝わった。


「とりあえずは、僕が中に潜入を試みるところまでは問題ないよね」


 僕の言葉に皆が頷いてくれた。ダラスはと言うと、顔を向けずただ手だけ挙げていた。それがどういう意味を示すサインなのかは分からないが、反論がないのでとりあえずは了解ということにした。


「それじゃあ、作戦会議は終わり。寝よっか」


「お休みなさい」


 そうして僕らはあっという間に眠りに就いた。


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