伝承
一件落着(?)した後、魔王討伐のためにリィナがヴェルリナさんに頼むこととは……
「お願いしたいことは色々あるのですが、まずはあの〔セルフィッシュエデン〕を破る手がかりがあれば教えて下さい」
リィナがそう言うと、シオンは困った顔をした。
「申し訳ありません。今、総力を上げて調べているのですが、まだ糸口すら見出だせていません」
「そうでしたか……」
予想していなかった訳ではない。が、シオンから改めてそう言われるとショックではある。何せ神や魔王、勇者のことはこの聖王国が一番よく知っているはずだからな。
(ってことは実質今は打つ手なしなんじゃ……)
俺達の間にそんな絶望感が広がる。だからこそ、次のヴェルリナさんの言葉に皆は釘付けになった。
「具体策ではありませんが……私に一つ心当た りがあります」
「「「「!!!」」」」」
自信のなさのせいか、自分でもまだ疑問があるのか、ヴェルリナさんの声はやや小さい。が、この場の誰一人、その言葉を聞き落とさなかった。
「伝承では”聖剣を携えし勇者、聖女の助力によりその力を高め、魔の王の力、打ち破る“とあります。リィナさんのクラスは『聖女』でしたよね?」
「でも、私には魔王の力を打ち破れるくらいのバフをかけるようなスキルありません……」
リィナが申し訳無さそうな声でそう言うと、ヴェルリナさんは慌てて手を振った。
「違うのです。この伝承でいう“聖女”とは勇者を想う乙女のことを指します。だから、必ずしもクラスが『聖女』でなくても良いのです」
「というと……つまりどう言うこと?」
レイアがやや混乱した様子でそう聞いてくる。確かに俺も少し混乱してきたな……
「回りくどい言い方をしてしまい、申し訳ありません。その……あまりに荒唐無稽な話なのですが……」
ヴェルリナさんは一瞬口籠る。そんなに恐ろしい方法なのだろうか。
(いや、達成が困難な条件とかかも……)
これだけ期待が集まってる中、不可能に近いこととかだったら相当言いにく──
「告白です」
え……
(何だって?)
告白……?
「つまり、聖剣を携えし勇者、フェイ様を恋い慕う乙女に彼を支えるスキルが与えられるのではないでしょうか?」
え……
「皆様の中にフェイ様を異性として好いているお方はおられますか? もし、おられないのなら私が──」
「ち、ちょっと待って下さい! 話の展開が早すぎてついていけません!」
「そ……そうよ、いきなり告白なんて!」
リィナとレイアが顔を赤くして絶叫する。二人がこんな風に動揺するのは初めて見たな。あ、俺? 俺はもう話についていけないや……
“ヴェルリナ様がマスターを……そんな”
”しっかりするのじゃ、ミア! つまり、聖剣でもオッケーということじゃ!“
ミアとネアが何かを言ってるのが聞こえる……うーん、エラいことになったな。
*
(リィナ視点)
(甘かった……)
とりあえず各々考える時間を……ということで私達は自室に戻った。けど、私の頭の中は同じ言葉がリフレインし続けていた。
(甘かった……考えが甘すぎた……)
私は今まで自分の気持ちしか考えていなかった。私はフェイ兄をどう想っているのか、フェイ兄とどうありたいか……そんなことばかり考えていたのだ。
(もうっ……私のバカバカバカッ! フェイ兄のことを好きなのが私だけな訳ないじゃない!)
どうしてこんな単純なことが分からなかったんだろう。本当に私は馬鹿すぎる……
(最悪、私の知らない内にフェイ兄が誰かと……ってことも今まであり得たんだ)
冷静に考えてみれば、フェイ兄の周りには魅力的な女性が多い。その内の誰かにフェイ兄が惹かれたとしても何の不思議もなかったのだ。
(しかも、フェイ兄みたいに素敵な人に想われたらどんな人だって……)
ズキッ!
胸に刃物を差し込まれたような痛みが走る。その痛みのおかげで逆に私は冷静になれた。
(……駄目。ここで後悔したって何にもならない!)
そうだ。今すべきこと。それを考えなきゃ!
(私はフェイ兄が好き。それは間違いない)
でも、私の好きってどう言う「好き」なんだろう……
(今まで色々考えてきたけど、結局結論が出ないまま来ちゃったな……)
今までの旅で色んなフェイを見て、「好き」という気持ちはどんどん大きくなっていった。けど、私はフェイ兄が兄妹として好きなのか、それとも異性として好きなのか……その肝心なところがわからないのだ。
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