ノンストレス
ミア達の力でイベルのゴミ山攻撃(笑)を凌いだフェイ! イベルの反応は……
「ふ、ふん! ゴミ掃除くらいは出来るようだな!」
そう言い放つイベルの声は若干震えている。流石にこの結果は予想外だったんだろうな。
「だが、この〔セルフィッシュエデン〕では何をやっても俺様を傷つけることは出来ない! 何故なら”俺様のノンストレス“がこの空間のルールだからな!」
ノ、ノンストレス!?
“のんすとれす……?”
”嫌なことがないってことじゃろうか?“
ミアとネアが首を傾げる。確かにあまり聞き慣れない言葉だな。
「馬鹿じゃないの? 現実ってのは都合の良いことばかりじゃないのよ! 嫌なことから逃げている訳には行かないんだから!」
レイアの言う通りだ! けど……
(言う通りなんだが、レイアが言うと何だかな)
魔王達からもレイアの言葉に沸き立つ気持ちとほんの少しの戸惑いが伝わってくる。うん、でもまあ、ほんの少しだ。
「ノンストレス、好きなものが直ぐに手に入り、嫌なことが起きない世界……でも、そのせいで誰かが苦しんでいてもあなたには何のストレスもないの?」
「ないね!」
リィナの悲痛な声にイベルはあっさりとそう言い放った。
「逆に問うが、お前らは何で他人の苦しみに共感するんだ?」
「あんた、馬鹿じゃないの? そんなの当たり前じゃ──」
「違うね」
イベルは
「お前らは他人に同情することで自分が非難されないようにしているだけだ。ああ、そうしていれば自分が困った時に助けてもらえるかもってのもあるかもな!」
なっ……
「どっちにしろ、お前らが結局気にしてるのは自分のこと。なのにそれを綺麗事で誤魔化してるだけだ。ちゃんちゃらおかしいね!」
「あんた、最低ね! そんなこと考えてる奴はあんただけよ!」
レイアはそう言うが、確かにイベルの言うことは間違いだけって訳じゃないのかも知れない。誰かに同情する時、俺達は自分がそうなった時のことを考えているのは確かだ。でも……
「例えそういう気持ちがあったとしても、正しい気持ちとそうではない気持ちの両方があるのが生ある者の定めです。起こした行動が善なら、その心にもまた善なるものがあるはずです!」
「けっ……結果よければ全て良しってか! 開き直ったな!」
イベルはそう言うと、大きく舌打ちをした。
「だがな! どれだけ良いことをしたってピンチに助けなんて来ねーし、誰からも良くは思われない。お前ら、そんなこと分かってるくせに知らない振りをしてるだろ! それが綺麗事だって言うんだよ!」
俺にはリィナの言葉よりもイベルの言うことの方が開き直りに聞こえるが……
「じゃあ、何? あんたみたいに好き放題していたらいいって訳? ふざけんじゃないわよ! 綺麗事だがなんだか知らないけど、好き勝手したら良いなんてことあるわけ無いでしょ!」
そう叫ぶレイアに魔王も含めた俺達は頷いた。そうだ、みんなが他の人のことを考えずに好き勝手したらそれこそ大変なことになる!
「そうだな……だが、それが許される世界があったとしたら?」
「「「「「「「!!!」」」」」」
その瞬間、俺達は耳を疑った。こんな自己中の塊のようなイベルからまさか自分以外の話が出てくるなんて思わなかったからだ。
「お前ら、俺がただの自己中だと思ってるのか? んな、訳ねーだろ! 俺は魔王だぞ!」
ち、違うのか!?
「教えてやるよ、この魔王イベル様の全世界をノンストレス計画をよ!」
ぜ、全世界ノンストレス計画だと!?
「頑張ってるのに報われない、困ってるのに助けてもらえない。こんなの理不尽だよな?」
理不尽、か。
「だが、何故世界はこんなことになってると思う? それは足りないからだ! 食い物、衣服、住処……その他の何かもが足りないからだ!」
足りないから争い、奪い合う……そう言いたいのか?
「だから、俺は考えた。皆が必要とするだけのものが世界にあれば争いはなくなって世界の理不尽は消える!」
「はあ? それとあんたのやってることがどう関係してるのよ! あんたが好き放題してるからみんな困ってるのよ!」
レイアがそう叫ぶと、イベルはわざとらしくため息をついた。
「だからお前は馬鹿だと……まあいい。今までして来たことは実験だ」
実験……だと?
「俺はこの〔セルフィッシュエデン〕の力で皆が必要とするものを必要なだけ用意し、世界から理不尽を根絶するんだ!」
「だから何処から!」
「決まってるだろ……異世界からだよ!」
い、異世界だと……!?
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
また場合によっては緊急でストックを投下することがあるのでまだの方は是非ブクマ登録をお願い致します(๑•̀ㅂ•́)و✧
※大切なお願い
皆様のブクマやポイントが執筆の原動力です。「あ、忘れてた」という方がおられたら、是非御一考下さいませ( ´◡‿ゝ◡`)




