完璧な女性
ヴェルリナさんからの衝撃の発言に揺れるリィナ。さてどうする、リィナ!?
(リィナ視点)
コンコン……
そんなことを考えていると、ドアをノックする音がした。
(誰だろう?)
ヴェルリナさんの衝撃の告白の後、私達は今後の方針についてそれぞれ考えることになった。と言っても実質私達にとってはヴェルリナさんの衝撃の発言による混乱から何とか立ち直るための時間になっているけど……
「リィナ様、宜しければ少しお時間を頂けませんか?」
「ヴェルリナさん! 今、開けます!」
まさにこの大混乱を引き起こした本人の来訪に私は一瞬慌てたけど、すぐにドアを開けた。何せ相手はこの聖王国の象徴であり、教皇が失脚した今となっては実質的な統治者でもあるのだ。
「お忙しいところ、申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
別に何かをしていた訳じゃないから忙しいって訳じゃない。けど、ヴェルリナさんが言ったのはそう言うことじゃないだろうな。
(でも、何でわざわざあんなことを言ったんだろう……)
フェイ兄へ告白するなんて……そんな……
「良かったら一緒に召し上がりませんか?」
そう言ってヴェルリナさんは机の上にどこからともなく取り出したクッキーを置いた。
(いい匂い……)
ヴェルリナさんが出してくれたクッキーは焼き立ての香ばしい匂い……とっても美味しそう!
「飲み物もあった方が良いですね」
ヴェルリナさんはまたもや宙からティーセットを取り出し、紅茶を淹れてくれた。多分❲アイテムボックス❳のスキルを使ってるんだろう。
(紅茶もいい匂い……)
それに紅茶を淹れる所作も洗練されていて凄く綺麗……何をしても絵になる人だな。
「良かったら冷めないうちにどうぞ」
「頂きます」
クッキーも紅茶も期待を裏切らない美味しさ……これってまさか手作りだっりするのかな。
(だとしたら完璧過ぎる……)
ヴェルリナさんは綺麗で大人っぽく、何をしても洗練された女性だ。正直、隣に置いて比べられたら勝ち目があるとは思えない……
(……羨ましい)
それが正直な気持ちだ。何もかも持っているヴェルリナさんが羨ましい。だって、私がヴェルリナさんみたいに全てを備えた女性だったらフェイ兄はきっと……
「羨ましい……」
その声に驚いたのは自分が決して口に出せない想いを口走ってしまったかと思ったから。でも、そうでないと分かった瞬間、私はやはり驚いた。だって、私が口にしたのでなければ……
(ヴェルリナさんが誰かを羨ましいって思ってるってこと!?)
正直、そんなことはあり得ないと思う。けど、この部屋には私とヴェルリナさんしかいない。私が口にしたので無ければヴェルリナさんの言葉ってことに……
「私、そんなに不思議なことを言いましたか?」
ヴェルリナさんにそう問われて私はまたもや動転し……素直に頷いた。今更隠しようもない。というか、私の気持ちなんて最初からお見通しだったんじゃないかな。
「……だって、ヴェルリナさんは完璧な女性ですし」
それを口にする時、私は思わず拳を握った。それは意識してのものじゃない。けど、私の理性は理解していた。これは事実上の敗北宣言だと。
「私から見れば貴方こそ完璧に見えますよ」
「え!?」
完全に予想外な言葉に私は想わず絶句する。が、そんな私を見たヴェルリナさんは口元に笑みを浮かべた。
「貴方は自分の価値をまだ十部には理解しておられないのですね。そんな貴方は同性の私から見ても可愛らしく、魅力的ですよ」
「え……」
思っても見なかった言葉に私は再び言葉を失った。まさかヴェルリナさんがそんなことを思っていたなんて……
「もっと自信を持って……と言いたいところですが、今貴方はそれどころじゃないかもしれませんね。私のせいで」
「……」
何とも言えない話だ。確かに原因というか、きっかけにはヴェルリナさんの言葉があるのは間違いない……
(でも、あの魔王を倒すには聖女の愛の力が必要……)
愛……私はフェイ兄が大好きだ。出来ることなら何でもしてあげたい。けど、
(私にはヴェルリナさんみたいに強くないし、こんなに美味しいクッキーを焼いたり、紅茶を淹れたりすることも出来ない……)
それだけじゃない。レイアさんみたいに肩を並べて戦ったり、ミアのようにフェイ兄と一緒に戦ったりすることも出来ない。出来ないことだらけなのだ。
(こんな私がフェイ兄を好きでいて良いんだろうか……)
私なんかフェイ兄の隣にいる資格はないんじゃないだろうか。きっと、もっと相応しい人が……
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