出口
視点は再びフェイに戻ります!
(ふぅ……やっと出られたな)
出口に着き、俺はほっと胸をなで下ろした。何せ、中々厄介な迷路だったからな……
(入り組んだ迷路に厄介なトラップがたくさん……こんなのダンジョンでさえあり得ないぞ)
時間経過と共に複雑化する迷路と自動的に生産される上に自己進化していくトラップ……どちらも見たことも聞いたこともない。
(でも、本当に凄いのはリィナとレイアだよな……)
リィナは迷路が変化する法則を見つけ出して出口までの最短ルートを見つけ出してくれたし、レイアは罠を片っ端から機能停止させ、終いには自動で罠を止める魔法まで作ってしまったのだ。
「厄介な迷路だったけど、フェイがいたから楽勝だったわね」
え?
「ですね! 流石フェイ!」
リィナまで?
「だって、そうでしょ? あの厄介な魔物を簡単にやっつけるんだもの。あんなのと戦ってたら罠の解除なんて出来ないわ」
「私だって戦闘しながら迷路の抜け方を考えるのは無理だよ」
驚いた顔をする俺に二人が真顔でそう言ってくる。単に戦ってただけだからそんなに大したことはしてないと思うけど……
(まあ、数体のアラクネアが合体したり、色んなスキルや魔法を使ってきたりとか多少バリエーションはあったけどな)
でも、正直アラクネアよりも罠の解除を投げ出して戦いたがるレイアを止める方が大変だったな。
「ありがとう。けど、俺だって一人じゃ抜けられなかったんだ。二人共、ありがとう」
二人だけじゃない。歴代の魔王達やミアやネア、ニア。それに今まで助けてくれた大勢の人達の力を借りて俺はここにいるんだ。
“マスター……”
”マスターらしいのぅ“
“……私も頑張る”
あ、聞かれてる……
「まだ先があるはずだ。こっからもよろしく頼む!」
恥ずかしさを誤魔化そうとあえて大きめの声を出し、俺は前へ進む。
「この先は一体何が……」
まさかこれで終わりという訳はないだろう。次は一体……
「これは……!」
「え?」
俺達の前に現れたのは山だ。天井まで届く巨大な山があちこちにある。しかもその山は……
(これ、ゴミの山か!?)
空き瓶や樽、それに割れた食器。いや、中にはまだ中身が入ってるものもある。
(って言うか、良く見れば食べ物もあちこちに……)
途中で食べるのを止めたようなものから全く手を付けてないものまで様々だ。が、どれも明らかにもったいない!
「ちょ……これってまさか全部イベルが?」
「酷い! みんな物資が無くて困ってるのに!」
全くだ! 何を考えてるんだ、イベルは!
“これは何というか、品性にかけるな……”
”おいおい、節度ってもんを知らないのかよ、今代の魔王様はよ“
ニヒトとザインの呆れた声が頭の中に響く。〔ビフロスト〕の上に乗っていると魔王達と会話が出来るみたいだ。
「でも、どれも腐敗してない……何でしょう?」
「あ、そう言えば臭くないわね」
……確かに
“この〔セルフィッシュエデン〕は魔王が望む理想の空間。全てが思いのままになる。奴が特に何も望まなければ、全てはそのまま。時間さえも経過しない”
全てが思いのまま。時間さえも……
(つまり、時間が経過しないからゴミも腐らない……ということか)
凄まじいスキルの割に使い方が残念過ぎる……いや、問題はそこじゃないんだが。
“無駄遣いしてるのは物資だけじゃねーぜ。時間さえ思い通りにするこの〈セルフィッシュエデン〉は世界を削り続けてるんだ”
確かミアもそんなことを言っていたな。
”この〔セルフィッシュエデン〕は世界の理を書き換える力。それはつまり、世界に矛盾を生み出す力なのです“
“……なるほどの。つまり、矛盾を正そうとして世界が捻じれる。そうすると、その負荷で世界が削られていく訳か”
矛盾を正そうとして世界に捻じれが生まれる……俺にはさっぱり分からないが、理屈に合わないこと、納得出来ないことを無理矢理しなきゃいけない時のしんどさなら分かる。多分、それに近いものなんだろう。
”マスターのお考えの通りです。そしてネア、貴方がそこまで世界の理を理解しているとは驚きました“
“ふん、これでもそなたとの付き合いは長いからの。いくら世界に異質な存在である妾でもこれくらい分かるのじゃ”
”卑下することはありませんよ、ネア。神も今の貴方をお認めになると思います……貴方は気に入らないかも知れませんが“
“……まあ諸手を挙げて喜ぶ訳にはいかぬが、拒みはしないのじゃ”
……俺にはよく分からないが、何か二人の関係は更に深まったみたいだな。
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
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