絆
レジェンドクラス、『繋ぐ者』で得たスキルを発動したフェイの目に映ったものは……
(くっ……)
押し寄せる光が俺に見せるのは今までの旅の記憶。そして、そこで出会った人々との思い出だ。
フッ……
最初に目に入って来たのはリーマス。オレとリィナが育った場所だ!
(リーマスではジーナさんやミア、レイア、リィナ……色んな人の力を借りて豹炎悪魔を退けたな)
ちなみにこの時に出会ったのがネアで、彼女との出会いがこの旅の始まりだった。
フッ……
海に囲まれた美しい街並みが広がる。ここは……
(水上都市オルタシュではメルヴィルさんに色々助けてもらったな)
そう言えば土地を貰っていたし、銅像も建てるとか……また様子を見に行かないとな。
フッ……
次に見えてきたのはブリゲイド大陸! そうだ、ここでも色々あったな……
(ここでは獣人のみんなに助けてもらったな)
モンスターだけでなく、過酷な環境を乗り越えるために中継地を作る必要があったからな。
(そう言えば、最終的に”男爵都市アリステッド“なるものまで出来てしまったな……)
まあ、それはともかくクロードさんや龍人の皆さんにも色々報告しなきゃいけないことがある。
フッ……
ギアス荒地だ。龍人族の遺跡で見た昔の風景は綺麗だったな……
(龍人族の遺跡で授かった力、教わったこと。どちらも俺達がここまで来るのを支えてくれたからな)
今は荒れ果てたギアス荒地も少しずつ緑が戻ればまた昔の姿を取り戻せるのだろうか。
フッ……
次は魔族都市ルトラシェラ……ここでも色々あったな。
(レイアを追ってきて……レイナさんとの戦いを見届けた)
互いを想い合うが故のすれ違い……でも最後には二人共分かり合えた。人を信じる勇気……それをレイナさんからは教わったように思う。
(それにイベルが魔王になるのも見たな)
突然現れたイベルが忘念の魔冠を被って魔王になってしまったんだった。そう言えば、ヤツは誰かと一緒に来た気がしたが……誰だっけ?
フッ……
最後は聖王国、神聖オズワルド共和国だ、……ここでも色々あったな。
(シノンと再会して、ヴェルリナさんに色々教えてもらって……そして)
リィナと恋人になった。そして知った。誰だって大切な人がいて、その人と共に幸せになりたいと願っていること。だから……
(オレはイベルを止める! そのための力をオレに貸してくれ!)
ズンッ……
何かが俺の呼びかけに応えるように頷く気配がした……
*
メラメラ……ボゥゥゥ!
“くっ……!”
「「あああッ!」」
リィナとレイア、それに魔王達が爆発する蒼い炎に押されて吹き飛ばされる!
ガシッ……
何とか二人を支えられたが……何て力だ。いくら魔王だからってこれほどまでとは!
”ここはイベルの想いが全てを決める。つまり、それだけ奴がこの世界に嫌気がさしてるということだ……“
「……って言うか、癇癪を起こしてるだけでしょ? 今更だけど、こんな奴が魔王になるなんて……」
威勢のいい言葉は相変わらずだが、レイアは既に肩で息をしている。疲労もダメージも相当溜まっているはずだ。
「がははっ! そんなもんかぁ!!!」
蒼い炎に包まれたイベルが勝ち誇った声を上げる。レイアも魔王達も既に起き上がり、隙を窺うようにイベルを睨みつけている。
「世界を壊す、全てを滅ぼす。そうすれば皆がノンストレス! この俺の最っ高な考えがどれほど素晴らしいか分かったか!」
「分かるわけないでしょ!」
「それはただの居直りです!」
そう言いながら、レイアとリィナはすかさずスキルを放つ。同時に魔王達と前鬼、後鬼も攻撃を放つが……
「んなもん、効くかぁぁぁ!」
イベルが叫ぶと同時に蒼い炎が膨れあがり、爆発する! その凄まじい爆風は全ての攻撃を吹き飛ばした!
「物わかりの悪い奴らだ! このイベル様の偉大さを理解出来ないならもう消えろ!」
「「!?」」
イベルの蒼い炎が渦を巻きながらボールのような形になる。そして……
「終わりだ!」
イベルが指を鳴らすと、蒼い炎弾は凄まじい速度で飛んだ!
(狙いはリィナとレイアか!?)
させるか!
「〔七光聖壁〕! 〔七光壁〕!」
俺はスキルを発動した!
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