暗雲
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ドリコムメディア大賞中間選考突破しました! これも皆様の応援のおかげです!
という訳で感謝の連続投稿をしたいと思います! 月曜までノンストップ!!! 次話は明日の昼12時に投稿します!
いよいよ大王烏賊討伐へ! しかし、あの残念な子は……
後半にはあの人も登場します!
数日後、大王烏賊討伐のためのガレー船が五隻港に並んだ。
「流石に壮観だな」
「そうですね、アリステッド男爵」
俺は今、アリステッド男爵なので、横にいるリィナもそれに合わせている。
(リィナも大変だよな)
リィナは変装しなくてもいいのかと思ったのだが、彼女の場合、ルーカスさんとクラウディアさんの子どもということで否応なく注目されてしまうので今更……という話らしい。ルーカスさんは、“むしろ、アリステッド男爵絡みだと分かれば、手を出しにくくなるだろう”とさえ言っていたくらいだ。
(リーマスが特別だった、ということか)
ファンクラブとかはあったが、まあ一般市民として生活してたしな。
「格の違いを見せてやるからな、アリステッド男爵!」
あ、もうガレー船に乗り込んでる。
「あの人が公認勇者……?」
リィナが可愛らしい顔で渋面を作る。前ならもっとストレートに怒りを表現していたはずだが……
(何というか、変わったな)
補足しておくが、悪い意味じゃない。むしろ、逆だ。今まで俺はリィナのことを守らなきゃいけない大切な存在だと思っていた。勿論、今もリィナは大切だ。だが、守らないといけないというより──
「まあ、ああいった人種には言葉より結果ですよ。大丈夫、いつも通りやればあの人も思い知るでしょう」
エーデルローズが凛とした顔でそう言い放つ。その姿は正にロマンス小説に出てくる男装の令嬢そのもの。
(でも、昨日はあんなに乱──)
いや、あれは忘れる約束だ。調子に乗った俺も悪い。
(だけど、挑発しておいてあんなに責めに弱いなん──)
だ、駄目だ! 落ち着け、俺!
“どうかなさいましたか? マスター!”
しまった、ミアを心配させてしまった。
(大丈夫だ。まあ、何て言うか……海は危険だからな)
かなり頑丈なガレー船だが、落ちればそこは海。いくら強くても死の危険が──
“大丈夫ですよ、マスター! 海面に境界を引けば海中に落ちることはありません。マスターは勿論、誰一人として溺れることはありませんよ”
え……マジで?
(ミアって本当に凄い聖剣なんだな)
いや、今更ではあるけどさ……
※
(アバロン視点)
「くっそー! またオール漕ぎかよ!」
ドレイクがそうボヤくが、俺としては万々歳。いや、むしろ感謝していたくらいだ。
(雑用じゃ生活さえ苦しいんだから、船代や旅費まで貯めるのは無理だ)
俺達は今、大王烏賊討伐のためのガレー船の船底にいる。理由は簡単。金を稼ぐためだ。
(冒険者プレートが無くても受けられる仕事で良かったぜ)
大王烏賊討伐自体は冒険者でないと受けられないが、船底でオールを漕ぐのは一般人でもやれる仕事だ。
(まあ、定期船のオールを漕ぐよりも危険度が高いがな)
なので、基本冒険者ばかり。だが……
(大体D級〜E級ってとこか。甲板で戦う力がない奴らばかりだな)
面白くないという気持ちもなくはないが……今は金が一番だ。
「おい! 全員揃ってるか!」
高そうな鎧を着込んだ男が扉を開けるなり、そう怒鳴る。
(こいつは確か、イーサンとかいう奴の仲間だったか)
ランクの低い冒険者や冒険者プレートがない俺達を常に下に見ているいけ好かない野郎だ。
「これからいよいよ大王烏賊出発する! が、その前にお前達に注意しておくことがある!」
何だ何だ……
「この大王烏賊討伐クエストは公認勇者イーサン様が勝者とならなければならない!」
は? 勝者?
(何言ってるんだ、コイツ)
冒険者がクエストの正否で勝ち負けを争うことはある。だが、同じクエストを受けて互いに手柄を争うようなことはない。何故かって? 足の引っ張り合いをしたら、どんなクエストだって失敗するに決まってるからな。
(それにこれはオルタシュの命運がかかった、いわば緊急クエスト。何よりも協力することが重要なはずだ)
緊急クエストなんて概念はリーマスにしかないだろうが、魔物の脅威がない都市なんてない。この辺の感覚は新人の頃から冒険者が共有しているはずだが……
「勇者……神に選ばれし存在か! なら、確かに勝利しなくてはならないな!」
おいおい、ドレイク……
(あ、こいつは冒険者じゃなかったな)
元神殿騎士ならこのリアクションは正常なのか? よく分からんが……
「よってこの船は誰よりも早く大王烏賊を補足し、接敵しなければならない!」
おい、それってこの船だけで大王烏賊と戦うってことか???
(いくらなんでもそんな馬鹿なこと……)
相手は海の中にいるんだ。集中攻撃されたら船を沈められるに決まってる。子どもでも分かりそうな話だが……
読んで頂きありがとうございました! 次話は
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