対面
謎の声に導かれて向かった先にいたのは……
「ようこそおいでくだいました、フェイ様。それにフェリドゥーン様。それにお仲間の方々も歓迎させて頂きます」
部屋の中にいたのは信じられないくらい綺麗な女性だった。
“ヴェルリナ様……聞きしに勝るお美しさ……”
同性であるミアがうっとりとした声を出すのも理解出来る。それくらいの美人なのだ。
”くっ……あの胸……恐らく妾よりも……“
“……スタイルも抜群”
ネアとニアが漏らすそれぞれの感想も良く分る。何がどうとかは流石に言えないが。
「ありがとうございます。貴方達のような可愛い人に褒められると嬉しくなってしまいますね」
クスッと笑うとまるで薔薇が満開になったよう。自然な仕草からも色気が滲──
(……そう言えばミアは”ヴェルリナ様“って言ってたよな)
危険な方向に行きかけた思考を強引に引き戻すために別のことを考える。つまり、この人は俺達が会いに来た人ってことか。
「あの……俺達貴方にお伺いしたいことがあって来ました」
「存じております、フェイ様。まずはおかけ下さい」
ヴェルリナさんがそう言うと椅子とテーブルが現れた。
「こんな時間に申し訳ありません。今、聖王国は立て直しのためにごたついていまして……」
ヴェルリナさんはテーブルの上にあった飲み物を俺と自分の眼の前にあるグラス注がれに注ぐ。
カン……
操られるように自然とグラスを合わせ、ヴェルリナさんと同じタイミングで飲み物を一口飲む。あ、これお酒だ……
(どうも酔ってしまうな……)
お酒にではなく、雰囲気にだ。
“マスター! しっかりするのじゃ! くそっ……やはり胸か! 胸が妾には足りないのか!”
”……そもそも私達とは格が違う。マスターがデレるのも仕方ない“
……おいおい、デレてなんかないぞ!
「立て直し……それはひょっとして魔星将が関わっているのですか?」
「流石フェイ様。ご明察の通りです」
聖王国に魔星将が……一体どんな奴だったんだろう……
「政治は全て人の手に委ねていたせいか、気づいた時には上層部まで魔星将に取り込まれてしまっていて……いえ、人の子のせいではないですね。何せ私自身も魔星将に不覚を取ったのですから」
”ヴェルリナ様が不覚を……!? あっ、失礼しました“
ミアは思わず驚いた声を上げてしまうが、俺だって心底驚いた。確かに魔星将には俺達も散々苦戦を強いられているが、まさかヴェルリナさんまで手を焼くほどとは……
「構いませんよ、フェリドゥーン様。要するにそれだけの相手だと言うことです。心してかからねばなりません」
“確かに妾達も散々な目に会わされとるからの……魔星将、厄介じゃ”
今更だが、俺達が今生きてるのはたまたまだ。助けがあったり、運がついていたり……その時によって理由は様々だが。
「ところでフェイ様は魔王についての情報を集めておられると聞きましたが」
「はい。魔王イベルのスキル、〔セルフィッシュエデン〕を破る方法を探しています」
俺達は魔王イベルのスキルとかたまたま見た魔王誕生の瞬間などをヴェルリナさんに話した。
(それにしても、イベルは何処から出てきたんだ?)
正直魔王誕生については訳分からないことが多すぎるが……まあ今はどうでもいいことだな。
「なるほど……それは厄介なスキルですね」
ヴェルリナさんは腕を組んで考えこんだ。
「そして、今までに例がない力です。魔王のスキルとしても異例でしょう。私の力でも通じるかどうか……」
最古の聖剣であるヴェルリナさんの力でさえ通じないかも知れないのか……
「しかし、方法がないわけではありません」
「!!!」 ”!“ “何ッ!” ”……!“
俺とミア、ネア、ニアはヴェルリナさんの言葉に息をのんだ。
“ど、どんな方法なのじゃ?”
”教えて頂けますか、ヴェルリナ様!“
思わず詰め寄る二人にヴェルリナさんはにっこりと微笑んだ。
「勿論です。ですが、その前に少し休ませて下さい。実はまだ魔星将に不覚を取った時の傷が残っていて」
「傷!? だ、大丈夫ですか!」
俺が慌てて立ち上がった。ヴェルリナさんに傷を……魔星将は本当に許せない奴らだな!
「大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
「手をお貸しします」
俺は腰に下げていた聖剣フェリドゥーンをテーブルに置き、少し辛そうによろめくヴェルリナさんを支えた。いつの間にか出来ている部屋の端の壁にある入口は恐らく寝所だろう。
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