教皇
フェイが頑張ってる間にヴェルリナさんが降臨! さあ、ざまあタイムです!
「さて、フェイ様。この国のことはひとまず置いておきましょう。大変なことが起こりました」
「大変なこと……まさかまたあの魔王が?」
レイアがそう尋ねると、ヴェルリナさんは苦々しく頷いた。
「世界の崩壊が急激に速まりました。何かが起こっています」
「お父さん、お母さんは何も言ってなかったけど、ヴェルリナさんが言うなら間違いないですね。一体何が……」
リィナがそう言うが早いか、誰かが走ってくる音がした。
「も、申し上げます。緊……って、え!?」
知らせを持ってきた役人は、眼の前の光景に絶句した。無理もない。絶対権力者である教皇がひっくり返り、ヴェルリナさんが降臨しているのだ。何かとんでもないことが起こっているのは明らかだ。
「何があったのですか?」
「あっ……はい! 只今北方にあるローダリア連邦より使者が」
有無を言わせぬ迫力のヴェルリナさんに促されて役人が言うには、魔王の〔セルフィッシュエデン〕による被害の大きさと聖王国にも魔王討伐のための連合軍に強力して欲しいという要請が来ているとのことだった。
「そんな、我が国が音頭を取るはずだったのに……」
ドタドタドタ……
再び慌ただしい足音がして役人が入ってくる。それらは別の国からの知らせを受け取った役人達で……
「西のローダリア連邦より、聖王国は魔王討伐軍には参加しないのかとの問い合わせが!」
「南のミルス同盟より、ルーカス殿が率いる魔王討伐軍に合流するために聖王国を通過したいが、構わないだろうかと!」
次々にもたらされる知らせは世界が魔王討伐に向けて急速に団結しつつあることを知らせてくれる。一体何があったのかは分からない。が、聖王国が流れに乗り遅れたことだけは明らかだ。
「な、何だと……一体いつの間にこんなことに!」
「良いのですか? つまらないことにこだわっていると世界から孤立してしまいますよ」
魔王討伐に協力しなかったとなれば、平和になった後、誰も聖王国に見向きものしなくなるのは明らかだ。
(いや、それだけじゃない……)
神の威信や威光を奉じている聖王国が魔王の脅威に対して何もしなかったとしたら、もう誰も聖王国が神の国だなんて思わないに違いない。
「ぐっ……ぐぐぐ」
「フェイ様達は聖王国に魔王と戦う意志があるのかを問いに来られたのです。つまらぬ話をする前にまずは我が国として何か言うべきことがあるのではないですか?」
つまり、ヴェルリナさんは称号を受けることの引き換えとしての支援ではなく、まずは俺達への協力の意思を示すべきだと言ってくれているのだ。
「教皇、魔王イベルは世界の敵です。何としても倒さねばなりません!」
「あんな奴、魔王だなんて認めない! とっとやっつけないと!」
リィナとレイアも口々に協力を求める。が、教皇は赤い顔で唸ったままだ……
「どうするのです? 貴方はこの国を代表する立場にいるのですよ!」
「があぁぁぁ!」
突然教皇は奇声を上げながらひっくり返った!
「き、教皇様!」
「お気を確かに!」
周りにいた役人や聖職者達が教皇に駆け寄る。うーん、流石にちょっと追い詰めすぎたのかな…
*
「神聖オズワルド共和国はフェイ様に全面的に協力します。勿論、ルーカス様達が纏めつつある魔王討伐軍にも喜んで協力させて頂きます」
場を改め、俺達の前に現れたシオンはそう宣言した。どうも彼女は聖王国と俺達のメッセンジャーの役割を任されたらしい。
「何かかき乱しちゃったみたいで悪かったな」
言ったことに後悔はない。けど、あんな大混乱を引き起こした点については俺の本位じゃないからな。
「とんでもない! むしろ、私達が出来なかった汚れ仕事をフェイ様にさせてしまったことを申し訳なく思います」
「魔星将の一件で教会の膿はあらかた取り除けたのですが、あの教皇だけが残ってしまっていて……改心の機会は与えていたのですが」
シオンとヴェルリナさんが口々にそう言ってくれたところを見ると、悪いだけではなかったのかな……
「これだけのことがあれば、あの教皇も改心してくれるでしょう。フェイ様は神聖オズワルド共和国の救い主ですね」
ヴェルリナさんはそう言って笑顔を見せてくれるが……そんな大層なことはしてませんよ?
「ところでフェイ様。具体的には、我が神聖オズワルド共和国に何をお求めですか?」
シオンがそう言うと、リィナが手を上げた。
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
また場合によっては緊急でストックを投下することがあるのでまだの方は是非ブクマ登録をお願い致します(๑•̀ㅂ•́)و✧
※大切なお願い
皆様のブクマやポイントが執筆の原動力です。「あ、忘れてた」という方がおられたら、是非御一考下さいませ( ´◡‿ゝ◡`)




