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未熟

「私は少々変わった体質でして、他の人が毒や病原菌、ウイルスに犯されている場合それを吸い出し私の体に移し替えることが出来ます。いったいいつからこのようなことが出来るようになったのか、私自身も覚えてはいませんが、もう何年もこの力を使い治療を施してきました。そうして蓄積された毒は私の中で混ざり合い、そして蓄積されて行きました」


 それが彼の体が細く、そして様々な斑点が付いている理由だったのだ。彼の話によるともはや彼の体に一体何種の毒が蓄積されているのか彼自身も把握できていないらしい。一応医師になる過程で身に着けた毒耐性ももはやまったく機能していないという。


「それで頼みとは」


「私にはもうあまり時間が残されていません。だからもし私の身に何かあったらあの子を、チセをあなたにお預けしたいのです」


 あまりに衝撃的な事実に僕は言葉を失った。確かに彼の様子を見て元気だと思う人はそんなにいないだろうがまさかここまで深刻だとは思っていなかった。それにしてもなぜトクシンさんは僕にチセを預けようとなったのか、それが分からなかった。


「あの子は私の子供ではありません。私がこの山に住むようになってしばらくした時、この山で彼女に出会いました。話を聞くと両親が病気にかかってしまい結果として彼女一人を残して亡くなってしまったようです。そこで私は彼女を引き取ることにしました。そしてここで生活を始めました」


「そのうち彼女は医術を学びたいと言ったので。私はできる限りのことを教えました。それが私が彼女にできる数少ないことだと思ったからです。しかし彼女はまだ未熟です。本当はもっと私が傍にいてあげたいのですが、先ほど申し上げた通り私にはもう時間がありません。だからあなたにお願いしたいのです」


「それは分かりましたがどうして僕なんですか?」


「ウーさんの話を聞いた時から考えてはいました。これまで私のもとには多くの患者が訪れてきました。ですがその多くは他種族を嫌悪し差別していました。何度か連れていた他種族の奴隷にも治療を施そうとしましたが、すべて断られてきました。ですがあなたは自らの奴隷、失礼訂正します。仲間のためにここまでやってきた。その行動を見て確信しました。あなたの元ならきっとあの子も健やかに育ってくれるかもしれない。そう思ったからです」


 そんな責任重大なことをいきなり言われてもすぐに返事ができるわけがなかった。それでも彼の言葉が嘘でないことはスキルを使わなくてもすぐに理解できた。


「えっと、ちなみにそのことはあの子は知っているのですか?」


「いいえ知らないはずです」


「そうですか」


 僕は大いに悩んだ。悩みすぎていつの間にか照明に使われていたろうそくが取り換えられていた。


「トクシンさんにあまり時間がないことは理解しました。ですが僕はあなたほど立派な人間ではありません。だから少しだけ考える時間をください」


「もちろんです、ですが」


「分かっています。あまり時間をかけないよう努力します」


「お願いします」


 確かに未熟とはいえ彼女の医術はこれからのたびに必要になるので願ってもない話ではあるが、まだこの世界についてまだ分からないことだらけな上に僕もまたチセ同様に未熟な身であるため彼女の今後に責任を持てるかどうかも分からない。


 チマとポタに関しては帰る故郷があるがチセには仮に故郷があっても家族がいない可能性がある。そうなるとトクシンさんが死んだ場合本当に彼女は独りぼっちになってしまう。そうなっては彼女が生きていける保証はない。一体どうしたらよいのか本当なら仲間たちに頼りたいのだが、そうできない事案なため僕は一人で悩むしかなかった。



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