理由
突如ヴェルリナさんに戦う理由を問われたフェイ。果たして彼の答えは……
何故魔王と戦おうとするのか
それをヴェルリナさんに問われた俺は思わず固まった。
(俺がやらなきゃって思っていた……いや、思い込んでいたけど……)
何故そんな風に思い込んでいたのだろう。LVが高いからか? それとも特別なクラスについているからか?
「秩序を乱す魔王を倒す……それは尊い志です。しかし、フェイ様は魔王を倒して何を得ようとなさっているのでしょうか」
何を得ようとしているのか……その言葉は思っても見なかった問いだった。
(……けど、そうだ。危険を犯すには目的がないと)
自分一人ならいいだろう。でも魔王を討伐しようとすれば、例え俺が望まなくても必然的にリィナやレイア、それに数多くの人達を巻き込んでしまう。
(そこまでして魔王を倒す目的……そんなものが俺にあるのか?)
大切な人達を危険に晒してまで魔王を倒そうとする目的……そんなものが俺にあるのか……
「聖王国にもパラディンはいます。聖剣もフェリドゥーン様だけではありません。それに魔王討伐となれば世界中から強者達が名乗りを上げるでしょう」
確かに……
(思えば、俺の旅の目的は豹炎悪魔だったな)
忘れていた訳じゃないが、俺がリーマスを出たのはネア達を保護し、彼女達がどんな存在かを知るため。魔星将や魔王はその過程で出会ったに過ぎないのだ。
「魔星将の企みを挫き、聖域を復活させ、更にはこうして私に情報を下さった。フェイ様はもう十分やって来られたのではないですか?」
そう……なのか?
(俺の旅はここで終わり……)
そう考えた瞬間、俺の唇は自然と動いた。
「それは違います。まだ俺の旅は終わってないんです」
自分が思った以上にその声は大きく、力強い。俺の小さな迷いなんて吹き飛ばす勢いで言葉が俺の中から飛び出していく……
「俺の旅は豹炎悪魔から始まりました。そう言う意味では魔王討伐は俺が旅に出た目的とはズレているかもしれません」
「なら……」
「でも、駄目なんです。俺はこの旅を通じて色々な人に出会い、色々なことを知った。そして好きになったんです、この世界が」
そうだ。今まで自分のことしか、リーマスのことしか考えて来なかった俺はこの旅を通じて変わったんだ。
「世界は広くて、そこに住んでいる人も様々でした。でも、皆懸命に生きて、泣いて、笑ってる。それはリーマスと同じ」
そう……何処でもそれは同じだった。けど……
「でもそれを踏みにじり、台無しにしようとする奴もいた。まるで豹炎悪魔のように……」
現実は厳しい。厳しすぎるくらいに厳しい。頑張ったのに報われない、正しいのに認められない、尽くしてるのに認められない……
「俺はそれが許せない。頑張った人は報われて欲しいし、正しい人は認められて欲しいし、尽くした人は認められて欲しい」
「優しいのですね、フェイ様は」
ヴェルリナさんはそう囁くと俺の額に唇を落とした。
「でも、それは叶わぬ願いかも知れません。何故なら世界はそのようには作られていないのです」
「……ええ、そうかも知れません」
分かってる。俺はもう豹炎悪魔を倒すことしか、強くなることしか頭になかった子どもの頃とは違う。この旅を通じて、善意と同じように悪意もまた人の心に存在するものだと学んだつもりだ。
「でも……いや、だからこそ俺は頑張る人、正しい人、誰かに尽くす人の力になりたいんです。そう言う人達の前に立ちはだかる理不尽を叩き切る剣に俺はなりたい」
もし、俺が力を授かったことに何か意味があるのなら……これこそがそうだと俺は思う。
「俺にとって魔王イベルはそのための第一歩」
そうだ。俺はもう豹炎悪魔を倒す英雄に憧れるだけの男の子じゃない。
「だから、俺は魔王を倒したい」
誰かに任せるだけじゃ意味がない。俺自身の手でやらなきゃ意味がない。
「魔王イベルは頑張る人、正しい人、誰かに尽くす人を不当に傷つける理不尽そのものだから」
魔王だから倒すんじゃない。俺がヤツを倒すのはアイツが報われて当然の人達の邪魔をするからだ!
「なるほど……良く分かりました。それがフェイ様がこの旅で得た答えなのですね」
「そうです」
俺がそう答え瞬間、ヴェルリナさんから光が溢れ出した!
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