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回りくどい手段

「可能ではありますが、かなり複雑な手続きが必要になります。それでもよろしいですか」


「分かりました。ではその手順をお聞かせ願います」


 そこから銀縁眼鏡が話はとても長く続いたが、ようやくすると、今以上にレベルの高い仕事をこなすし、このギルドのトップからの信頼を得る必要があるそうだ。しかし僕らはこれまでの高い依頼達成率からすでに目をつけられているだけあり、それは難しいことでないそうだ。そしてその後に直接トップとの面談を経て、そして改めて品定めができるという流れなのだ。ということはこれまで通りに仕事をこなしていればいいということになる。流石に命がけになるようなものはないだろう。


「説明は以上になります、何かご質問などはございますか」


「いいえ、今のところは特に」


「そうですか、なら本日の説明は終わりです。お気を付けてお帰りください」


 会議室の扉が開かれ、僕は速やかな退室を求められたので、お茶を飲み干してからゆっくりと部屋を後にした。銀縁眼鏡は僕が館を出るまで見送ってくれたが、そこまで行くと流石に追ってはこなかった。なので僕はそのまま買い物を済ませて皆が待つ野原へと戻った。


「おかえりなさいませ、今日はずいぶんとお戻りが遅かったですね」


「ごめんね、ちょっとギルドで話し込んじゃって」


「話とは」


「そうだね、皆にも関係がある話だからあとで聞いてほしい。でもそれよりも先にまずはご飯にしようか」


「「さんせ~い」」


 おなかを空かせた状態で身動きが取れずにいたチマとポタの存在がずっと視界の端に入っており、これ以上ご飯を先送りにすると泣き出してしまいそうだったので、ひとまずは食事の用意を優先した。


 と言ってもいつも通りの野菜と少量のお肉のスープに、付け合わせのパンという相変わらず質素な食事ではあるが、仲間と取るとそれも悪くないと思える。そう言えば僕らの食事時間にもささやかな変化が起こっていた。昔は僕とウーそしてチマポタの三人だけだったが今はそこにダラス、チセ、そしてフィリアが加わった。当然それで何も変わらないというのはありえないことではある。


 具体的にはチマとポタはずっとフィリアにべったりの状態になってしまった。昔はウーにべったりだったのだが、もしかするとこの旅をへて彼女たちの心境にも何か変化が起こったのかもしれない。代わりに手持ち無沙汰になったウーが僕の隣にやってくることが増えた。そこで行われるのは主に僕がいなかった時の出来事を報告してくれたり、足りないものがあったりするとそれとなく教えてくれるので、大変助かっている。一方ダラスとチセはなぜか時折小競り合いをしながらも意外と仲は悪くないようで、時折ダラスが大笑いする声が聞こえてくるようになった。そこに一体どのようなきっかけがあるのかは、ウーの報告にもないので、本当に謎のままだ。


「さてと」


 鍋いっぱいに用意したスープの完全に空になり、皆が焚火の炎で暖を取り始めたので、僕は改めて例の話をする。


「皆に聞いてほしい話がある。例のギルドのことだ」


 僕の言葉に皆が視線を僕に集める。その中でもフィリアは特に真剣なまなざしを向けていた。


「今日僕は、あのギルドの中でもそこそこ高い地位にいるであろう人と話をすることが出来た。その人が言うには、この町に奴隷がいるのは確実で、だが収容されている場所がギルドの館の地下なのかは分からない。もっとはっきり言うと教えてもらえなかった。だがもっときつい仕事をこなして、信頼を得ることが出来ればその場所に連れて行ってもらえるらしい」


「らしいって、確証はねぇのかよ」


「そうだね。だから今は彼らの提案に乗るしかない」


「ちっ」


 どうやら僕の回りくどいやり方が嫌いなようで、ダラスは分かりやすくいら立ちを見せた。


「それで、中に入ってどうする」


「まずは、フィリアの母親を探す。そして見つけたら買い上げる」


「できるのかそれが」


「分からない」


 口にして改めて思うが、状況はすこし進展したようで、絶望的であることは何も変わっていなかった。


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