思いつき
思いがけない(?)イベルの弁舌にフェイ達は……
(イベル視点)
(がははっ! 驚いてる、驚いてる!)
俺の話に奴らが驚いた顔を浮かべる! 俺のことをただの自己中だと思ってただろ! ばーか!
(まっ、俺もさっき思いついたんだけどな)
“理不尽を根絶”とかも全部思いつきだ。けど、悪くない気もするな。
(そうしたら、全世界が俺へ感謝し、尊敬するようになるだろう……)
別に感謝や尊敬が欲しい訳じゃないが……それも悪くないな。
”異世界から物資を略奪するだと! 本気か!?“
ん? オズか?
(別に構わないだろ、別の世界のことなんて)
過去には勇者召喚だか何だか知らないが、人を連れてきた歴史だってあるんだ。それと大差ないだろ!
“そんなことをすれば──”
(細かい話は後だ)
俺はオズからの煩い念話を打ち切った、今はあんな奴と話してる場合じゃないからな。
(さて……)
後は俺の完璧な計画を聞いて途方にくれた奴らの顔を見てやらないとな。くっくっく……正義の味方ヅラしてここまで来たんだろうが、残念だったな!
「皆が必要なものを必要なだけ俺が異世界から持ってくる。それで万事解決だ! 分かったらお前らも手伝え! そうしたら俺に歯向かったことは許してやる!」
まあ、死ぬまでこき使ってやるけどな(笑)
(ほらほら、早く謝っちまえよ! この魔王にして救世主のイベル様によ!)
俺が寛大な心で奴らの返事を待っていると、漆黒の全身鎧を纏った男が一歩前へ出た。
*
(フェイ視点)
(異世界……よく分からないけど、この世界以外にも世界があるのか)
そんなこと、考えたこともなかった。けど、今はそれはいい。それよりも……
(〔セルフィッシュエデン〕で異世界から物資を持ってくる……それで本当に理不尽が消えるのか?)
足りないものがあるから争いが起こる、それは一理あると思う。けど、何か引っかかる。
(例えそれが出来たとしても異世界の人達に迷惑がかかる……)
だが、それよりも気になるのは……
「皆が必要なものを必要なだけ俺が異世界から持ってくる。それで万事解決だ! 分かったらお前らも手伝え! そうしたら俺に歯向かったことは許してやる!」
イベルがそう言うのを聞き、俺は一歩前へ出た。
「イベル、確かにお前の言う通り、人が生きるには色んなものが必要だ」
衣食住は勿論だが、人との繋がりや生きがいなど挙げていけばキリがない。
「だからこそ、それを奪い合い、争いが起こる。そして争いの中で理不尽が生まれる……それはあり得ることだと思う」
「分かってるじゃねーか! なら──」
イベルが得意気な顔をする。が、奴が割り込む前に俺は言葉を続けた。
「だけど、それはいくらあっても解決しないと思う」
「……は?」
ポカンとした顔をするイベル。そうだろうな。こいつには分かっていないことがある。
「人の欲には際限がないからな。十分なものがあってもすぐに更にその上を求めるようになるだろう」
「だから、そしたら俺が──」
「仮にお前が際限なく広がる人々の欲を満たせたとしよう。だが、それは本当に幸せなのか?」
そうだ。ものだけじゃなく、精神的なものを全て満たせたとしても恐らく幸せにも平和にもなれないだろう。何故なら……
「人は欲に弱い。けど、同時に正しくありたいとも思ってる。だから、望むものが全て手に入ったとしても、それが他人から奪ったものだとしたら、幸せにも平和にもなれないだろう」
正しくありたい、それも欲だろう。というか、俺は欲が悪いとは思ってない。欲があるから生きられるし、成長や発見も欲が出発点だからな。
「だから、分かち合うことが大切なんだ。あるものを他の人と分け合い、助け合えばそこに真の満足が生まれるはずだ!」
リィナとレイアが深く頷き、イベルは項垂れた。奴にも何か伝わったのか……?
「ああ……」
イベルは声を上げながら天を仰ぐ。もしかして自分の過ちを悔いていたり……
「全く……」
そう言いながらイベルは体を震わせた。そして……
「くっだらね―!」
な、何ぃ!?
「べらべら喋って最後はそんな理想論かよ! お呼びじゃねーんだよ、んな机上の空論はわよ!」
「あんた! 自分に善意がないからって他の人間にもないって思い込んでない!? 底なしの馬鹿ね、あんたは!」
レイアの叫びにイベルは負けじと叫ぶ。
「ならよ、お前ら何でたった三人なんだよ! この魔王イベル様を倒すのにたった三人……どうせ誰もついて来なかったんだろ! そんなもんだよ、人の善意なんて!」
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