意思
肩を落とした魔王達のフォローを試みるフェイでしたが……
「えっと、すみません。今更ですが、俺も魔法とかはそんなに詳しくなくて……」
我ながら本当に今更だよな。オズさん達はまた肩を落とすんじゃ……
”その点は心配いらない。魔法についての知識や技術を使うのは我々の仕事だ“
ニヒトがそう言うと、ザインも口を開いた。
”が、俺達にあるのは知識や技術以外のものがない。例えば魔力はないし、何かをしようという意思もない。だって、亡霊みたいなものだからな“
意思がない、か。こうして話しているとそんな感じはしない。むしろ俺達と変わらないようにさえ思えるけど……
”我々は基本的には何も出来ない。だから、本当の意味で何かをしようと思うことが出来ないんだ。まあ、命と肉体がある君には理解しにくいかも知れないが……“
何も出来ないから何かをしようと思えない、か。そう考えると、理解できなくもないか。
(いや、それよりも今は〔セルフィッシュエデン〕を破る方法を考えないと!)
オズさん達の話を総合すると、俺のすべきことはつまり……
「俺が“こうしたい”と言う意思を持ってオズさん達に魔力を渡せば良いってことでしょうか」
俺がそう尋ねるとオズさん達は頷いた。
”そうだ。その意思の強さが成否を分ける。我らは手段でしかないからな“
意思の強さか。なら……
「そんなの決まってるじゃない!」
俺と魔王達の話をぼんやりとした顔をしながら聞いていたレイアが突然大きな声を出した。
「細かい話は分からなかったけど……私達の意志は一つでしょ」
「そうだな」「そうですね」
俺に続いて、リィナが頷く。すると、その場にいた皆が続いて頷いた。
「あの雲の中で好き放題してるイベルとか言う迷惑な奴をやっつける! そうでしょ、みんな!」
「「「おー!」」
皆がレイアに続いて拳を上げる。そう、俺達の意志は一つだ!
“これこれ! これだよ!”
”やはり我々の目に狂いはなかったな!“
ザインとニヒトがそう言うが早いか、次々と魔王の亡霊が現れた。
“ふむ。他の者も参加したいようだ。構わないかな、魔帝レイア?”
「当たり前よ! あの馬鹿にどデカい一発をかましてやるのよ!」
”了解した。やるぞ、みんな!“
オズの声に合わせるように魔王達の背後に複雑な幾何学模様で構成された魔法陣が現れる。
(魔力を渡す……どうしたら良いんだ?)
が、俺の心配は杞憂に終わった。まるで俺達の意志に応えるように俺とレイアの魔力がその魔法陣に吸い込まれていく。
「あの……私の魔力も」
リィナがそう申し出たが、オズは首を振った。
”有り難い話だが、二人の魔力で十分過ぎる。特にフェイ、君の魔力総量は凄まじいな“
“おいおい、前衛なのに何でこんなに……”
”魔帝の仲間だ。規格外なんだろうとは思っていたが……“
魔王達は何故か楽しそうだ。俺の魔力って魔王から見ても凄いのか?
“とにかく今はこの魔法に集中だ。我らの魔帝の記念すべき初撃だ。派手に行くぞ!”
オズさんの声に合わせて魔王達の魔法陣が光を放った!
*
(イベル視点)
「ふぅ……食った食った」
気になるものもならないものも目に付くものを片っ端から徴収してるからとてもじゃないが食べ切れない。部屋の中にはまだ手を付けてない食料が山のように余ってる。が……
(別に置いておけばいいもんな!)
俺の〔セルフィッシュエデン〕はいくらでも広げられる。つまり、余ったところで取っておくスペースはいくらでもあるんだ!
「何も考えず、ただ欲しいものを手に入れるだけの生活って最高だな!」
このまま世界を一周しながら欲しいものをテキトーに徴収して回るか!
ガガガッ!
な、何だこの揺れは!
「おい! 何があった!」
俺が声を張り上げると、オズとかいういけ好かない野郎が現れた。
「〔セルフィッシュエデン〕が魔法による干渉を受けた」
何ぃ!?
「魔王の力は無敵じゃねーのかよ!」
「魔王の力は無敵でも万能でもない。それにどんな力も結局は使い方だ」
俺の使い方が悪いってのか!
(胸糞悪い……が、落ち着け。別に何か悪いことが起こった訳じゃねぇ)
さっきオズは”干渉を受けた“と言っていた。つまり、被害が出た訳じゃないんだ。
「で、現状はどうなってる? 干渉を受けたとは具体的にどう言う意味だ?」
「地上からここ〔セルフィッシュエデン〕に道のようなものが架けられた。何者かが侵入してくる可能性がある」
ほぅ……ここに来るだと?
(俺の城に土足で上がり込んでくるか。むかつく奴らだが……)
考えようによってはいい暇つぶしになるかも知れないぞ。例えば……
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