デートプラン
「で、話しって何だよ」
「その前にダラスはこの町に争いの気配が近づいているのは知ってる」
「ああ、つい最近報告を受けた」
「ではなぜそれを私達に共有しなかったのかという部分は一旦不問にしますが、次回からは気を付けてくださいね」
「おん、わりい。で話しって何だよ」
「端的に言うと僕たちはこの争いに巻き込まれるわけにはいかない。だから早急に方針を決めないといけないんだけど、ダラス達にも共有しておかないと思って」
「なるほどな、まああたしらはあたしらで自由にやるつもりではあるが、一応聞いておいてやる」
「助かるよ」
「それで改めて現状を確認すると、この町は今裏陰との戦闘を控えていて、ある意味臨戦態勢になってるわけだよね」
「はい、おっしゃる通りです」
「でも僕たちは守るべきものがあるから、戦闘には参加しない。ここまではいいよね」
「はい」
「え~あたしは闘いたいね。部下たちのうずうずしてんだ。久しぶりに人間を狩れるって」
「しかし、どれだけの戦力が集まっているかわからないのにも関わらず戦いを挑むのは、危険なのでは」
「関係ないね、あたしらを舐めんな」
「別に舐めているわけじゃないよ。でも極力ダラス達にも戦いをしてほしくないって言うのが、僕の本音だ」
「それはどうしてよ」
「・・・傷つく人を見たくないんだ・・・そこに獣人も人間も関係なく・・・」
「・・・相変わらず甘チャンだな」
「うん、僕もそう思うよ」
僕の話を聞いた後、ダラスはため息をついた。
「わーったよ、じゃあ先制攻撃はなしってことにしてやるよ。だが売られた喧嘩は買う。それはいいな」
「分かった」
むやみに争いごとを起こさないと約束させただけでも、かなり大きな成果だと僕は思っていたが、ただ一人ウーだけは納得していなかった。
「しかし、万が一それで私たちも戦いに巻き込まれたらどうするんですか」
「そうならないために、僕がダラスを見張っておくよ」
僕が傍にいればダラスも余計な気を起こさずに済むだろうし、彼女も彼女で面倒事を引き受けてくれる相手がいるだけでも、かなり立ち回りやすくなるはずだ。そうなると彼女が僕の同行を拒む理由はない。
「・・・でも、そうなるとご主人様の準備が進みません。それにご主人様には最低でもこの周辺の地理状況が記された地図を入手してもらう必要があります。ですがダラスさんを連れてそれを行うのは非常に難しいと思います」
「おい、それどういう意味だよ」
ダラスが少々イラつきながら、ツッコミを入れたが、チセはそれを無視した。
「ですので、その役目、私が担います。幸い私の用意は全て終わって暇を持て余していたところなので」
「いいのですか、チセ」
「ええ、私はかまいませんよ。それにこの町にいられるのもあと少しなので、今のうちにお二人でデートでもしてきてわ」
チセのまさかの一言に僕は一気に顔が熱くなる。そして思わずウーの方を見てみると、彼女もまた赤面していた。
「チセ、何を言っているんだ」
「そうですよ。今は非常時なのですよ。デートなどしている余裕は」
「いいじゃねぇか、せっかくチビがきーまわしてくれてんだ。多少イチャついても罰は当たらねぇって」
「ダラスあなたまで」
「へっへへ~」
段々と空気がおかしな方向にねじ曲がってきた気がするし、話もだいぶ逸れてきたのでどうにか軌道修正しないといけないと思っていた矢先、おそらく僕と同じ気持ちであろうウーが割って入った。




