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それから

 遂にイベル最後の時か……?

 イベルの叫び声は膨れるように大きくなり、そして消えた。


「……終わったの?」

「多分、そのはずです」


 イベルの姿は消えたのを見て、レイアとリィナがそう言った。最後はあっけない……いや、それに不満がある訳じゃないけど。


(いや、思い残したことならあるか……)


 最後までイベルには俺の言葉が届かなかった。全ての人と分かり合えるとか思ってる訳じゃないけど、あいつは何ていうか……


 ゴゴゴ……


 物思いを止めるかのように地響きが! これはまさか……


“〔セルフィッシュエデン〕が崩れる。急いで脱出しよう”


 オズさんが姿を現してそう言った。この〔セルフィッシュエデン〕はイベルの魔王としての力。奴がいなくなれば無くなるのは当たり前か!


“思ったより崩壊が早い!”


”ハリボテみてぇな世界だからな。スカスカなんだよ“


 魔王達はそう言いながら俺達の退路を確保してくれている。急いで帰らないと!



 何とか全員で無事に帰った後、俺達はヴェルリナさんを始めとする聖王国の仲間や対魔王連合軍の人達から歓迎を受けた。その後は事後処理だ。ルーカスさんやヴェルリナさん、クロードさん、ジーナさん……色んな人が駆けつけて手伝ってくれたが、やはり大変だ。


(……イベルと戦っていた時の方が大変だったかも)


 罰当たりな話だが、そんな思いが頭をかすめる時もある。が、同時に思う。この面倒くささもみんなの絆の強さの証明じゃないか、と。繋がってるからこそ無関係ではいられない。無関係ではないからあれやこれやと言ったり、動いたりしたくなるのだ。


(絆にも色々な形があるんだな……)


 漠然とそんなことを思う。俺はこの旅で人と人の繋がりの大切さを知った。だが、終えてみて今思ったのはその多様さだ。俺はまだまだそれを十分に知ることさえ出来ていない。


「……で、フェイはまた旅がしたいのね」

「ああ。いろんな絆の形を見たいんだ」


 今までの旅と違って明確な目的があるという訳じゃない。いつ終わるかも分からない。けど、俺はそれも良いかなと思う。世界にはどんな人がいて、どんな場所があるのか。それが知りたいのだ。


「フェイらしいね」

「ついて来てくれるか?」


 俺がそう言うとリィナは微笑んだ。


「勿論!」

「ありがとう、リィナ」


 俺はリィナの華奢な体を力いっぱい抱きしめた。



「すみません。まだまだすることはいっぱいあるのに」


「ありがとう。お父さん、お母さん」


 それからしばらくして俺とリィナは旅に出ることになった。面倒な事後処理はまだ終わってない。けど、ルーカスさんとクローディアさんが全て引き受けてくれると言ってくれたのだ。


「いやいや。このくらいはしないとな。最初から最後まで任せっぱなしというのは流石に格好がつかないさ」


 任せっぱなしは言いすぎじゃないかなと思うが、多分これはルーカスさんなりの気遣いなんだろうな。


「たまには連絡を頂戴ね。冒険者ギルドには書類を見せれば通信施設を使わせてもらえるから」


「分かった」


 俺達の旅は一応視察ってことになってるから、冒険者ギルドの支援も受けられるらしい。家族への言伝に高価で貴重な設備を使うって言うのは何か申し訳ないけど……


(まあ、働いて返せばいいか)


 厄介で引き受ける人がいないクエストとかをやったらお返しになるだろうか。レベルはやたら上がったからな。出来ることな色々あるはずだ。


「元気でね、リィナ」

「フェイくん、リィナを頼む」


 クローディアさんとルーカスさんに見送られて俺達は旅立った。昨日のうちに挨拶は済ませてあるのと、目立つのを避けるため見送りは二人だけだ。


「まずはレイナさんのところね」

「ああ」


 ここ聖王国から魔族都市ルトラシェラへ。とりあえず来たルートを引き返しながらお世話になった人に挨拶して回るつもりだ。


(師匠にも会っていくか)


 師匠は今レイアさんと一緒にルトラシェラにいるはずだからな。


「待って―――っ!」


 で、聖王国ではレイナが頑張って──


 ブン!


 突然誰かがスキルを使って後ろから追いついた……ってレイナじゃないか! 


「見送りか? 昨日──」

「私も行くわ!」


 え?


「いや、まだすることがあるって言ってたじゃないか」


「やっぱり無理。私にはこう言うの向いてない!」


 いやいや、レイナは今魔王を越えた『魔帝』だぞ? 向き不向きを言ってる場合じゃないんじゃないか?


「ルトラシェラまでで良いから! 姉さんに代わって貰えるようにお願いする! そっくりだから大丈夫!」


 大丈夫……かなあ? レイナさんはレイナさんで忙しいと思うけど。


(けど突っぱねたところで結局出ていっちゃうよな……)


 ならいっそレイナさんのところに確実に送り届けた方が良いか。


「……ルトラシェラまでだぞ」

「分かってる! 流石フェイね!」


 目配せにリィナが頷くのを確認してからそう言うとレイアは嬉しそうな声を上げた。


(まっ……何とかなるだろ)


 いきなり前途多難な気もするが、いつもこんな感じだったしな。先を急ぐ旅でもないし、ゆっくりいくか。


*ここまで読んで頂きありがとございました! ここからはフェイとリィナが自分達の新たな目的を探す旅になる……はずですが、ここで一旦終わりにしようと思います。でも何だかかんだで思い入れが強いシリーズで、やり残したこと多々あるのでまた続きを書きたいとは思ってます。ですので、気長に待ってやって頂ければ幸いです。


 

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